月刊絵本「こどものとも」が、2026年、創刊70周年を迎えました。
小さい頃に読んでもらったり、入社して出会ったり、子どもに読み聞かせたり……これまでに刊行された「こどものとも」から、福音館社員が思い入れのある1冊をご紹介します。
第11回は入社13年目、電算課・Kの1冊。夏に読みたい、奇妙でおもしろい、あの絵本の登場です!
電算課・K

この作品と出会ったのは、高校2年の時でした。
図書館に飾られていた独特なタイトルと、どこか怪しげな表紙。
なぜか気になり、友人を待つわずかな時間に、何の気なく手に取った本でした。
小学生以来の絵本、わずか数分の読書は、その後の私を大きく変える時間になりました。
長く重く心にのしかかっていた閉塞感は、読み終えた直後に一蹴され、消え去ったのです。
絵本に出てくる3人のおばけたちは、泣いたり、笑ったり、けんかしたりと感情豊かで、我先にとかんたを遊びに誘い、かんたは快く応じます。



そこには、周りの目を気にする自意識や、冷めた態度などあるはずもなく、「心から楽しく遊びたい」という3人のおばけの純粋な欲求と、その中へ飛び込んでいく主人公の姿が描かれていました。そして絵本のラストは、「不安を感じたら戻ってもいい」という安心感に包まれます。

「あ、思ったことをやってみればいいだけなのか」
とてもシンプルなことなのですが、この時初めて腑に落ちたような、前に進むための確信を得たような、そんな感覚がありました。
同時に、肩の力が抜け、これまで長く頭を悩ませていたもやもやしたもの(決断を迫られる進路や、家族・友人関係、感情と行動のずれによるしっくりこない居心地の悪さ…etc.)がきれいさっぱりと消え去り、自分で「吹っ切れた」とわかる、確かな爽快感があったのです。
父親となって、今この作品を読むと、あらためて多くの魅力に気づきます。
不思議なストーリー、迫力のある絵、個性豊かなキャラクター、声に出して楽しい言葉のリズム……素直に楽しむ子どもたちの表情に、私もまた嬉しくなります。
そして、大人になった今も変わらず、不思議な力を感じます。
読んでいると、たまに「あ、」と気づくことがあったりするのです。
今後、子どもたちが懐かしさとともにこの本を開く時、どの場面に心が動き、どんな気づきがあるのだろう? と、ひそかな楽しみも与えてくれる不思議な1冊です。

『めっきらもっきら どおん どん』
長谷川摂子 作 ふりや なな 画
かんたがお宮にある大きな木の根っこの穴から落ちて訪れた国は、何ともへんてこな世界でした。そこの住人 “もんもんびゃっこ” “しっかかもっかか” “おたからまんちん” とかんたは仲良しになり、時のたつのを忘れて遊び回ります。けれどもすでに夜。遊び疲れてねむった3人のそばで、心細くなったかんたが「おかあさん」と叫ぶと……躍動することばと絵が子どもたちを存分に楽しませてくれるファンタジーの絵本です。
*「こどものとも」1985年8月号
* 現在は「こどものとも絵本」シリーズとして刊行
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