「えほんQ&A」は、読者のみなさまから寄せられた疑問や悩みにお答えする連載です。絵本や読み聞かせを楽しむときの参考に、どうぞご覧ください。
物語絵本ばかりではなく科学絵本も子どもに読んであげたいのですが、どう読んであげたらよいのかわかりません。物語絵本に似ているものから図鑑的なものまで、いろんな科学絵本があって、どれを選ぶとよいかも迷います……。
「科学絵本」という名称から、知育や学習のイメージが先行して、むずかしそう……という印象をもつ方は多いかもしれませんね。
でも、そんなことはありません。科学絵本は、「知る喜び」を味わわせてくれるもの。
子どもが楽しみながら、いろんなものに出会い、知識を深めていくことができる、とてもすてきな存在です。
科学絵本のテーマは、虫・鳥・動物・植物・自然・宇宙・体・乗り物・食べもの・工作をはじめ、多岐にわたります。対象年齢の子どもたちが興味を抱きそうなテーマを選び、理解が及ぶ範囲を意識して、好奇心を刺激しながら、わかりやすい言葉で伝える──そんな科学絵本に出会わせてあげると、子どものなかに「見てみたい」「やってみたい」「もっと知りたい」という気持ちが生まれます。
子どもに科学絵本を読んであげるとき、特別な心構えや知識は必要ありません。その世界を子どもと一緒に楽しもうとする気持ちがあれば十分です。
ここから先は、子どもたちの心をとらえる科学絵本について、もう少し詳しくご紹介していきますね。
科学絵本のなかには、図鑑のように知識や情報を一方的に伝えるものとは異なり、物語絵本と同じように子どもに読んであげられるものがあります。

たとえば、『かぶとむしが にげた!』* という絵本は、子どもたちがよく飼うカブトムシの脱走劇を、物語として描いています。子どもは、物語を楽しみながら、カブトムシの力がとても強いことや、夜間に活発に活動することを知ることができます。

こちらの『シロナガスクジラ』* は、地球最大の動物シロナガスクジラの生態を伝える科学絵本です。子クジラが生まれ、ひとり立ちするまでのようすが、やはり物語のように描かれます。この絵本を読んでもらう子どもは、年齢の近い子クジラに自分を重ねます。シャチの襲来におののき、母クジラとの別れに戸惑いながら、その生き様を知っていきます。
このような物語性のある科学絵本は、物語絵本と同じように読んでいただくと、子どもは物語を楽しみながら、心ひかれる何かに出会い、愛着や知識を深めることができます。
物語性のある科学絵本のほかにも、子どもが楽しみながら世界を知っていけるように、さまざまな工夫が凝らされている科学絵本があります。
たとえば、『たんぽぽ』* という絵本では、地面の下へと長く伸びる根っこの長さを体感できるように、見開きページをあえて縦に4ページ使って、ダイナミックに描いています。


また、一見するとひとつの花に見えるタンポポが、実は小さな花の集合体であることを、小さな花をひとつずつ並べて見せることで、視覚的にわかりやすく、驚きをもって伝える工夫もなされています。

絵本の冒頭部分は、子どもの心をつかむ大事な入り口なので、作り手の工夫が見えやすいところです。
たとえば、『バナナのはなし』* は、バナナを冷やすと茶色に変色することを最初に描き、その驚きをきっかけにして、子どもたちを絵本の世界に引き込みます。

こちらの『はなのあなのはなし』* は、こんな言葉で始まります。「このほんは、はなのあなを しっかりと ふくらまして よんでください」。こんなことを言われたら、興味がわかないわけがありませんよね。

さまざまな工夫によって子どもの心をつかむ科学絵本も、絵本の文章をそのまま読んであげると、子どもは興味をもって耳を傾けます。子どもが感想や質問を口にしたら、会話をはさみながら読み進めていくのも楽しいですよ。
子どもがすでに興味をもっているテーマなら、図鑑のような作りの科学絵本も楽しめるかもしれません。まだ興味を抱いていない方面に広げてみようというときには、ここまでお伝えしてきた「物語性」や「好奇心をくすぐる工夫」を意識して、書店や図書館などで探してみてくださいね。
たくさんある本の中から選ぶのは大変だな……とお感じになる方は、月刊絵本「ちいさなかがくのとも」と「かがくのとも」や、この2誌から生まれたハードカバーのシリーズ「幼児絵本ふしぎなたね」や「かがくのとも絵本」を手に取ってみてください。これらの絵本は、知識を押し付けるのではなく、子どもの目線や成長段階を考えて、物語性や子どもの心をつかむ工夫も意識しながら、作られています。
科学絵本をきっかけに子どもが何かに興味をもったら、できるだけ実際に体験させてあげてください。
たとえば、飼っているカブトムシが脱走する絵本を楽しんだあと、カブトムシを探しに公園に出かけたり、実際に家で飼ってみる。バナナの絵本を楽しんだあと、冷蔵庫にバナナを入れて、本当に茶色くなるか試してみる。そうして、「やっぱりケースのふたを開けようとしてる!」「わあ、本当に茶色くなった!」と、自分の目と心で感じる体験をすると、絵本から得た知識が「本物の知識」に変わります。
科学絵本は読んで終わりではなく、それをきっかけに現実の世界に子どもたちが生き生きと飛び出していくもの──。子どもたちにとって、世界への入り口であり、豊かな体験に誘う「架け橋」です。
肩の力を抜いて、物語を楽しむようにページをめくり、身の回りの世界の扉を一緒にひらいてみてください。
(とものま編集部)
*『かぶとむしが にげた!』 たしろちさと 作 (幼児絵本ふしぎなたね)
*『シロナガスクジラ』 加藤秀弘 文 大片忠明 絵 (かがくのとも絵本)
*『たんぽぽ』 平山和子 文・絵 北村四郎 監修 (かがくのとも絵本)
*『バナナのはなし』 伊沢尚子 文 及川賢治 絵 (かがくのとも絵本)
*『はなのあなのはなし』 やぎゅう げんいちろう 作 (かがくのとも絵本) ※すべて福音館書店刊
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