季節の本を楽しみたい! そう思っていても、あわただしく過ごしていると、あっという間に、もう次の季節……。それなら少し余裕をもって、準備を始めてみませんか?
この連載では、子どもたちに本を手渡しつづけている東京子ども図書館の皆さんに「来月のおすすめの本」をご紹介いただきます。5月のおすすめを教えてくださるのは、鈴木晴子さん。さあ、5月はこれ読もう!
ゴールデンウィークに、こどもの日、母の日……5月はたのしみな行事が盛りだくさん。その一方、新生活のつかれを、子どもも大人も感じやすい季節ですね。新緑の下でごろんとしたり、本を読んだり読まなかったり。なにはともあれ、のんびりいきましょう。
ロバート・マックロスキー 文・絵 わたなべ しげお 訳 / 福音館書店 / 幼児から
初夏は、生き物たちの子育ての季節。小川や公園の池などで、かもの親子を見かける機会があるかもしれません。
この絵本の舞台はアメリカ・ボストン。かものマラードさん夫婦が、川の中州で巣作りをすると、やがて8羽の子がもがかえりました。名前は、ジャックと、カックと、ラックと、マックと、ナックと、ウァックと、パックと、クァック(くり返し出てくるので、耳で自然と覚えてしまう子も)。子がもたちがおよいだり、もぐったり、1列にならんで歩いたりできるようになると、一家は公園にお引越しすることに。ひと足先に行っただんなさんを追いかけて、奥さんは子がもをひきつれ出発。街なかを堂々と行進するかも一家のため、大通りや交差点にはおまわりさんも出て交通整理に大わらわ!
セピア1色で描かれた絵は、子がものやわらかそうな羽毛や、鳥の目で眺めたボストンの街並み、かもや人々の表情を、実に生き生きと見せてくれます。最後のページにちゃんと、地図がついていて、一家が歩いた道筋も確認できるのもうれしいポイントです。
稲田和子 再話 赤羽末吉 画 / 福音館書店 / 幼児から
昔、うんと欲ばりの男がいた。あるとき山で、「よっくはたらいて めしをくわない にょうぼうがほしいもんだ」と言うと、その帰り道、「ぴた ぴた ぴた」とあとからついてくる者がある。みるとそれは美しい娘で、「めしはちょっともくわないで、うんとはたらくから、あんたのにょうぼうにしてくんろ」と言った。
男がよろこんで、娘をよめにすると、たしかに飯もくわずに、くるくるとよくはたらいた。ところがある日、蔵をみると、米俵がごっそり減っていた。いぶかしんだ男が、仕事へでかけるふりをして、天井に隠れて様子をのぞいてみると、女房は頭のてっぺんにある口から飯を食べていて……。
本性をあらわした女房のおそろしいこと。妖気がただよってくるような絵と、韻律のあるしっとりとしたことばづかいが、緊迫感を高めます。5月5日はこどもの日。古くから「端午の節句」とよばれ、厄よけとして菖蒲(しょうぶ)湯に入ったり、蓬(よもぎ)を軒につるしたりする風習が残っています。その起源にまつわる昔話です。
ベッキー・ライアー 文 光吉郁子 訳 ルース・ガネット 絵 / 大日本図書 / 幼児から

6歳の女の子ワーリャは、いつも畑ではお母さんにくっついて麦刈りのお手伝い。ところが、この夏最後のとり入れの日、小麦畑でねむってしまったワーリャが目を覚ますと、お母さんの姿がみえません。あちこち走り回ったあげく、知らない人々にかこまれたワーリャ。「おかあさんのなまえは?」と聞かれますが、泣きじゃくりながらなんとか言えたのは、「わたしのおかあさんは世界一びじん!」でした。そこで、村中の美人のお母さんが集められますが……。
ウクライナに伝わる昔話がもとになっていて、米国人の作者は、子どものころロシア人のお母さんからきいたのだとか。『エルマーのぼうけん』の画家による絵がたっぷり入り、自分で本を読みはじめた子にもぴったりの本づくりです。今の世界状況に思いをよせつつ、最後の「世のなかには、目でしかみない人もいるし、こころでみる人もいるのよ」というワーリャのお母さんの言葉が、深く響きます。
≪幼児から≫
④『木はいいなあ』
ユードリイ 作 シーモント 絵 さいおんじ さちこ 訳 / 偕成社
「木がたくさんあるのはいいなあ」。林の中には、寝ころぶ少年の姿が。木は川べりにも、牧場にも、家のそばにもはえる。木にのぼれば遠くが見えるし、木の棒で砂に絵も描ける。木のある風景や木があたえてくれる恵みを、詩のようなシンプルな言葉と、さわやかな水彩画でつづります。

