絵本屋さんのある街を、親子で旅してみませんか? 全国各地のステキな絵本屋さんと、親子いっしょに楽しめる近隣のおすすめスポットの魅力を、イラストレーター・Tamyさんのイラストルポでご紹介していきます。旅先の絵本屋さんで出会った1冊は、きっと想い出の1冊になりますよ。

甲府駅 東京駅からJR特急あずさで1時間43分

「絵本専門店ゆめやブッククラブ」は、甲府駅から少し離れた武田神社近くの閑静な住宅街の一角にあります。1980年(昭和55年)に開業し、ご夫婦お二人で自然豊かな甲府の街から全国各地に本を届けています。
ゆめやさんの特徴は配本サービス「ブッククラブ」です。
決められたプログラム通りに本を送るのではなく、ひとりひとりに寄り添う本を選んでくれます。というのも、幼い頃は月齢差が大きく、同じ年齢でも前半か後半で適した本が異なるのだそうです。さらに性別や兄弟構成、季節などの要素も織り込みながら、まるで手渡すように毎月本を届ける。そんな手間も時間もかかる配本を、ご夫婦二人で対応されているというのですから驚きです。
「なんでみんな面倒くさい事をやらないのかなぁ」とおっしゃる店主の長谷川敏夫さんは、新聞社、出版社での勤務を経て、地元山梨に戻りお店を始めました。
大学ではドイツの歴史哲学を学び、卒論ではオスヴァルト・シュペングラー著「西洋の没落」を取り上げました。ひとつの文明が始まり、やがて終わるまでを描いたこの世界史の中で、長谷川さんは「哲学的指導者と高度な宗教、そして文字を持つ文明が永く続く」と感じ、そこから「物事を判断するには知的なものが必要。そのプロセスを小さい頃からの配本で当てはめてみよう」と考えるようになったそうです。
ちょうど当時はファミコンが普及しはじめた時代。実際にゲームをやってみて、その中毒性を知り、「子どもに必要なのはゲームではない、これはまずい」と思ったことも、絵本専門店を開くきっかけになりました。
とはいえ人口の少なさもあって甲府市は本が売れず、買ってくれるのは他県からの転勤族のご家庭が多かったといいます。そういったお客さんの「引越し先にも本を送ってほしい」というリクエストに応えて毎月配本するようになったのが「ブッククラブ」の始まりでした。最初は8人からのスタートでしたが、口コミで広がり、いちばん多い時には1,000人を超える会員に。現在はきめ細かい対応ができるよう500人ほどにしているそうです。
(ブッククラブの申し込みは、基本的に現会員からの紹介のみとしていますが、店舗に足を運んで、相談することはできます)
選書は既存の基準にしばられず、長谷川さん自ら行います。
生後10か月頃に『どうぶつのおかあさん』* から始まり、『くだもの』* や『いないいないばあ』(童心社)と続いていくそうです。
例えば『おおきなかぶ』* は小学校の教科書に掲載されていますが、年齢の低い子どもにぴったりの言葉の繰り返しを特徴にもっているので、ブッククラブでは2才の子どもに届けています。『もりのなか』* は文章が少し長くなるので、同じ2才でも後半に入れていたりと、きめ細やかな工夫がされています。
たくさんは売れなくてもご自身がよいと思う本も扱います。店内には古典文学の棚もあり、長谷川さんは「『レ・ミゼラブル』* を読ませたいけど、小学生のうちにたどり着く子は少なくて。アニメを見てわかったつもりになるけど、それとどう闘うかだね」と語ります。(* は福音館書店刊行)
また会員向けの新聞も発行されていて、読み聞かせの方法や、発達に合わせた選書がなぜ大切なのかを伝えるだけでなく、「おたんじょうびおめでとう」のコーナーも設けています。そこには会員ひとりひとりと向き合う、真摯で温かな気持ちが込められていました。
■店舗情報
絵本専門店ゆめやブッククラブ
山梨県甲府市屋形3-3-7 ※甲府駅から車で約10分
https://www.yumeya-bookclub.jp/

■スポット情報
昇仙峡
※甲府駅から滝上駐車場まで車で約30分
昇仙峡観光協会 https://www.shosenkyo-kankoukyokai.com/

■店舗情報
澤田屋 本店
山梨県甲府市中央4-3-24 ※甲府駅から徒歩13分
https://sawataya.jp/

■店舗情報
甲州ほうとう小作 甲府北口駅前店
甲府市北口1丁目4-11 ※甲府駅から徒歩2分
https://www.kosaku.co.jp/tenpo-kofukitaguchi.html
・絵と文 Tamy