月刊絵本「こどものとも」が、2026年、創刊70周年を迎えました。
小さい頃に読んでもらったり、入社して出会ったり、子どもに読み聞かせたり……これまでに刊行された「こどものとも」から、福音館社員が思い入れのある1冊をご紹介します。
第12回は入社28年目、総務課・Tの1冊。
総務課・T

ぼくは子どものころ腎臓が弱くて、3~4歳にかけて半年間ほど、入院していた時期がありました。
板橋区のT病院に救急搬送されたとき、ストレッチャーに乗せられたぼくを父と母が上から見下ろしていたのを今でも覚えています。
しばらく絶対安静の日々が続きましたが、少しだけ動いてよい日は「月」の、散歩程度まで可能な日は「太陽」のイラストがベッド脇に吊り下げられました。
よりによって、映画「猿の惑星」がテレビ放映されるその日に限って、最悪の「星」(「絶対安静」を意味する)が吊るされてしまって、ほかの子たちに交ざって鑑賞できませんでした。その悔しさが、その後のぼくを映画好きにしたのかもしれません。


退院後、近所の文化堂書店さんが、月に1冊ずつハードカバー版の「こどものとも傑作集」(*)を自宅まで配達してくれることになりました。まだ激しい運動は厳禁だったぼくのために、母が契約してくれたのでした。
『ぐりとぐら』や『はじめてのおつかい』に交ざって届いたのが『よるのびょういん』でした。「これは入院中のぼくだ、この場面、見覚えあるな、まさにこんな感じだったな」と特別心に刺さりました。

福音館書店に入社後、配属された営業部門の職場にSさんという先輩がいて、その人が『よるのびょういん』の編集者だと知りました。
「子どもは夜が好きだよね」
「子どもが寝ている間も、人々を守るため夜通し働き続ける仕事に、どんなものがあるかな」
作者の谷川俊太郎さんと、そんな話からはじまったのだと聞かせてもらいました(杉並区のK病院を取材したことなども聞かせてもらいました)。Sさんとは5年間、一緒の部署で仕事をさせてもらえて本当に感謝しています。Sさんとは、いまでも会社の近くでたまにお酒を飲む仲です。
ぼくの親がそうだったように、ぼくも妻の出産や長男の虫垂炎の手術S際には上から見下ろす側で、必死に祈りました。自分はどうなってもいいから何としてもこの命が救われてほしいと。そんなときには決まって『よるのびょういん』が思い出され、その結末に勇気づけられました。
これからも『よるのびょういん』が読み継がれていくことを、そして子どもたちが、ぼくと同じように勇気を分け与えられることを願っています。
*現在の名称は「こどものとも絵本」

『よるのびょういん』
谷川俊太郎 作 長野重一 写真
夜になり、おなかが痛くなって高い熱の出たゆたかは、救急車で病院に運ばれました。当直の先生が素早く診察し、X線検査と血液検査がおこなわれて、虫垂炎と診断され、手術することになりました。お父さんも夜勤から駆けつけてきます。やがて手術も無事に終わりました。夜の病院で働く人々の活躍をドキュメンタリータッチで描いた写真絵本です。
*「こどものとも」1979年9月号
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