⑤『た』
田島征三 作 / 佼成出版社
「たがやす たねまく たちまち!! めがでた」
本の表紙にはどんと大きく配された「た」の字。田んぼの稲がそだつ様子や、その恵みに感謝する人々の営みを、躍動感たっぷりにうたいあげた絵本です。「た」からはじまる言葉が、文字そのものもデザイン的に配置され、耳にも目にもインパクトがあります。

⑥『とこちゃんはどこ』
松岡享子 作 加古里子 絵 / 福音館書店
とこちゃんは、赤い帽子に青いズボンをはいた男の子。元気なのはいいけれど、ちょっと目を離すと、とことこどこかへかけだして……。動物園や海水浴場、お祭など、見開きに描かれた人混みの中から、とこちゃんを探す絵本。こまごました絵には、よくみるとあちこちにストーリーがちりばめられていて、くり返し楽しめます。親目線でよむと、必死に探すとこちゃんのお父さんお母さんに、ただただ共感するばかりです。
⑦『しゃぼんだまと あそぼう』
杉山弘之 杉山輝行 文・構成 吉村則人 写真 平野恵理子 絵 / 福音館書店
石鹸(せっけん)をお湯に溶かしてしゃぼん玉をとばそう。もっともっと大きく。ストローで、ラッパで、れんこんで、サンダルでもできる! 子どもたちがしゃぼん玉で遊ぶ姿をとらえた写真絵本。じょうぶなしゃぼん液の作り方や、うまくできないときのQ&Aも。読んだあとには、うち中のいろんな道具をもちだして、公園にでかけたくなります。
⑧『ちいさな ヒッポ』
マーシャ・ブラウン 作 うちだ りさこ 訳 / 偕成社
川でくらすかばの子ヒッポは、いつだってお母さんといっしょ。大きなお母さんがいれば、ちょっかいをだすやつなんていません。ところがある日、群れのみんなが寝ている間に、ひとり水面まであがってみると、後ろから金緑の目がしのびより……。ヒッポの声をききつけて、「グァオ!」と助けにかけつけるお母さんかばの迫力たるや!

⑨『どこに いるか わかる?』 ※品切れ
ユネスコ・アジア文化センター 編 松岡享子 訳 / こぐま社
断食明けのイードのお祭りにやってきたパキスタンのタリク君。スリランカのサマン君は、ペラヘラ祭りで60頭ものゾウの行列を見物。マレーシアのザティちゃんは、おじさんの結婚式に……。アジア太平洋地域の20か国の、市場やお祭りの様子を描いた見開きページから、特定の子を探す趣向の絵本。ユネスコ加盟国が共同制作したもので、それぞれの場面を各国の作家、画家が手がけています。人々の装束や、何を売っているのか気になる出店の数々をながめていると、いろんな国、文化への興味が自然とわいてきます。品切れ作品なので、ぜひ、図書館で探してみてください。

≪小学生から≫
⑩『お茶ができるまで』
宮崎祥子 構成・文 白松清之 写真 / 岩崎書店
立春から数えて88日目の八十八夜(2026年は5月2日)は、春から夏へと季節がかわる節目の日。このころ、お茶畑ではやわらかな新芽をつみとります。埼玉県狭山市にあるお茶園を取材し、昔ながらの「手もみ製茶法」の工程を美しい写真で丁寧に紹介する1冊。8時間もかけて丹念にもまれ、ピンと針のようになった茶葉が、お湯をそそぐと1枚の葉に戻る、その職人技に感嘆します。

⑪『森おばけ』
中川李枝子 作 山脇百合子 絵 / 福音館書店
こもり山にすむおばけの5人家族は、おばあちゃんの病気のため、山をはなれることに。引っ越し先は、なんと町の小学校1年1組の教室。おばけのお母さんは給食のにおいをあつめたり、おばあちゃんは掃除をこっそりお手伝いしたり。ぼうやは男の子のズボンのポケットにもぐりこんで、林探検について行ったり。4月から5月にかけて、まだ学校に慣れていない子どもたちと、おばけ一家たちの交流の物語。

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