わたしの好きな「たくさんのふしぎ」

《通巻500号記念》わたしの好きな「たくさんのふしぎ」/五十嵐大介

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「たくさんのふしぎ」は、自然や環境、人間の生活・歴史・文化から、数学・哲学まで、世界のあらゆる “ふしぎ” をお届けしている、小学生に向けた月刊誌です。

2026年11月号で通巻500号(!)を迎えることを記念し、「たくさんのふしぎ」の著者の方々に心をつかまれた1冊を紹介していただきます。

わたしの好きな「たくさんのふしぎ」/五十嵐大介

「たくさんのふしぎ」シリーズには “贅沢な時間” を楽しめる本がたくさんありますね。
“贅沢な時間” にはいろいろあって。

『春をさがして カヌーの旅』(大竹英洋 文・写真)は、大竹さんが友人のウェインさんと共にカヌーに乗り込んで、冬から春に移り変わるノースウッズの季節を感じながら、ゆっくりと流れる時間を体感する旅の絵本です。
 

 
カヌーに食料、テント、ストーブを積み込み、空気や水の温度を確かめながら森に囲まれた湖を進みます。気に入った場所で上陸し、薪に使える枯れ木を探す。斧で割り、焚きつけを集め、火をつける。わたしも岩手の山の小さな集落に住んだことがあるので、その匂い、手触り、時間が蘇(よみがえ)ります。
 


森を歩く度に出会う小さな発見の喜び。
思いがけない生き物との遭遇。
仕事に追われ、つい忘れがちな本来の野生の生き物としての時間の感覚がそこにはあります。
 

 
『鬼が出た』(大西 廣 文 梶山俊夫ほか 絵)の “贅沢な時間” は、日本人が “鬼” というものと付き合ってきた長い歴史の時間です。
 

 
人間にとって得体の知れないもの、怖いものを “鬼” として捉え、想像を膨らませてきた時間。800年も前に描かれた絵巻物や、現在も行われる伝統行事の写真に、世界各地の鬼の絵まで。豊富な資料が、鬼と共に過ごした長い豊かな時間を感じさせてくれます。そして、これだけの資料に目を通した大西さんが費やした時間も、この本には詰まっています。なんて贅沢。
 

 
 
さいごにリクエストになりますが『9つの森とシファカたち マダガスカルのサルに会いにいく』(島 泰三 文 菊谷詩子 絵)を是非とも傑作集に!
 

 
1冊に込めた膨大な情報量、生物としての正確さとデザインとしての美しさを兼ね備えた素晴らしいイラストレーション。
その為に費やされた労力と長い時間がこの本に定着して、シファカたちと過ごす豊かな時間をわたしたちに堪能させてくれています。贅沢です。
 

傑作集、待ってます。
 

 

『春をさがして カヌーの旅』 大竹英洋 文・写真

アメリカ北部からカナダの北極圏にかけて、無数の湖と深い森の広がる「ノースウッズ」。きびしい冬が終わり、湖の氷がとける時期になると、ふだん大工をしているウェインは、だれよりも早く、カヌーを漕いで森の奥へと出かけます。ある年、ぼくはウェインに同行してその旅に出ました。湖で釣りをしたり、鳥の巣に出会ったり、発見と驚きに満ちた3週間の旅の記録です。

『鬼が出た』 大西 廣 文 梶山俊夫ほか 絵

「鬼はー外! 福はー内!」2月の初めになると、節分の豆まきの声が聞こえてきます。鬼ごっこをして、鬼になったこともあるでしょう。──鬼とはいったい何なのでしょう? 鬼といえば、こわいもの、悪いものの代表のようにいわれていますが、ほんとうの姿は案外しられていません。古い図像を手がかりに鬼本来の姿をさぐっていきます。

たくさんのふしぎ2019年10月号
『9つの森とシファカたち』

島 泰三 文 菊谷詩子 絵

アフリカの東、インド洋にうかぶ島国マダガスカルには、「レム-ル」とよばれる固有のサルたちがすんでいます。その数、100種以上。2足で立って跳ぶレム-ル「シファカ」を中心に、サルたちを探しながら、マダガスカル各地にある熱帯雨林、高地の森、乾燥した森や、石灰岩の針山など9つの森をめぐります。

『ホタルの光をつなぐもの』
福岡伸一 文 五十嵐大介 絵

私たちが見るホタルの光は、1億年以上にわたりホタルが命をつないできた途方もない時間の流れのなかの一瞬の輝きです。「ホタルをはじめ多くの生きものたちは、どうして長い時間、種をつないでくることができたのか?」──この深い問いへの答えを、生物学者である著者がやさしく語りかける作品です。