季節や行事を描いた本を、子どもと一緒に楽しみたい! そう思っていても、あわただしく過ごしていると、あっという間に行事の日は過ぎ、気づけばもう次の季節……。それならちょっと余裕をもって、ひと月前から準備を始めてみませんか?
これから1年間、子どもたちに本を手渡しつづけている、東京子ども図書館の皆さんに「来月楽しみたい本」を紹介していただきます。10月のおすすめを教えてくださるのは、護得久えみ子さん。
さあ、10月はこれ読もう!
ようやく、暑さも落ち着く10月。野菜や果物がいろいろとれる季節です。どんぐり拾いに熱中できる時期でもありますね。収穫したものをお供えするお月見や、死者の祭りが起源のハロウィーンなどの行事も。そんな、もりだくさんの秋に楽しみたい本を集めてみました。
市村久子 原案 赤羽末吉 作・絵 / 福音館書店 / 幼児から
あおぞらようちえんの芋ほり遠足が、雨で1週間延期に。「つまんなーい」とがっかりする子どもたちに、先生は、そのあいだに、おいもはどんどん大きくなるよと話します。そこで子どもたちは、おおきなおいもの絵を描くことに。紙をつないで、絵の具をぬって……。できあがった大きな大きなおいも、どうやって運ぶ? なにして遊ぶ? おいしく食べるには?
空想の世界が思いっきり広がる愉快な絵本です。おいもをたらふく食べた子どもたちが、おならで飛び上がる場面に、思わず笑いださずにはいられません。
いしい ももこ 文 なかたに ちよこ 絵 / 福音館書店 / 幼児から
子牛のはなこは、放牧場でほかの子牛たちを負かして女王になり、いばり放題。涼しい木陰や水飲み場もひとりじめ。あるとき、お百姓さんが「みんなでたべろよ」と持ってきた、おいもとかぼちゃの山をひとりじめしたら、おなかがアドバルーンみたいにふくれてしまって、さあ大変! いまにも破裂しそうな、はなこのもとへ駆けつけた獣医さんは、太い注射器をとりだし……。
おはなしのじかんに読むと、子どもたちは、はなこの治療法に興味しんしん。目を丸くして聞いています。
エスター・アベリル 作・絵 松岡享子・張替惠子 共訳 / 福音館書店 / 幼児から
ハロウィーンの夜のできごと。黒ネコのジェニーは近所のキャット・クラブの集まりに出かけます。今夜は、ペルシャ猫のマダム・バタフライがコンサートを開くのです。ところが、マダムはケガをして面会謝絶、大事な鼻笛も落としてしまいます。ジェニーは、勇気を出して、鼻笛を届ける役に志願し……。
はにかみ屋の黒ネコ・ジェニーのお話集、全3巻の2巻目ですが、この巻から読むこともできます。ふだんは引っ込み思案で、恥ずかしがり屋、でも時に大胆にもなれるジェニーに共感する子も多く、読んでもらえば小学校に入る前の子でも楽しめます。
≪幼児から≫
④『いまはあき』
ロイス・レンスキー 作 さくま ゆみこ 訳 / あすなろ書房
「なつが おわって あきがきた。あきは いちばん すてきなきせつ」。落ち葉遊びに、りんごの収穫。かぼちゃをくりぬいてろうそくを灯し、仮装行列にでかけよう。子どもたちの秋を描いた小型絵本。1948年にアメリカで刊行されました。四季を取り上げた4冊組の1冊です。
⑤『かにむかし』
木下順二 文 清水崑 絵 / 岩波書店
かにが浜辺でかきのたねを拾い、庭のすみにまきました。毎日せっせと、水やこやしをやるうちに、柿は芽を出し、大きくなり、実をつけます。その実が熟れたところへ、さるが来て、実をつぎつぎに食べ……。「さるかに合戦」としてよく知られる、日本の昔話です。
⑥『りすのナトキンのおはなし』
ビアトリクス・ポター 作・絵 いしい ももこ 訳 / 福音館書店
秋、あかりすたちはどんぐりや栗を拾いに、いかだで湖の島へ。仲間は島の主のふくろう・ブラウンじいさまに礼をつくしますが、なまいきなナトキンは、じいさまになぞなぞを出して、とんだりはねたり好き放題。とうとうじいさまの堪忍袋の緒が切れ……。
⑦『どんぐりノート』
いわさ ゆうこ 大滝玲子 共作 / 文化出版局
ナラ、カシなど、ドングリの仲間23種を、1ページごとに紹介する絵本図鑑。葉や樹皮の写真を中心に、木の全形や殻斗(かくと・ドングリの帽子)、食べ方や名前の由来をイラストつきで説明。それぞれのドングリの個性が見えてきます。拾ったドングリの名前しらべにも。
⑧『にぐるまひいて』
ドナルド・ホール 文 バーバラ・クーニー 絵 もき かずこ 訳 / ほるぷ出版
10月、父さんは荷車に牛をつないだ。そして、羊毛やショール、手袋、じゃがいも、かえで砂糖、ろうそくなど、この1年に家族みんなが作り、育てたものを積んで、10日がかりで市場まで、売りに行く。19世紀はじめの、アメリカ東部の農家を描いた絵本です。
⑨『まよなかの魔女たち』
エイドリアン・アダムズ 作・絵 野口絵美 訳 / 徳間書店
まよなかに起き出した魔女たちは、コウモリのシチューをたべ、ほうきにのって空へ。月のまわりをまわったり、曲乗りをしたり。つかれたら、月に座ってひとやすみ。地球に帰ってきたら、ハロウィーンの仮装をした子どもたちに出会ってびっくり!
≪小学生から≫
⑩『干し柿』
西村 豊 写真・文 / あかね書房
渋柿を干して甘くする、昔ながらの知恵・干し柿。手で皮をむき、へたを縄でつないで、軒下につるし、ときどき指でもんで渋を抜き……。農家の干し柿作りを追った写真絵本。日の光をあびた柿の朱色が美しく、印象的です。子どもたちが干し柿作りに挑戦するページも。
⑪『月の満ちかけ絵本』
大枝史郎 文 佐藤みき 絵 / あすなろ書房
新月、二日月、十三夜、立待月……。29日半周期でくりかえす月の満ちかけのしくみを、1日ごとに見開きで紹介。古来の呼び名の由来や、お月見の風習などをさしえとともに紹介します。月が昔から、日本人の暮しの身近にあったことがつたわってきます。
絵本がいいってほんと?
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えほんとわたし
えほんとわたし
えほんとわたし
手から手へ 松居直の社内講義録