わたしの限界本棚

ヘヴィーメタル、宇宙、民藝……これからもずっとそばにいてほしい34冊の本棚|「かがくのとも」編集部・F

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もし自分の蔵書を、ひと箱(35㎝四方)に絞らないといけないことになったら、そこには何を入れますか? 本好きが集まる出版社の社員たちが、本棚として成立する“限界”まで本を減らした、「限界本棚」を覗いてみましょう。第6回は、「かがくのとも」編集部・Fの本棚をご紹介します。

自分の本棚をぼーっと眺めていることがよくあります。限られたスペースに詰め込まれている本のうち8割ほどは「再読したい」とは思いつつも、人生の締め切りの都合上もう読めないような気もしています。でも、どの本も背表紙を眺めるだけで、出会ったきっかけや当時の読書体験などを思い出し「この本のことは忘れたくない」「ずっとそばにいて欲しい」と思ってしまうものたちです。そして1割は何度も繰り返し読んでいる本、残り1割はこれから読む本という感じでしょうか。本好きあるあるでしょうが「いや、これ以上は減らせないよ……」という、すでに限界な本棚……

そんな蔵書の中から、ひと箱に収まるだけ選ぶとしたら……

≪メタル≫
1「ヘドバン Vol.20 メタルが人生を変えてくれた」
 シンコーミュージック・エンタテイメント

中学2年の頃からメタル(ヘヴィーメタル)が好きです。メタルに出会ったときの雷に打たれたような衝撃、「俺はこのために産まれてきた!」という衝動や興奮は今でも覚えています。父に頼み込んでエレキギターを買ってもらい、指先から血が出ても練習していましたっけ……。それから四半世紀以上、バンドやギターをやめてからもずっと、メタルを聴き、メタルに励まされ、メタルとともに生きています。「メタルは裏切らない」(メタルバンドPhantom Excaliverの楽曲タイトルでもある)と日々聴覚で確認していることを、目視確認させてくれるこの本の背表紙は限界本棚に必須です。

≪宇宙≫
2『最新 図表地学』
 浜島書店(品切)
3『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』
 佐藤勝彦 著/PHP文庫
4『宇宙の風に聴く──君たちは星のかけらだよ』
 佐治晴夫 著/カタツムリ社(品切)
5『「科学にすがるな!」──宇宙と死をめぐる特別授業』
 佐藤文隆 著 艸場よしみ 著/岩波現代文庫

中2・中3のギターの独学を経て、高校時代は(じつは大学時代も……)主にバンド活動に捧げましたが、そんな中でも楽しいと思えた唯一の勉強科目が地学でした。その延長で今も宇宙や星のことについて、ふと考えることがあります。夜空を見上げ、何百光年先の星から何百年も前に放たれた光たちに今、心うるおしてもらっていることを思うとき、自分の過去が自分の産まれる遥か前にまで拡張するような感覚になります。そうして一度ワクが外れると、よくある表現ですが──この星々、ひいては、この宇宙の誕生あっての今・自分──と感じたりもして、ちっぽけな一人の人間としての自分の人生も、今見ている星の光のように少し愛おしく、肯定的に捉えられる気がするのです。

≪井筒俊彦≫
6『意識と本質:精神的東洋を索めて』
 井筒俊彦 著/岩波文庫
7『意識の形而上学:『大乗起信論』の哲学』
 井筒俊彦 著/中公文庫
8『イスラーム哲学の原像』
 井筒俊彦 著/岩波新書

社会人となりバンドもギターもやめて、趣味が音楽(メタル)鑑賞と読書にしぼられてからハマったのが井筒俊彦でした。入社して間もない頃、何だかすごそうな本を推し合っている先輩を見て「自分も負けないような本を読み、負けない哲学を持たねば……」と焦った結果「何だかすごそうな本だ!」と『意識と本質』を読みはじめました。東洋を中心としつつも、東西の様々な哲学や宗教の真髄を捉え、東西に共通する意識の構造を描きだす本です。何度も読み返しつつ、この本を理解するために別の様々な本に手を出したり、お寺や自宅で座禅や読経に励んだり……という期間が何年かありました。

