連載「絵本の選びかた」では、初めて絵本を手に取る方や、絵本選びに迷う方に向けて、絵本の楽しみかた・選びかたのヒントをお届けします。今回は、0~1才の赤ちゃんに絵本を読んであげるときのポイントをご紹介します
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初めて絵本と出会う赤ちゃんにとって、絵本はおもちゃのようなもの。つかんで投げたり、かじったりは当たり前です。
ですから、無理に始めから終わりまで読み通そうとしたり、赤ちゃんが集中して見ていないからと焦ったりしないで大丈夫です。
ひとりひとりちがいはありますが、赤ちゃんは10か月くらいになると、お母さんやお父さんの言葉を聞きながら絵本を楽しむことができるようになります。
お母さんやお父さんがそばにいて、一緒に同じものを見ながら語りかけてくれる……それが絵本の時間だとわかってくると、「絵本=自分を嬉しい気持ちにさせてくれるもの」という認識が芽生え、赤ちゃんは少しずつ絵本そのものの魅力を知っていきます。
この時期にまずおすすめしたいのは、音の響きを楽しむ絵本。
赤ちゃんは、お母さんやお父さんの声はもちろん、雨の音、風の音にも聞き耳をたて、面白い響きやリズム、心地よい言葉を楽しむ柔らかな耳をもっています。聞こえたものをどんどん吸収していくこの時期に、様々な音や言葉にふれることは、赤ちゃんが豊かな言葉を獲得していくきっかけにもなります。
『ごぶごぶ ごぼごぼ』は、抽象的な形に鮮やかな色、そしていろんな種類の音があふれた、赤ちゃんが大好きな絵本です。「ごぶ ごぶ ごぼ ごぼ」「ぷく ぷく ぷく ぷくん」などの不思議な音と、ページごとに変わっていく色や形が響きあって、刊行時からたくさんの赤ちゃんに愛されてきました。
他にも、
・『がたん ごとん がたん ごとん』
・『てん てん てん』
・『かさ さしてあげるね』
など、思わず口ずさみたくなる言葉が印象的な絵本がたくさんあります。
赤ちゃんをあやす定番の遊びのひとつ、「いない いない ばあ」。隠れていたものが目の前に現れることに、赤ちゃんは大喜びします。
遊びと結びついた絵本は、まだ絵本に慣れていない赤ちゃんも楽しめることが多いので、読み聞かせの最初の一歩におすすめです!
『めんめん ばあ』は、「いない いない ばあ」をモチーフにした1冊。わらべ唄のような心地よい言葉のくりかえしと、動物たちが「ばあーっ! 」といって顔を見せる時の表情が、赤ちゃんを惹きつけます。
赤ちゃんと一緒に体を動かして遊べる絵本もあります。
絵本に描かれている内容に合わせて、赤ちゃんを抱っこしたり、くすぐったり、いっしょに体操したり。キャッキャと赤ちゃんの笑い声が響きます。赤ちゃんとのスキンシップにつながる絵本です。
このジャンルで人気がある絵本が、『ぺんぎんたいそう』。ぺんぎんのかわいらしい動きをモチーフにした体操を、赤ちゃんと一緒に楽しめる1冊です。
・『こねこが にゃあ』
・『だっこ だっこ だーいすき』
なども、遊びの要素がある絵本です。
赤ちゃんの身の回りにある“もの”をしっかり描いた絵本も、この時期におすすめです。
中でも、「食べもの」「動物」「乗りもの」の3つは、赤ちゃんが喜ぶ定番のジャンル。生活の中でよく目にするものや、よく知っているものが登場することで、赤ちゃんの絵本への興味と関心がぐっと高まります。
『くだもの』は、対象年齢2才以上の幼児絵本シリーズですが、いろんな食べ物に興味を持ちはじめた時期の赤ちゃんも強い関心をしめす絵本のひとつです。りんご、すいか、ももなどの果物が、思わず手を伸ばしたくなってしまうほど写実的に描かれ、赤ちゃんはそのおいしさを目で味わうことができます。
さらに、それぞれの果物が切り分けられたページには、「さあどうぞ」という一言がそえられているので、食べるまねをしてみたり、「おいしいね」と声をかけたり、赤ちゃんとコミュニケーションを取りながら楽しむことができる1冊です。
赤ちゃんに人気のある食べもの絵本は他にもたくさんありますが、
・『まるくて おいしいよ』
・『ぽんちんぱん』
・『もぐもぐ がじがじ』
などもおすすめです。
気持ちよく眠っている動物の親子が、次のページで「あー、おきた!」と目をさます『もう おきるかな?』も、赤ちゃんをひきつける1冊です。
赤ちゃんの生活の基本でもある「寝る」と「起きる」が、身近な動物の姿を通して描かれています。写実的に描かれているからこそ、「絵本の中に知っている動物を見つけると、指差して教えてくれる」「描かれた動物に手を伸ばしてさわろうとする」など、赤ちゃんが生き生きとした反応を返してくれる絵本です。
動物の絵本は、親子のふれあいのきっかけになる作品が多いので、動物たちのまねをして体を寄せあうなど、赤ちゃんとスキンシップを取りながら楽しむのにもぴったり。
『よくきたね』『どうぶつのおやこ』『ぱっちり おはよう』なども人気の作品です。
踏み切りや信号待ちの道路で、大人に抱っこされた赤ちゃんが乗りものにじっと見入っている。そんな姿を目にしたことはありませんか?
『ぶーぶー じどうしゃ』は、赤ちゃんが日ごろ目にする乗りものを丁寧に描いた絵本です。街で見たものを絵本でも見つけたり、絵本で親しんだものに実際に出会ったり、現実と絵本の世界を行き来しながら楽しむことで、赤ちゃんの世界が広がっていきます。
・『ぶーぶーぶー』
・『のりたいな』
・『ずかん・じどうしゃ』
なども、赤ちゃんから楽しめる乗りもの絵本です。
まだまだ絵本をすぐに投げたり、かじったりする時期だけど、少しずつ絵本にもなじんでいってほしい。そういうときは、頑丈な紙を使用している0.1.2.えほんシリーズ や ボードブック版の絵本がおすすめです。
絵本を買ってみたいけれど、あっという間にびりびりに破れてしまった……という方は少なくありません。0.1.2.えほんシリーズやボードブックなら、頑丈な厚紙を使用しているので安心です。
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