「たくさんのふしぎ」は、自然や環境、人間の生活・歴史・文化から、数学・哲学まで、世界のあらゆる “ふしぎ” をお届けしている、小学生に向けた月刊誌です。
2026年11月号で通巻500号(!)を迎えることを記念し、「たくさんのふしぎ」の著者の方々に心をつかまれた1冊を紹介していただきます。

この本と出会ったのは、土絵の具のワークショップを企画していたときだった。
大学で日本画を学び、自然の鉱物や土、植物から色をもらうおもしろさを知っていたわたしは、子どもたちにも「土から絵の具が作れる」体験をしてほしかった。けれど、精製されていない生の土から絵の具を作るのは、わたし自身も初めてのこと。進め方に頭を悩ませていたとき、ワークショップを主催する図書館の司書さんが手渡してくれたのが、この本だった。
本には、わたしが子どもたちに伝えたかったことがすべて詰まっていた。それ以上に、著者の田中陵二さんの科学者としての知識にあふれていて、わたし自身が未知の色の世界にわくわくさせられた。
付録の「幻の色たち」というポスターも、とても面白い。たとえば「アイボリーブラック」という漆黒の絵の具。かつて象牙を焼いた炭を原材料としたという。「アイボリー」といえば、やや黄色味のある優しい白色なのに、なぜこんなに真っ黒なのか?という長年の謎が解けた。愛用する絵の具の歴史に思いを馳せ、ますます愛着が深まった。

この本のおかげで、土絵の具づくりのワークショップは大成功だった。色の素がどうやって採れるのかを話すと、子どもたちは目を輝かせた。試行錯誤しながら、このワークショップは今も続けている。

なかでも忘れられないのは、安曇野の福祉施設でこのワークショップを行ったときのこと。自閉症や知的障害をもつ方、地域の大人から子ども、そして海外からのボランティアスタッフなど、多種多様なメンバーが集まった。
それぞれが日本各地から持ち寄った土を材料に、粒子の粗さも色合いも豊かな二十色ほどの絵の具を作った。わたしが下絵を描き、ばらばらに切り分けた和紙のピースに、それぞれ思い思いの色を塗ってもらう。それを畳のように大きなパネルに貼り込んでいくと、安曇野の雄大な山々と雷鳥が姿を現した。それは普通の絵の具では出せない、土だからこその原始的な力強さと独特な美しさが調和していて、個性豊かなわたしたちを映しているかのようだった。

わたしは色が好きだ。この世界から色がなくなったら、どんなに寂しいことだろう。「たくさんのふしぎ」には、『かっこいいピンクをさがしに』(たくさんのふしぎ傑作集)や『土の色って、どんな色?』(2011年5月号 ※品切)など、ほかにも色にまつわる名作がある。


色をはじめとしたこの世界のたのしさを、これからもたくさんのふしぎと一緒に味わっていきたい。

『いろいろ色のはじまり』田中 陵二 文・写真
摩訶不思議な色のお話。化学者で鉱物を愛する著者が、石や貝、草花から色をつくりながら、大昔の色、そして今の色を案内します。私たちが便利につかっている、色鉛筆や絵の具、マーカー、染料を手にするまで──それは、知られざる化学の歩み、歴史でもありました。*付録として、特製<幻の色たちポスター>がついています。ミイラの茶色、毒の緑に宝石の青など、全70色。

たくさんのふしぎ2026年2月号
『こころのえほん』齋藤 槙 文・絵
こころってふしぎ。目に見えないのに、確かにある。うれしくなったり、かなしくなったり……目まぐるしく移り変わります。そんなこころの内側を彩り豊かな絵で表現。自分のこころと仲よくつきあっていく方法を、いっしょに考えてみませんか? 「わたし」と「あなた」の感情に向き合いはじめる時期の子どもたちへ。
今月の「とものま」
来月は これ読もう!
あの人の ほっとするとき ほっとするもの
こどもに聞かせる 一日一話
絵本の選びかた
えほんQ&A
わたしの限界本棚
こどものこころの保健室
こどものこころの保健室
こどものこころの保健室
こどものこころの保健室
こどものこころの保健室
あの人の ほっとするとき ほっとするもの
手から手へ 松居直の社内講義録