
中川李枝子さんとの姉妹のコンビで『ぐりとぐら』や『いやいやえん』をはじめ宝物のような作品を数多く残した山脇百合子さん。山脇さんの仕事部屋を再現した企画展示「山脇百合子の仕事部屋 展~ごちゃごちゃから見えるもの~」が、2025年11月19日から三鷹の森ジブリ美術館で開催されています。その魅力を、編集部・Iがレポートします。
JR吉祥寺駅南口から井の頭公園に向かい、公園の中をしばらく歩いていくと、「三鷹の森ジブリ美術館」にたどり着きました。JR三鷹駅からの玉川上水沿いの道も気持ちがよいので、天気のよい日にはおすすめです。三鷹駅からはコミュニティバスも出ていて、スタジオジブリがデザインしたバスも走っているとか。
スタジオジブリの映画はたくさんありますが、編集部・Iは小学生の頃に出会った「風の谷のナウシカ」が大好きです。当時は、「ナウシカのいる世界に生まれたかった」と真剣に思っていました。

美術館の入り口に着くと、次の時間帯の入場開始を待つ人々が列をつくっています。近年は海外の観光客の来館も多いそうで、この日も海外の方がたくさん訪れていました。スタジオジブリのアニメーションの世界的な人気ぶりが感じられます。
こちらの美術館の入場チケットは、日時指定の予約制です。予約なしだと、残念ながら入館できないため、ご注意ください。
さて、列が進みはじめて、いよいよ入館!
三鷹の森ジブリ美術館では、2025年11月から「山脇百合子の仕事部屋展」を開催中(2027年5月まで・予定)。『ぐりとぐら』をはじめ数々の絵本を手掛けた山脇百合子さんのお仕事部屋──気になります。
でも、どうしてスタジオジブリの美術館で、絵本作家である山脇百合子さんの展示が行われているのでしょう…?
最初に足を運んだのは、館内地下1階の映像展示室「土星座」。スタジオジブリが制作した短編映像作品を楽しめる映画館です。この日の上映作品は「たからさがし」でした。

土星座の入り口のドアが開き、席に座ると、スタッフの方のお話が始まりました。その手には、『ぐりとぐら』と『たからさがし』の絵本。上映作品の原作となった絵本『たからさがし』は、『ぐりとぐら』と同じく、中川李枝子さんと山脇百合子さんの姉妹による絵本であることが語られます。
童話『いやいやえん』の一話をもとにした「くじらとり」も時期を変えて上映されているので、事前に美術館の公式サイト(https://www.ghibli-museum.jp/)で上映スケジュールをご確認ください。

こちらが、原作の絵本『たからさがし』。スタッフの方のお話によると、この絵本も『ぐりとぐら』や『そらいろのたね』とともに、スタジオジブリの宮﨑駿監督が大好きな作品なのだそうです。

『たからさがし』のあらすじを少しご紹介します。
人間とうさぎの男の子が、河原で同時に見つけたすてきな棒。その棒の持ち主を決めようと、かけっこをしたり、すもうをとったり、幅跳びをしたりするのですが、引き分けばかりで勝負がつかなくて……。
絵本のおおらかな世界観を大切にして制作された映像作品は、子どもから大人まで、すべての人を笑顔にしてくれるものでした。
──それにしても、中川さんと山脇さんのご姉妹と、スタジオジブリのつながりは、どのように生まれたのでしょう?
じつは、最初のきっかけは、宮﨑監督の大学時代に遡ります。宮﨑監督は当時、大学の児童文学研究会に所属していて、その活動を通して『いやいやえん』に出会い、いつかアニメーションにしてみたいと思ったそうです。
後に、映画「となりのトトロ」の歌の作詞を中川李枝子さんに依頼し、それがきっかけとなって「くじらとり」「たからさがし」という短編映像作品の制作へつながっていきました。

