絵本作家の簡単ごはん

ポルトガル風 シンプルな塩焼き|福知伸夫

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絵本作家のみなさんに、お気に入りのレシピを教えてもらいました。それぞれの家庭の定番料理から、旅先での忘れられない味を再現したものまで……2000年から2002年にかけて「こどものとも年少版」折込で連載されていた「私の料理自慢」を改題・再掲いたします。作家たちの素顔が垣間見えるエピソードとともにお楽しみください。

第9回は『とってください』『こちょこちょ』などの絵本を手掛けた福知伸夫さんです。

ポルトガル風 シンプルな塩焼き

福知伸夫

数年前に夫婦でポルトガルを旅行した時、毎日食べても飽きることのなかった料理を紹介します。

向こうのカフェでは、昼食時に本日のスープが売られています。その中でも、ジャガイモとキャベツのスープは定番メニューです。すりつぶしたジャガイモと、千切りかみじん切り、またはペースト状にしたキャベツがスープの具です。キャベツの切り方は、お店によって特徴がありますが、私としては、千切りのキャベツが一番良いと思います。味は日本の味噌汁に近いです。味噌汁に細かくしたジャガイモと千切りキャベツをいっぱい入れると、ポルトガル風味噌汁の出来上がり。

おじや料理もおいしかったです。おじやのベースはトマトソースで、その中に海鮮の具がいっぱい入っているのが “アローズ・デ・マリスコス”。“アローズ・デ・ポルボ” はタコのおじや。フライパンに入れたオリーブオイルに、にんにくと鷹の爪で香りをつけます。その中に生タコ、白ワインを加え、生米を入れます。この時のお米は研いではいけません。その後、水とトマトの水煮を加えて米が炊けたら、ハーブと塩で味を調えて出来上がりです。この料理は、生タコから出るだしが決め手です。近所のスーパーマーケットには、生タコがあまりないので、生タコを見つけると、この料理が食べたくなります。

何でもおいしいポルトガル料理だけど、私が一番気に入ったのは、シンプルな炭火焼きです。ポルトガルでは注文すると、店員が外に出て、肉、魚、野菜と何でも炭火で焼いてきてくれます。炭火焼きの魚は、ふっくらとジューシーでとても旨い。

© Nobuo Fukuchi

ある晩、おじさん一人でやっている店で、カレイの塩焼きを注文しました。おじさんは、焼き上がったカレイを、お皿の上で身と骨に分けてくれました。そして、まだいっぱい身の付いた骨を片づけようとしました。私はあわてて、「まだいいよ」と言おうとしたのですが、「どうだい、きれいに分けただろう」と言わんばかりのおじさんの満足げな顔に、思わず「オブリガード」とお礼を言ってしまい、身の付いた骨は奥に消えてしまいました。「オブリガード」は「ありがとう」の意味で、どこか語感が日本語に似て親近感があります。

あくる朝、私は地図を無くしたことに気付きました。旅先のことをいろいろ書き込んでいたので、残念でした。ところがタ食に昨日の店に行ったら、おじさんが申し訳なさそうな顔をして「これは君の地図かい?」と持ってきました。その地図には、子どもの落書きがいっぱいしてありました。ふっと見ると、厨房の中から男の子が心配そうにこちらを覗いていました。おじさんが私に「どこから来たのか?」と聞くので、「日本から」と言うと、「ポルトガルと日本は、言葉や文化に共通点があるんだ」と話してくれました。そして私が「明日、この町を出る」と言うと、甘くて強いお酒をご馳走してくれました。

ポルトガルで一番シンプルでおいしかった塩焼き

1.あじを塩焼きにし、お皿に盛り付ける。

2.茹でたジャガイモをごろごろとあじのまわりに置き、付け合わせにする。

3.エクストラバージンオイルをたっぷりかける。

4.白ワインビネガーをかける。

※白ワインビネガーが無かった時に、代わりに米酢を使ったら、それなりにおいしかったです。

ポルトガル旅行以来、我が家では、魚の塩焼きの際に使っていた、醤油と大根おろしが消えました。ここで紹介した調理法は、自己流、しかも想像で作った、なんちゃってポルトガル料理です。

※「こどものとも年少版」2001年12月号折り込み付録より改題・再掲
※表記は掲載当時のままとなっています

\おいしそうな料理はほかにも…/

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