わたしの限界本棚

美術書から海外ミステリまで…大判書籍の隙間に文庫を詰め込んだ28冊の本棚|「とものま」編集部・T

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もし自分の蔵書を、ひと箱(35㎝四方)に絞らないといけないことになったら、そこには何を入れますか? 思い出の本や、何度も読み返したい本、さらにはもう手に入らないから手放せないという本まで……本好きが集まる出版社の社員たちが、本棚として成立する“限界”まで本を減らした、「限界本棚」を覗いてみましょう。第1回は、「とものま」編集部・Tの本棚をご紹介します。

わが家の本棚には美術書や展覧会の図録(異様にかさばる)が多めです。その分、小説やエッセイはできる限り文庫でそろえるようにして容量圧縮に努めていますが、気軽に買う、買ったら手放さない、を繰り返しているうちに、本棚からあふれた本がキッチンカウンターにまで並ぶありさま。年季の入った“積読本”も多いので、つらつらと本棚を眺めていると、読んでいないおもしろそうな本が並んでいて嬉しくなります。

そんな蔵書の中から、ひと箱に収まるだけ選ぶとしたら……

1~5「黒後家蜘蛛の会」シリーズ5冊
 アイザック・アシモフ 著 池 央耿/創元推理文庫
海外ミステリは絶対に外せません。アガサ・クリスティの作品や、「ブラウン神父」シリーズも好きなのですが、一番何度も読み返しているのが、アシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズ。本編がおもしろいのは当然として、各話の最後にアシモフが書いている「あとがき」が最高なんです。ちなみにここまで書いて、また「あとがき」を拾い読みしていたら、アシモフもクリスティと「ブラウン神父」の熱烈なファンだという記述を見つけました。なるほど。

6『とるにたらないものもの』
7『いくつもの週末』
8『ホテルカクタス』

 以上、江國香織 著/集英社文庫
蔵書を作者別に分けたとき、1番多いのが江國香織でした。選んだ3冊は、どれも幾度となく読み返した作品ですが、特に「2」と「きゅうり」と「帽子」の暮らしと友情を描いた『ホテルカクタス』は、挿絵も含めて大好きな1冊です。『いくつもの週末』は、自分が結婚してから、よりおもしろく読めるようになりました。

9『夕べの雲』
10『ザボンの花』

 以上、庄野潤三 著/講談社文芸文庫
映画「パターソン」(ジャームッシュ・2016年)を見て「ここに人生のすべてがある……!」と言っていたら、友人に「これも絶対好きだと思う」と勧められた『夕べの雲』。あれよあれよという間に庄野作品が本棚で増殖し、数えてみたら25冊を超えていました。完全にただの日記になっている晩年の作品も大好きです。

11『世界の名作住宅を訪ねる ルイス・バラガンの家』
 ワタリウム美術館編/新潮社 品切
12『ルイス・バラガン 空間の読解』
 大河内学+廣澤秀眞+明治大学大河内研究室 編著/彰国社
建築家の私邸はどこも素敵ですが、わたしの憧れはルイス・バラガン邸です。カラフルでありながらモダンに転びすぎない、土っぽさがあるあたたかみに惹かれます。いつかメキシコで実物を見たいなと思いつつ、ページをめくる日々です。

ほかに選んだ本は……

13『園芸家12か月』(カレル・チャペック 著 小松太郎 訳/中公文庫)|14『ダーシェンカ 愛蔵版』(カレル・チャペック 著 伴田良輔 訳/青土社)|15『檀流クッキング』(檀一雄 著/中公文庫)|16『聡明な女は料理がうまい』(桐島洋子 著/アノニマ・スタジオ)|17『言語が違えば、世界が違って見えるわけ』(ガイ・ドイッチャー 著 椋田直子 訳/早川書房)|18『オレンジガール』(ヨースタイン・ゴルデル 著  猪苗代英徳 訳/NHK出版 品切)|19『絶叫委員会』(穂村弘 著/ちくま文庫)|20『自分の感受性くらい』(茨木のり子 著/花神社 品切)|21『着ること、生きること』(光野桃 著/新潮文庫 品切)|22『色のない島へ』(オリヴァー・サックス 著 大庭紀雄 監訳 春日井晶子 訳/早川書房)|23『一色一生』(志村ふくみ 著/講談社文芸文庫)|24『供述によるとペレイラは……』(アントニオ・タブッキ 著 須賀敦子 訳/白水社)|25『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(米原万里 著/角川文庫)|26『Dan Flavin: Lights』(Hatje Cantz Verlag Gmbh & Co Kg)|27『絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで<増補普及版>』(ホックニー、ゲイフォード 著 木下哲夫 訳/青幻社)|28『青騎士<新装版>』(カンディンスキー、フランツ・マルク 編 岡田素之、相澤正己 訳/白水社)

文庫を多めにして、限界まで詰め込んでしまいました。人間性が出ますね。

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