≪柳宗悦≫
9『民藝四十年』
 柳宗悦 著/岩波文庫
10『民藝の100年』
 東京国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション、毎日新聞社

稀少で高価なものが美しくなったところで、それに救われる者などごくわずか。万人が生活をともにするものこそ美しくなければ。そして、その万人救済の美は美醜の対立を超越した美、用の美(民衆に日々用いられることを追求した工藝に顕現する美)によって為される──という柳宗悦の思想は、井筒俊彦が教えてくれた「真髄」のようなものが、触れて感じられるものとして、とっくの昔から身近にあったことを教えてくれました。「ほら、その、今きみが手に持っているマグカップとかね」と。

『民藝四十年』を片手に年に何度か日本民藝館を一人訪れるのですが、そんなときには、柳がいつも特別に案内してくれて「この部屋にあるもの、どれでも一つ持って帰って普段使いにして良いよ。さて、君ならどれにする?」と各部屋で問うてくれる──という、妄想修行をしています(漫然と眺めるより、実際に用いることを想像して楽しくなるので、オススメです)。

≪俳句≫
11『新版 20週俳句入門』
 藤田湘子 著/角川学芸ブックス(現在は角川ソフィア文庫から刊行)
12『合本 現代俳句歳時記』
 角川春樹 編/角川春樹事務所
13『俳句鑑賞450番勝負』
 中村裕 著/文春新書(品切)

弊社には「あなた、もしかしてプロの俳人ですか?」と思ってしまうような人が数人います。そんな人たちに句会にさそってもらい、自分の詠んだ句に言及してもらったときの脳がしびれるような嬉しさは忘れられません。そして、自分ももっと良い句を詠めるようになりたい! と、願って手にとったのが、『新版 20週俳句入門』でした。

この本は、徹底的に俳句の「型」を覚えさせることで読者を確実に入門させ、(良い句かはともかく)何のためらいも恥じらいもなく詠めるようにし、とにかく詠め! 毎日詠め! 継続こそ力なり! と、一生門から出させてくれないような力を持っています。さすがに今は毎日詠んだりはできていませんが、

本棚の限界こえて天の川

こんなふうに、恥じらいなく詠めます。俳句は誰でも一瞬で表現できて、誰とでも一瞬で共有できる究極の詩ですね。

他に選んだ本は……

14『新編 銀河鉄道の夜』(宮沢賢治 著/新潮文庫)|15『紫苑物語』(石川淳 著/講談社文芸文庫)|16『楢山節考』(深沢七郎 著/新潮文庫)|17『20世紀美術』(高階秀爾 著/ちくま学芸文庫)|18『文章読本』(丸谷才一 著/中公文庫)|19『描き文字のデザイン』(雪 朱里 著 大貫伸樹 監修/グラフィック社)|20『絵画の冒険者 暁斎 Kyosai─近代へ架ける橋』(京都国立博物館)|21『炎の言霊 島本和彦名言集』(島本和彦 著/朝日ソノラマ 品切)|22『庵野秀明展』(朝日新聞社)|23『宗教学入門』(脇本平也 著/講談社学術文庫)|24『時と永遠 他八篇』(波多野精一 著/岩波文庫 品切)|25『基督教の起源 他一篇』(波多野精一 著/岩波文庫 品切)|26『後世への最大遺物・デンマルク国の話』(内村鑑三 著/岩波文庫)|27『空海コレクション2』(宮坂宥勝 監修/ちくま学芸文庫)|28『原始仏典』(中村 元 著/ちくま学芸文庫)|29『老子・荘子』(野村茂夫 著/角川ソフィア文庫)|30『時間はどこで生まれるのか』(橋元淳一郎 著/集英社新書)|31『動物と人間の世界認識』(日高敏隆 著/ちくま学芸文庫)|32『進化しすぎた脳』(池谷裕二 著/講談社)|33『植物知識』(牧野富太郎 著/講談社学術文庫)|34『旅をする木』(星野道夫 著/文春文庫)

本を選ぶ過程、とっても楽しかったです。みなさんも一度ご自身の限界本棚を考えてみることをオススメします! というわけで、限界本棚のご購入はコチラから!

(とものま編集部へ、このあたりにリンクを貼って下さい)

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(とものま編集部)

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