月刊絵本「こどものとも」が、2026年、創刊70周年を迎えました。
小さい頃に読んでもらったり、入社して出会ったり、子どもに読み聞かせたり……これまでに刊行された「こどものとも」から、福音館社員が思い入れのある1冊をご紹介します。
第13回は入社23年目、宣伝課・Oの1冊。
宣伝課・O

私には、どうしても思い出せない絵本のタイトルがありました。福音館の入社試験を受けたときのエントリーシートや面接で「好きな絵本はなんですか?」の問いに、大好きな絵本をいくつかあげていましたが、もうひとつあったんだよな……というもやもやが。
入社して数年が経ったときのこと。数ある月刊絵本の中からハードカバー化される作品の中に、その絵本はありました。月刊絵本「こどものとも」1981年12月号として刊行された『ゆうちゃんと めんどくさいサイ』です。
表紙を見たとたん「これだ!」と再会に感激し、幼いころにこの作品と過ごしたたくさんの思い出がよみがえってきたのです。


この絵本との出会いは、保育園の図書室でした。当時はもちろん自分で読むことができなかったので、たぶん、先生に「読んで」とせがんだんだと思います。
お話に出てくる、“めんどくさがり屋” の「ゆうちゃん」に親近感がわき、自分と同じだ! とうれしくなったことを覚えています。
それからというもの、ひとりでこっそり絵本を開いては、自分の歯を確認し「まだきばは出てないな」、頭のてっぺんを確認し「まだつのは出てないな」、おしりを確認し「まだしっぽは出てないな」と、日々、めんどくさくてイヤだなと思ったことがあるたびに、ドキドキしながら絵本の中のゆうちゃんに自分を重ね合わせていました。

自分とは違うオオカミもオニもトロルもなんだか怖い。頭からきのこが生えている大きなめんどくさいサイとの生活も、お母さんとずっと離れて暮らすのはさみしくないかなと心配になるのに、ちょっとあこがれてしまう怠惰な生活。『ゆうちゃんと めんどくさいサイ』は現実の世界と夢の世界を行ったり来たりできる、私にとって心地のよいお話でした。
幼いころに出会った絵本は、私の日常の中でふとした瞬間に思い出され、そのときの空気、読んでくれていた人の声、触れていた肌の温かさすべてがよみがえり、私を幸せな感覚で包み込んでくれます。
その中でもこの作品は、誰にも邪魔されずにひそかに楽しんだお話。おとなになった今でも、私の “めんどくさがり屋” は健在で、度々思い出しては、「ゆうちゃんみたいだな」とくすっと笑えてくるのです。

『ゆうちゃんと めんどくさいサイ』
西内ミナミ 作 なかのひろたか 絵
何でも「めんどくさい!」と言うゆうちゃんが、何にもしない “めんどくさいサイ” の子になります。ところが、あんまり手が汚れたので洗おうとすると、めんどくさいサイが「手を洗うな」と言うのです……。
堂々と「めんどくさい! 」を連発するゆうちゃんは、子どもたちの憧れの的! 身近なテーマから生まれた愉快なお話です。
*「こどものとも」1981年12月号
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