もし自分の蔵書を、ひと箱(35㎝四方)に絞らないといけないことになったら、そこには何を入れますか? 思い出の本や、何度も読み返したい本、さらにはもう手に入らないから手放せないという本まで……本好きが集まる出版社の社員たちが、本棚として成立する“限界”まで本を減らした、「限界本棚」を覗いてみましょう。第5回は、営業推進課・Nの本棚をご紹介します。
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我が家の本棚を見ると、本と漫画が半分ずつおさまっています。定期的に棚の整理をしているのですが、どうしても捨てられない本と、今読んでいる漫画が並ぶことになります。
SF・ファンタジーと歴史が好きで、とくに中高生の時代、読書はゲームや漫画・アニメと一体となった娯楽でした。ドキドキワクワクしながら読みすすめていくと、想像を超える世界が広がっていって、主人公が大活劇をして事件を解決していく。そういった思い出のある捨てられない本が並んでいます。
そんな蔵書の中から、ひと箱に収まるだけ選ぶなら……
1・2『西遊記(上)(下)』
呉承恩 著 君島久子 訳 瀬川康男 画/福音館古典童話シリーズ
こちらの本は、小学生のころ入院したときに買ってもらった本で、道教と仏教が交わる独特のファンタジーの世界観と、歴史を背景にしたストーリー、さらに異能を使った大バトルと、その後の読書体験の原点になる出会いでした。いくたびの引っ越しや本の整理を乗り越えて、手元に残っている本になります。
3『火星のタイム・スリップ』
フィリップ・K・ディック 著 小尾芙佐 訳/ハヤカワ文庫
4『スキャナー・ダークリー』
フィリップ・K・ディック 著 浅倉久志 訳/ハヤカワ文庫
中学生になると、私の心をつかんだのはSF作品で、とくにフィリップ・K・ディックの作品に魅了されました。B級とされるような作品が好きなので、『火星のタイム・スリップ』がお気に入りです。本格的な作品としては、著者のドラッグ体験が反映された『スキャナー・ダークリー』がおすすめです。
5『黒い海岸の女王 新訂版コナン全集1』
ロバート・E・ハワード著 宇野利泰・中村融 訳/創元推理文庫(品切)
6『魔の都の二剣士 ファファード&グレイ・マウザー1』
フリッツ・ライバー 著 浅倉久志訳/創元推理文庫(品切)
7『メルニボネの皇子 エルリック・サーガ①』
マイクル・ムアコック 著 安田均 訳/ハヤカワ文庫(品切)
高校時代、ドラクエやファイナルファンタジーなどのテレビゲームが広まっていった時期に、TRPG(※)を楽しんでいました。そのなかで、そのファンタジー世界のルーツになるような作品も読み進めていました。なかでも「コナン」「ファファード&グレイ・マウザー」「エルリック」は外せないシリーズ作品です。小説・漫画・アニメなどで、ゲームをベースにしたものが定着していくなかで、こういった古典的な作品が再度手に入るようになってきたのは嬉しいです。
8『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』
ベネディクト・アンダーソン 著 白石隆・白石さや 訳/書籍工房早山
9『神の歴史 ユダヤ・キリスト・イスラーム教全史』
カレン・アームストロング 著 高尾利数 訳/柏書房
10『ユダヤ人の起源』
シュロモー・サンド 著 高橋武智 監訳 佐々木康之・木村高子 訳/ちくま学芸文庫
歴史は趣味で、古今東西いろいろな本(といっても研究書ではないライトなものですが)を読んできました。そのなかで最近は、国民国家・宗教・民族の虚構性を描いた本が手元に残っています。現代の国際問題につながっていくのですが……
ほかに選んだ本は、
11『敵は海賊・海賊版』 (神林長平 著/ハヤカワ文庫)|12『幼年期の終わり』(アーサー・C・クラーク 著 池田真紀子 訳/光文社古典新訳文庫)|13『暗殺者の惑星』(マイク・レズニック 著 小川隆 訳/新潮文庫 品切)|14・15『最新版 シルマリルの物語 上・下』(J・R・R・トールキン 著 C・トールキン 編 田中明子 訳/評論社文庫)|16『北欧神話物語』(K・クロスリイ・ホランド 著 山室静・米原まり子 訳/青土社)|17『夜と霧 新版』(ヴィクトール・E・フランクル 著 池田香代子 訳/みすず書房)|18『進化──生命のたどる道』(カール・ジンマー 著 長谷川眞理子 日本語版監修/岩波書店)|19『月と六ペンス』 (W・サマセット・モーム 著 土屋政雄 訳/光文社古典新訳文庫)|20『チャンドラー短篇全集1 キラー・イン・ザ・レイン』 (レイモンド・チャンドラー 著 小鷹信光・他 訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)|21・22『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上・下』(村上春樹 著/新潮文庫)
職業病で、本棚の並びにこだわってしまいます。
※TableTalk Role Playing Gameの略。電子機器を使用せず、プレイヤーがテーブルを囲んで会話をしながら遊ぶロールプレイングゲームのこと。
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▼限界本棚はほかにも…▼
母の気も知らぬきみ
わたしの限界本棚
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あの人の ほっとするとき ほっとするもの