2025年3月に休刊となった雑誌「母の友」に「こどもに聞かせる 一日一話」という人気企画がありました。子どもにさっと読んであげられる短いお話を一挙にまとめて掲載するものです。その「一日一話」を、2026年12月から「とものま」で再開しました。季節ごとに7話ずつ、とびっきりのお話をお届けします。
くどうれいん 文 ながしまひろみ 作
ようちゃんは、きめました。
「わたし、きょうからつぼみになる!」
ようちゃんはリビングのまんなかで、でーん、とあぐらをかきました。
それから、おふろばからもってきたきみどりのバスタオルを
からだのまわりにぐるぐるとまきつけました。
でも、それだけじゃ、たりない
ようちゃんは、がようしにみどりのくれよんで《つぼみです》とおおきくかいて
それをすぐそばにおきました。
ようちゃんは、いまからつぼみです。

「あら、ようちゃん、おへやがさむいの?」
とおりかかったおばあちゃんはしんぱいして、ストーブのひをつよくしようとしました。
(ちがうってば、つぼみ!)
と、ようちゃんはいいたくなりましたが、つぼみはおしゃべりをしないんだった! とおもって、あわててめもくちもぴたっととじました。
「おや、すわったまんまなんてめずらしいおひるねだこと」
(だーかーら、つぼみったらつぼみなの)
ようちゃんはバスタオルからあしをだして《つぼみです》のがようしをつつきましたが、おばあちゃんはきがつきません。
「あったかくするんだよ」
おばあちゃんはストーブをようちゃんのほうにむけて、じぶんのへやへいってしまいました。ようちゃんは、おばあちゃんをおいかけたかったけれど、がまん。ようちゃんはいま、つぼみです。つぼみには、あったかいのがだいじ。
「ようちゃん、なんのあそび? ええっ、つぼみ!」
おかあさんのこえです。おかあさんはつんつんとつぼみのようちゃんをつつきましたが、ようちゃんはつぼみなので、だんまり。
「おおきくてかわいいつぼみ。えいようをあげなくちゃね」
おかあさんがとおくへいってからこっそりめをあけると、チョコレートがふたつおかれていました。つぼみには、えいようも、だいじ。ようちゃんはぱくぱくとチョコレートをたべて、まためをとじました。
「どれどれ、ようちゃんがつぼみになったんだって?」
こんどはおとうさんのこえがしました。ようちゃんはめをとじながら(えっへん、つぼみだよ)とおもいました。
「つぼみなら、りっぱなはながさくように、たっぷりおみずをあげないと。よっこら、せ!」
ぐわん! とおしりがかるくなって、ようちゃんはびっくり。おとうさんはつぼみのようちゃんをだっこしました。ゆーらゆら、とはこばれて、あわててめをあけると、おふろばにむかっているみたい。おみずをかけられたら、つめたくって、たいへん!
「だめだめ、つぼみはおしまい!」

おとうさんがだっこをやめると、ようちゃんはぎゅっとしゃがみました。
「そろそろ、さくよー!」
ようちゃんがおおきなこえでいうと、おばあちゃんとおかあさんがきました。
ぐん! とうでをのばし。ぐんぐん! と、あしをのばし。ようちゃんは、ついにさきました。さいたさいた、とみんなおおよろこび。どうだ、とようちゃんはおもいました。
つぼみだったようちゃんは、おはなになりました。
おはなのようちゃんは、ぽかぽかのはるのおふろにはいりました。
(おしまい)

◆子どもと一緒に挿絵を見ながらお楽しみになる方は、こちらからPDFのファイルをダウンロードの上、出力してお楽しみください。 ※個人利用に限ります。
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