お正月に食べる、日本の伝統食「おせち」。そこに込められた意味や願いを、美しい絵と優しい言葉で伝える絵本『おせち』は、刊行と同時に大きな反響を呼びました。この連載では、絵本に登場するおせちから3つのレシピを、それぞれに込められた願いとともにご紹介します。
2つ目は、扇形がおめでたい「松風焼き」のレシピ。鶏ひき肉で作る「松風焼き」は、つくねのような味わいなので、子どもたちにも食べやすいひと品です。
松でも風でもなく扇子の形をしているのに、どうして「まつかぜ」というのでしょう?
日本の古典文芸において、松林を吹き抜ける「松風」は、うら(=浦)寂しい海岸の情景を表すキーワードで、「松風」「浦」「寂し」は深く関連のあることばとして、和歌などの文章に意図的に使われてきました。
料理の松風は、表にはケシの実やゴマが散らしてありますが、裏には何もついていないので寂しく感じます。
そこで、「裏寂し(うらさびし)」を「浦寂し」にかけ、海岸に吹く「松風」を料理の名前にしたのです。
おせち料理の松風は、末広がりの扇子の形をしています。
末広がりというのは、先が広がっている様子を表し、「末々まで栄えて発展していく」ことを意味していておめでたい。
また、裏に何もついていないので、「隠し事のない正直な生き方ができるように」という願いも込められています。
松風は、とても風流で深い意味のある料理なのですね。
テキスト:三浦康子

鶏ひき肉 300g
卵 1個
パン粉 20g(1/2カップ)
*A
みそ 50g
砂糖 大さじ2
酒 大さじ1
みりん 小さじ2
みりん 適量(上に塗る用)
けしの実 小さじ1程度
※下線は子どもが手伝いやすい工程です。
① 肉ダネをつくる
ボウルにひき肉を入れ、卵、パン粉、Aの調味料を加え、粘りが出るまでこねる。

② 型に入れる
底と側面にオーブンシートを敷いた型に①を入れ、表面を平らにならす。刷毛で表面にみりんを薄くぬり、けしの実を全体にふる。
③ 焼く
200℃に予熱したオーブンに入れ、20分焼く。冷めたら型から出す。
④ 扇子の形に切り分ける
両端を切り落としてから、全体を半分に切り、2つの長方形を作ります。それぞれの長方形から5つずつ扇形を作ると、きれいな形にできあがります。

◆ 保存方法
冷めたら切らない状態で保存容器に入れて冷蔵庫へ。3~4日は保存可能です。盛り付ける前に切ります。
レシピ作成・調理:満留邦子
写真:キッチンミノル
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子どもと味わう おせち料理
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