こどものとも70周年

福音館社員が選ぶ 「こどものとも」わたしの1冊|『ながいかみのむすめ チャンファメイ』(編集部・Y)

絵本 |
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月刊絵本「こどものとも」が、2026年、創刊70周年を迎えました。
小さい頃に読んでもらったり、入社して出会ったり、子どもに読み聞かせたり……これまでに刊行された「こどものとも」から、福音館社員が思い入れのある1冊をご紹介します。

第16回は入社36年目、書籍編集部 科学書・Yの1冊。

ひとりでじっくりいつまでも
『ながいかみのむすめ チャンファメイ』

科学書編集部・Y
 

棚の隅にしまわれた薄緑色の絵本を、久しぶりに手に取りました。子育て中、たくさんの絵本や童話を読み聞かせてきましたが、この絵本は「読んで」とせがまれたことがありません。でもなぜか、2人の娘のお気に入りなのです。

この絵本がわが家にやってきたのは、今は成人した長女が、小学1年生だった頃でした。山の神様の怒りにふれた女の子のお話で、絵には独特の雰囲気があります。怖がるかなぁと思いながら、サラッと1回読み聞かせたところ、それきりリクエストはありませんでした。けれども、長女は主人公の美しい長い髪を気に入ったらしく、時々、棚から取り出しては眺めていました。読まなくていいの? うん、いいの。そんな会話を交わした覚えがあります。ひとりでゆっくり、じっくりと異世界に没頭する──それが彼女なりの向き合い方だったのでしょう。この絵本は、今も長女の本棚に並んでいます。

5才違いの次女も「この絵本、好きだった」と言います。けれども、彼女からも「読んで」と頼まれた覚えはありません。聞けば、保育園から帰った夕方、大人が食事を用意している間に棚から引っ張り出して、ひとりで眺めていたそうです。「字を習う前だったから、絵ばっかり見てた」とのこと。中でも好きなのは、主人公が山の神様の洞穴へ連れていかれる2つの場面だそうです。ひとつ目の場面は青、2つ目は赤。どちらも同じ構図ですが、後者は神様の怒りが爆発するシーンで、真っ赤な業火が燃えさかっています。次女は、この2場面を見比べては「天井にいたコウモリが、こっちでは飛んでる。このグラスが倒れてる」などなど、違いを見つける遊びをしていたそうです。

日本画家の著者による繊細な髪の表現をうっとりと眺めていた長女。怖いおじさん(神様)の絵を見比べて遊んでいた次女。同じ1冊の本に、それぞれの子がまったく違った視点からアプローチしていたことを面白く思うと同時に、子ども心をグッとひきつけた作品のポテンシャルを実感します。物語の世界観を独自の表現で届けてくださった著者のお二方に、改めて感謝を申し上げたいです。

読み聞かせ大好きな娘たちが「読ませてくれなかった絵本」のお話でした。

『ながいかみのむすめチャンファメイ』 
君島久子 再話 後藤 仁 画

山に囲まれた貧しい村に住む長い髪の娘は、ある日、偶然不思議な泉を見つけます。でも山神に、泉のことを人に教えたら命はないと脅されます。日照りで水不足の村のために、その泉のことを村人に教えたくて、その葛藤に心優しい娘は苦しみます。でも、ある日我慢できなくなって、村人に泉のことを教えてしまいます……。中国・侗(トン)族の民話。

*「こどものとも」2013年3月号

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