季節の本を楽しみたい! そう思っていても、あわただしく過ごしていると、あっという間に、もう次の季節……。それなら少し余裕をもって、準備を始めてみませんか?
この連載では、子どもたちに本を手渡しつづけている東京子ども図書館の皆さんに、「来月のおすすめの本」をご紹介いただきます。12月のおすすめを教えてくださるのは、笹岡智子さん。さあ、12月はこれ読もう!
冬休み、クリスマス、大晦日……。子どもの頃、12月はたのしいことがいろいろあって、胸が高鳴る季節でした。でも大人になると、年末は仕事も家のことも、慌ただしさが増す時期でもありますね。そんなとき、寝る前のひとときに子どもと一緒にページをめくれば、ふっと心がゆるむかもしれません。
今回は、そんな心温まるひとときをくれる本や、年末年始のワクワクを盛り上げてくれる本を選んでみました。
フィービ と セルビ・ウォージントン 作・絵 まさき るりこ 訳 / 福音館書店 / 幼児から
クリスマス・イブの朝、郵便屋のくまさんは、手紙や小包の入った袋を駅で受け取り、手押し車にのせて、郵便局まで運びます。郵便局ではんこを押したら、配達に出発。どの家も、みんな喜んでくまさんを迎え、クリスマスのごちそうをおすそわけしてくれます。配達が終わると、今度はまちのポストから手紙や小包を集め、郵便局に持ち帰ります。一日の仕事が終わって、家に帰ったくまさんは、あたたかいお風呂に入り、暖炉の前で夜ごはん。そして、クリスマスの靴下をつるしてから、ぐっすり眠りにつきます。
パン屋さん、せきたん屋さん、植木屋さんなど、いろいろな職業のぬいぐるみのくまさんを主人公にした、愛らしい小型の絵本シリーズの1冊。働きもののくまさんの、おだやかできちんとした暮らしぶりは、読んでいて、なんとも言えない安心感につつまれます。
片山令子 作 片山 健 絵 / 福音館書店 / 幼児から
冬ごもりの季節が近づき、おかあさんぐまとこぐまは、準備をするために森へ出かけます。
木の実やはちみつを集めたり、魚をつかまえたり、わたをつんだり。こぐまも頑張りますが、あつめた木の実はどれも食べられないものばかりだし、せっかくつんだわたも、どろだらけ……。それでも、森で出会った、りすやかえるの子たちと一緒に、一生懸命お手伝いします。
うちへ帰ってたっぷり夜ごはんを食べたあと、かあさんぐまは、こぐまの集めた木の実とわたをつかって、ぬいぐるみをつくってくれます。こぐまは、たのしかった一日を思い出しながら、ぬくぬくした気持ちで、冬ごもりを迎えるのでした。
幼い子たちに読んであげると、こぐまの気持ちに寄り添って真剣な顔で聞き、うれしい結末にどの子もにっこり満足します。素朴な絵もあたたかみがあり、冬がくると読みたくなる絵本です。
松岡一哲 写真・文 / 偕成社 / 小学生から

北欧の国、フィンランドは「サンタクロースの村」があることでも有名ですね。
カオリは首都ヘルシンキ郊外に暮らす8歳の女の子。おじいちゃんは日本人で、フィンランドに来て結婚し、今は子どもも孫もたくさんいます。フィンランドの冬は、太陽が出ている時間がとても短く、気温もマイナス20度まで下がることも。カオリはしっかり防寒して学校に通い、休み時間は元気に雪の中で遊びます。
12月に入ると、クリスマスの準備。サンタクロースに手紙を書いたり、クリスマスカードを送ったり、家族や友だちにあげるプレゼントを選んだり。クリスマスツリーは、本物のもみの木を買ってきて、弟たちとにぎやかに飾りつけ。クリスマス・イブには親戚が集まり、お料理やケーキを囲んで盛大なパーティーが開かれます。
きびしい寒さの中でも、冬をたのしむ様子が伝わってきて、ワクワクします。
「世界のともだち」シリーズは全部で36冊。
各国ひとりの子どもに密着し、学校の様子や放課後の過ごし方、食べものや行事のことなどが、たくさんの写真で紹介されています。東京子ども図書館の児童室でも、かつら文庫(*)でも人気のシリーズです。
*石井桃子(1907-2008年)さんが東京都杉並区荻窪に開いた、地域の子どもたちのための図書室。現在は、東京子ども図書館が引き継いで運営しています。
≪幼児から≫
④『あずきがゆばあさんととら』
ペク・ヒナ 絵 パク・ユンギュ 文 かみやにじ 訳 / 偕成社
むかしむかし「あずきがゆばあさん」と呼ばれる、おいしいあずきがゆを炊くと評判のばあさんがいました。ある春の日、巨大なとらが現れて、ばあさんを食べると脅します。ばあさんは「冬になって、おいしいあずきがゆをたらふく食べてから私を食べたらいい」と、とらを追い返しますが、やがて冬至の日がきて……。
韓国の昔話の絵本。日本では冬至にかぼちゃを食べたりゆず湯に入ったりしますが、韓国ではあずきがゆを炊くのだそうです。手作りの人形とジオラマをアニメーションのように撮影した写真もユニークです。