「たからさがし」の余韻に浸りながら、1階の企画展の会場へ。入り口には、ポスターが飾られています。まるで、山脇百合子さんが優しく微笑んで迎えてくださっているよう。

最初に目に飛び込んできたのは、見事に再現された山脇さんのお仕事場でした。
「お茶を入れますから、お座りになってお待ちくださいね」
そんな声が、今にも聞こえてきそうです。
この場所に再現するために、仕事場のようすを余さず記録して、ひとつも失くさないように大切に運んで、山脇さんの存在がちゃんと感じられるように丁寧に配置していく。それはどれだけ大変な作業だろう……と想像します。
こうして山脇さんの息づかいを今も感じられることは、ひとつの奇跡なのかも。この椅子で、この机で、あの絵本の絵も描かれていたのかな? と思うと、山脇さんがより身近に感じられてきます。
仕事場のところどころに、読者の方から贈られたものでしょうか、手作りの「ぐり」と「ぐら」のぬいぐるみの姿も。

こちらは山脇さんの愛読書が詰まった本棚。児童文学作品や詩集、昔話集、ご自身が翻訳を手掛けた作品も。絵はがきやカレンダー、バターの缶(?)なども。愛着を抱いたたくさんのものに、山脇さんはいつもかこまれていたのですね。
読んだことのある本を見つけると、なんだか幸せな気持ちに。時間も空間も超えられる「本」って、やっぱりすごいなと思うのでした。

次の展示室には、山脇さんが手作りされたものや、集めていたもの、直筆の手紙やスケッチなどが、ぎゅぎゅっと集められています。
手作りのものだけでも、編み物、刺繍、パッチワーク、あてこすり染め(ステンシル)、はんこ作り、版画、切り絵……。となりで見ていたカップルの若い男性が、「なんでもするんだなあ!」とびっくりしていました。

コレクションの中には、あのシュウマイ屋さんの醤油差しも。山脇さん、わが家の小学生の息子も嬉しそうに集めています(笑)
心惹かれるものを集めて、興味がわいたら何でもやってみる。──子どもの心をずっと持ちつづけていらっしゃったから、山脇さんの描かれる絵はあんなに子どもたちの心をとらえるのですね。

ご家族のために作ったカレンダー、ご友人とやりとりされていたお手紙、絵本制作のためのラフスケッチ、どれもユーモアとサービス精神に満ちたものばかり。見る人に喜んでほしいという、あたたかい気持ちがこもっています。
山脇百合子さんの世界にたっぷりひたって、しあわせな気持ちで会場を後にしました。

企画展を楽しんだあと、ぜひ立ち寄っていただきたいのが、2階にある図書閲覧室「トライホークス」。こちらには、ジブリ美術館がおすすめする本が並んでいます。
山脇さんの作品もたくさんあり、「なつかしい!」と言って手に取っている方が多くいらっしゃいました。2階のギャラリーでも山脇さんの絵本や読み物を手に取って見られるのですが、トライホークスでは気に入った本を買って帰ることもできるんです。この場所で、一生ものの本との出会いが待っているかもしれません。
また、ミュージアムショップ「マンマユート」では、山脇百合子さんの絵を用いたグッズも販売中。4つ入りのかわいいスタンプとマスキングテープを連れて帰ることにしました。

ひと休みしたくなって、館内のカフェ「麦わらぼうし」へ。“麦わらぼうしのホットドック” と “マンマボスが大好きなスープ” 、 “山盛りポテトフライ” をセレクトしました。
スープは、ブロッコリー、にんじん、さつまいも、きのこ、お肉などがごろごろ。映画「紅の豚」に登場するマンマボスは、栄養たっぷりの優しい味が好きなんですね。
美術館には、見たいものがまだまだいっぱい。
美味しいもので元気をだして、次は常設展示室へ!
■施設情報
三鷹の森ジブリ美術館 ※日時指定の予約制
東京都三鷹市下連雀1-1-83(JR三鷹駅からバスで約10分)
https://www.ghibli-museum.jp/
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