連載「絵本の選びかた」では、初めて絵本を手に取る方や、絵本選びに迷う方に向けて、絵本の楽しみかた・選びかたのヒントをお届けします。今回は、2才の子どもに絵本を読んであげるときのポイントをご紹介します。
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2才になると、日常の生活体験が少しずつ積み重なり、お母さんお父さんだけではなく、きょうだいや友だちといった他者への関心も強くなっていきます。自分と似ているものを喜んだり、絵本の登場人物の真似をしてみたり、自分から表現することにも興味をもちだす時期です。
ただ、身の回りの環境や、集団保育の経験の有無などにより、ひとりひとりの違いが大きい頃なので、子どもをよく見て、その子がのびのび楽しめる絵本を選んでください。ポイントは3つです。
音の響きを楽しむ絵本、遊びを楽しむ絵本、さまざまな「もの」の絵本など、赤ちゃんの頃から繰り返し楽しんできたお気に入りの絵本は、この時期も引き続き読んであげてください。
子どもにとって、赤ちゃんの頃から親しんできた大好きな絵本を読んでもらう時間は、とても安心して身を委ねることができ、心も満たされるものです。
また、2才以上を対象としたもので、赤ちゃん向けの絵本の特徴をもっている絵本も、この時期にぴったりです。慣れ親しんできた絵本に通じるものがあるので、抵抗なく楽しむことができます。
リズミカルな言葉とカラフルな色彩が特徴の『ころ ころ ころ』、かくれんぼ遊びの要素をもつ『きんぎょが にげた』、いないいないばあ遊びの発展形ともいえる『たまごのあかちゃん』、食べものができあがるまでの工程を丁寧に描いた『のりまき』や『ケーキ』、全国各地の電車が登場する『でんしゃ すきなのどーれ』など、子どもの興味に合わせて読んでみてください。
朝起きて、歯みがきや着替えをして、ごはんを食べて……日常の生活体験を少しずつ積み重ねてきた2才の子どもたち。「ひとりでやってみたい!」という気持ちも、少しずつ芽生えてくる時期です。
そんな子どもたちには、日常生活の中にある「ものごと」をうまく取り入れた絵本がおすすめです。
絵本の主人公に自分を重ねて失敗や成功のひとつひとつに共感したり、登場人物に刺激されて何かに挑戦したくなったり、絵本の世界と日常生活が結びついて、毎日の生活が豊かに色づきます。
『どうすればいいのかな?』は、なにごとにも一生懸命な“くまくん”が主人公の「くまくんシリーズ」の1冊。ひとりで着替えをしようとしたくまくんは、シャツを足からはいてしまったり、パンツを頭からかぶってしまったり……その度に「どうすればいいのかな?」とがんばって考えて、最後には上手に着替えることができます。
失敗しながらもひとりで奮闘するくまくんは、子どもたちの姿そのもの! 読んでもらっている子どもも、くまくんに自分を重ねて共感し、親子でクスっと笑ってしまう絵本です。
他にも、
・『おでかけのまえに』
・『いやだいやだ』『あーんあん』
・『パンツのはきかた』
・『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』
などがあります。
子守歌やわらべうたの調べもそうですが、赤ちゃん向け絵本がもつ言葉の心地よい響きや楽しいリズムは、聞くという行為の根源的な喜びを味わわせてくれます。
その後、言葉には「意味」があるということがわかってくると、子どもは言葉に強い関心を示し、日常の会話を通して貪欲に言葉を獲得していこうとします。
絵本の言葉は日常会話とは異なりますが、身近な大人が読んであげると、その人自身の生きた言葉として、子どもの耳に届きます。絵本の読み聞かせを通して、日々の生活では巡りあうことの少ない豊かな言葉に出会い、それらの言葉もスポンジのように吸収していくのです。
言葉の響きやリズムの楽しさ、そして言葉に出会う喜びを繰り返し味わうことで、言葉に耳を傾ける力=聞く力が育っていきます。
それは、物語の絵本を楽しめるようになるための第一歩。
絵本の言葉をよく聞けているなと感じたら、物語の絵本の入り口として、シンプルなおはなしの絵本を読んでみましょう。
『おつきさまこんばんは』は、優しい顔のお月さまが主人公の子どもたちに大人気の絵本。お月さまに「こんばんは」とあいさつしたら、そこに雲が通りかかってお月さまが隠れてしまって……という、とてもシンプルながら、起承転結のしっかりした物語です。
「絵本を読んでいるうちに、現実のお月さまにもあいさつするようになりました」「お月さまの表情を真似して楽しんでいます」という声から、この絵本がいかに小さな子どもたちに愛されているかが伝わってきます。
他にも、
・『ちいさなうさこちゃん』
・『わにわにのおふろ』
・『もりのおふろ』
・『ぞうくんのさんぽ』
などが、初めて物語に出会う子どもたちにおすすめです。
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