「えほんQ&A」は、読者のみなさまから寄せられた疑問や悩みにお答えする連載です。「子どもが同じ本ばかり読んでほしがる」「読み聞かせを最後まで聞いてくれない」など、いつだって悩みはつきないもの。絵本や読み聞かせを楽しむときの参考に、どうぞご覧ください。
絵本を読んだあと、子どもに感想を聞いたり、質問をするのはよくないのでしょうか? 理解が深まるなら……と思っていろいろ聞いても、こちらの質問にちゃんと答えてくれなかったり、すぐに次の絵本をもってきたりして、悩んでしまいます。
子どもが絵本を楽しめたかどうか、読んでいる側の私たちは気になりますよね。だから当然、「どうだった?」と聞いて確かめたくなります。
でも、無理に感想を聞きだそうとはせず、できるだけ自由に楽しませてあげてください。なぜなら、その質問は子どもにとって、ちょっと重たいものかもしれないからです。
まず、絵本がとても楽しかった場合を考えてみましょう。そういう時、子どもは「もういっかい!」と、その絵本の世界を繰り返し味わおうとします。お話の世界にどっぷり入り込んでいたいのです。……そんな時に「どうだった?」と横やりが入ったら、せっかくの気分が台無しですよね。また、子どもは何も言わずに、絵本の世界にひたっていることもあります。読み手からの質問は、そんな幸せな時間を邪魔してしまいます。
では逆に、その絵本が楽しくなかったとしたら、どうでしょう? 期待していたのに、おもしろさを感じられないまま終わってしまった。そこへ、「どうだった?」と聞かれます。子どもはおもしろいと感じられなかった内容を思い出して、感想を言わなければなりません。それは子どもにとって楽しいことではありません。
感想を聞かなくても、子どものようすを見ていると、わかることがあります。絵本が楽しければ、目はキラキラ。子どもの心はとても正直です。先ほど登場した「もういっかい!」という言葉も、わかりやすいヒントです。「もういっかい!」は、「おもしろかった!」と同じ意味ですから。
困ってしまうのは、子どもの反応から楽しんでいるかどうか読み取れない時ですが、そういう場合は、次に読む機会にあらためて「この絵本を読もうか?」と声をかけてみてください。子どもが「うん!」と答えたら、楽しかったということ。「ほかの絵本がいいな」と言ったら、内容がむずかしかったか、気に入らなかったかの、どちらかであることが多いでしょう。その日の気分もありますし、タイミングの問題かもしれませんから、すこし期間をあけて、あらためて声をかけてみるのもよいかもしれません。
それからもうひとつ、意識しておきたいことがあります。それは、感想をちょくちょく聞かれると、子どもは大人の反応を見て、大人が求める答えを口にするようになるということです。本当は登場人物の話し方が楽しかっただけだったのに、「〇〇がかわいそうだった」「みんながうれしそうでよかった」と、大人が喜びそうなことを推測して答えるようになります。
大好きなお母さんやお父さんが喜んでくれたら嬉しいし、ほめてもらうのも嬉しいから、子どもはそうするのですが、それは子どもにとって本当に幸せなことでしょうか?
絵本は本来もっと自由なもの。子どもが好きなように自由気ままに楽しめる絵本という場所を、大事に守ってあげてください。
そして、もし子どもが自分から感想を話しはじめたら、その時はたっぷり耳を傾け、時に自分の感想も伝えながら、会話のキャッチボールを楽しみましょう。子どもが自分から語りはじめたら、それは絵本から受け取ったものが、その子の中で形をなし、言葉になったということ。絵本の世界をもう一度、いっしょに味わいたくて、一生懸命話しかけているのです。
私たち大人ができるのは、いっしょに笑ったり、驚いたり、泣いたりすること。絵本の世界をともに冒険すること。
それこそが、互いの心にずっと残る宝物です。
子どもに問いかけたくなった時は、思い出してくださいね。
(とものま編集部)
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