⑤『おおきいツリー・ちいさいツリー』
ロバート・バリー 作 光吉夏弥 訳 / 大日本図書
もうすぐクリスマス。ウィロビーさんのお屋敷にとても大きなクリスマスツリーが届きます。ところが天井につかえてしまったので、先をちょん切って、小間使いのところに。ここでも大きすぎたので先っぽは庭師に。さらに森の動物たちへと行き渡り……。
みんながそれぞれの小さなツリーを飾ってクリスマスをお祝いする、心温まる物語です。

⑥『子うさぎましろのお話』
佐々木たづ 文 三好碩也 絵 / ポプラ社
北の国にすむ白うさぎの子ましろは、サンタクロースのおじいさんから真っ先に贈りものをもらいました。もう一度おじいさんに贈りものをもらおうと、からだに炭をつけて黒くして、別のうさぎになりすましたましろですが、炭がとれなくなってしまって……。
心が洗われるようなお話は、クリスマスの時期にぴったりです。

⑦『かさじぞう』
瀬田貞二 再話 赤羽末吉 画 / 福音館書店
大晦日、貧乏なじいさんは、まちに笠を売りに行くのですが、ひとつも売れません。仕方なく家に帰る途中、雪をかぶって立っている6人の地蔵さまを見つけ、かわいそうに思ったじいさんは、その頭に売りものの笠をかぶせてあげます。すると明け方「よういさ、よういさ、よういさな」と掛け声が聞こえてきて……。
やわらかい墨絵と、ゆったりした語りが心地よい、年の瀬に読みたい日本の昔話です。
⑧『十二支のお節料理』
川端 誠 作 / BL出版
一年の終わり、十二支の動物たちが、それぞれ分担してお正月を迎える準備をはじめます。ねずみは家の掃除とおもちつき。牛は米や野菜を運び、虎は千里を走って各地の珍しい食べ物を集めてきます。年が明け、お節料理ができあがると、動物の夫婦12組が大集合。
ユーモラスな版画の絵がたのしい絵本です。

≪小学生から≫
⑨『天使のクリスマス』
ピーター・コリントン 作 / ほるぷ出版
クリスマス・イブの夜。女の子がサンタクロースへの手紙と靴下を置いて眠りにつきます。すると小さな天使がやってきて、仲間の天使たちと一緒に、ろうそくを持って列をつくり、サンタクロースを女の子の家まで道案内します。
コマ割りで進む、文字のない絵本。じっくりひとりで眺めても、誰かと一緒にお話を作りながらたのしんでも。

⑩『クリスマスの女の子』 四つの人形のお話3
ルーマー・ゴッデン 作 久慈美貴 訳 たかお ゆうこ 絵/ 徳間書店
クリスマス・イブ、おもちゃ屋に並べられた人形のホリーは、自分を迎えてくれる持ち主を待っています。一方、孤児の女の子アイビーは、自分に人形をプレゼントしてくれる「おばあちゃん」を探して飛び出し、ひとりで知らない街をさまよいます。人形ホリーとアイビー、子どもを欲しがっている夫婦の願いが、奇跡的な出会いにつながって……。
同じシリーズの中の『ふしぎなようせい人形』もクリスマスにおすすめです。

⑪『グロースターの仕たて屋』
ビアトリクス・ポター 作・絵 いしい ももこ 訳 / 福音館書店
イギリス、グロースターの町に、貧しいけれど腕のよい仕たて屋がいました。ある日、仕たて屋は、市長からクリスマスの朝までに仕上げなければならない、豪華な上着の注文を受けます。ところが、クリスマスも近づいた寒い日、熱を出して寝込んでしまいます。すると、前に仕たて屋が、飼いねこから逃がしてやったねずみたちがやってきて……。
めでたしめでたしの結末に、幸せな気持ちになります。細やかに描かれた美しい絵も魅力です。
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