もっと子どもと遊びたいのに、ついつい家事や仕事に追われてしまって……。そんな日々のすきま時間に、がんばらずに楽しめる手作りおもちゃを、毎月1つご紹介します。第8回は「ミカンの皮」です。
夕飯後、みんなでミカンを食べていたら、ぴょん子が「見て、見て、トリだよ」と声をあげました。すぐには、わからなかったのですが、確かに、むいたあとのミカンの皮が、くちばしが大きくて太い「鳥」に見えるのです。写真でいうと、左上の皮です。どうでしょう。え?見えない?
そのつもりになって眺めてみると、誰がどうむいた皮でも、何かしらのかたちに見えてきます。わたしが、へたの反対から始めて放射状にむくと、たいていはおへそがある大の字の人間。ちょっと意識してカーブさせたり、長い部分や短い部分ができるようにむいてみると、宇宙人、ウサギ、恐竜、ザリガニ……。
どんどん試したくなって、もうミカンが食べたいんだか、皮がむきたいんだか、わかりません。感触といい、思い通りにならないところといい、紙をちぎるのとは、全くちがう楽しさです。
おなかはいっぱい、テーブルは皮だらけ。みんなで、どれが何に見えるか見えないかの品評会です。同じものを見ながら、それぞれちがうことを考えてるのが面白くて、なるほどと思ったり、大笑いしたり。へたがどこにあるのかが重要なポイントですが、もちろん、マジックで目や鼻を書き足したってかまわないのです。
ひからびてきたら、ネットに入れてお風呂に入れてやりましょう。幸せなミカンの皮の一生として、完璧です。
写真:鈴木健
※ 月刊絵本「かがくのとも」2008年11月号折込より再掲。当時12歳の長男 “ぴょん一くん” と3歳の長女 “ぴょん子ちゃん” と一緒に楽しんだ手作りのおもちゃについて綴ったエッセイを、当時のままにお送りします。