2025年3月に休刊となった雑誌「母の友」に、「こどもに聞かせる 一日一話」という人気企画がありました。子どもにさっと読んであげられる短いお話を、一挙にまとめて掲載するものです。
その「一日一話」を「とものま」で再開します。季節ごとに7話ずつ、とびっきりのお話をお届けします。
樋勝朋巳 作
ぼっちゃんとお母さんが桜のクッキーを焼いていたら「こんにちは」と、小さな宇宙人のこどもが窓を開けました。
「あら、どうしたの? さあどうぞ、中に入って」
お母さんが優しく言いました。

「桜を見に来たのですが、みつからなくて。どこに行けば桜がありますか」
宇宙人のこどもは、少し不安そうに聞きました。
「あら……桜を見にねえ……。うーん、ちょっとまだ早いかな……。もう少し暖かくならないと、桜は咲かないのよねえ」と、お母さんが残念そうに言いました。
「やっぱりそうか……。ぼくのお母さんもそう言ってた。でも待ちきれなくて、見にきちゃった」宇宙人のこどもはがっかり。
「あら、あら。そうだったのね。早く桜見たいよね」とお母さん。
「じゃあ一緒に桜のクッキーを作ろうよ」と、ぼっちゃんが言いました。
「なんだか、とってもいい匂いがする」そう言いながら、宇宙人のこどもは目をつぶって、鼻をクンクンとさせました。
「今ちょうど桜の形のクッキーを焼いているの。焼き上がったら、一回冷まして、イチゴのチョコレートを塗って、桜の花びらみたいにするの」とぼっちゃんが言うと、宇宙人のこどもは嬉しそうに、目をキラキラさせました。
そうして、みんなで桜のクッキーを作ることになりました。
焼き上がった桜の形のクッキーに、イチゴ味のピンクのチョコレートを塗っていきます。ピンク色の花びらが、テーブルいっぱいに広がっているよう。

みんなで作った桜クッキーの完成です。
「うわあ! 桜の花だ!」宇宙人のこどもは大喜び。
「お花見みたいだね!」とぼっちゃん。
温かいミルクティーを淹(い)れて、みんなで桜のクッキーを食べました。
「うわあ、サクサクして、甘くておいしい」宇宙人のこどもは、びっくりしました。
「いつもはどんなおやつを食べているの?」とぼっちゃんが聞くと、宇宙人のこどもはリュックから、おやつの入った袋を取り出しました。
「これが一番好きなおやつ」そう言うと、丸くて、カラフルで、やわらかそうなものを見せてくれました。
「クニャクニャっていうお菓子なんだよ。宇宙人のこどもはみんなこれが大好き」
そう言って、「クニャクニャ」を食べさせてくれました。
クニャクニャは、小さなお餅みたいな感じで、甘くはない。
「カレーみたいな味がする」とぼっちゃん。
「そうね、スパイスが効いていて、いいお味」とお母さん。
宇宙人のこどもは嬉しそう。みんなで楽しい時間を過ごしました。
「そろそろ帰らなくちゃ」宇宙人のこどもは寂しそうに言いました。
「じゃあ、クッキーをお土産に持っていってね」
そう言ってお母さんが桜のクッキーを包みます。
「ありがとうございます。桜が咲いたらまた来ます。ごちそうさまでした」
宇宙人のこどもは、ぼっちゃんとお母さんと握手をして、帰って行きました。
宇宙人のこどもが帰ったら、ぼっちゃんは急に寂しい気持ちになりました.
「こんどは宇宙人のお母さんも一緒に来るかなあ」とぼっちゃんが言うと、
「宇宙人のお母さんも、お友達も、おばあちゃんも、おじいちゃんも、猫ちゃんも、みんなで桜を見にくるんじゃないかな」と、お母さんが言いました。
(おしまい)
◆子どもと一緒に挿絵を見ながらお楽しみになる方は、こちらからPDFのファイルをダウンロードの上、出力してお楽しみください。 ※個人利用に限ります。

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