月刊絵本「こどものとも」が、2026年、創刊70周年を迎えました。
小さい頃に読んでもらったり、入社して出会ったり、子どもに読み聞かせたり……これまでに刊行された「こどものとも」から、福音館社員が思い入れのある1冊をご紹介します。
第6回は入社35年目、書籍編集部長・Yの1冊。
書籍編集部長・Y

子どもの頃、母に読んでもらった絵本はいくつもあります。おもちゃはなかなか買ってくれない母が、なぜか本に関しては寛容で、兄と姉がいた我が家には絵本や童話が結構たくさんありました。(その後の母が教育ママになった経緯をみると、本を買ってくれたのには「国語に役立つ」とか下心があったのでは? という疑いもありますが、よく読んでくれたので愛情ゆえにということにしておきます)
母が読んでくれた絵本の中でも『しょうぼうじどうしゃ じぷた』は思い出深い作品です。末っ子だった自分はまだ幼稚園で、すでに小学生になっていた兄や姉にはあまり一緒に遊んでもらえず、仲間はずれにされているような気持ちでした。幼稚園も家から遠かったので、友だちと遊ぶ機会も少なく、なおさら寂しい毎日を過ごしていた自分にとっては、絵本の前半で仲間はずれにされているじぷたは、まるで自分のことのように思えました。はしご車ののっぽくんは兄、救急車のいちもくさんは姉、高圧車ぱんぷくんはその仲間という感じで、嫌なやつ扱いです。そんな3台に蔑まれ、「自分だって出動さえさせてくれれば、もっと活躍できるのに」と思いながらも、長いはしごやポンプをうらやむじぷた。そんなじぷたに対して「わかるよ、じぷた。寂しいけど、でも人間は所詮孤独さ」と心の中で語りかけます。

でも後半、虐げられていたじぷたが、ほかの3台が行けない山小屋の火事にいよいよ出動です。頑張れ、じぷた! 狭い険しい道でも、じぷたなら大丈夫。無事、火事を消して、山火事を未然に防ぐことができました。

次の日新聞にも載り、みんなにも褒められる姿を見て、「やったね! じぷた」と心の中で喝采を送りました。最後の見開きで子どもたちに囲まれたじぷたの目は笑っていますが、ほかの3台は目がキョドっています。兄よ、姉よ、反省するがよい! でも、じぷたは自慢なんてしないのです。コウイウヒトニワタシハナリタイ。

この頃、東京でジープ型の消防車を見ることはありませんでしたが、田舎のおじいちゃんのところに帰省した際に、地方ではまだ活躍していた小型の消防車を見つけては「あっ、じぷただ!」と大騒ぎしていたのを思い出します。
その後、小学校に上がってから、いわゆるスーパーカーブームが起こり、自分もスーパーカーカードでランボルギーニやフェラーリを見ては「かっこいい!」と興奮する毎日でしたが、いざミニカーを買ってもらう段になると、なぜか働く自動車(ミキサー車やショベルカー)ばかりを選んでいました。その根底には、火事で大活躍したじぷたの存在があったのだと思います。世の中には見た目の「かっこいい」以上に大事な、働いて人の役に立つ「かっこいい」があることを教えてくれたじぷた! ありがとう。その教えのおかげで、今日も元気に会社に「出動」します!
『しょうぼうじどうしゃ じぷた』
渡辺 茂男 さく 山本 忠敬 え
高いビルにはしごをのばして火を消すことのできる、はしご車ののっぽくん。たくさんの水で激しい炎も消すことのできる高圧車のぱんぷくん。けが人を運んで助ける救急車のいちもくさん。大きくて立派な働きをするみんなに、小さな消防自動車じぷたは「ちびっこ」あつかいされていました。ある日、山の中で火事が起こりました。このままでは山火事になってしまいます。そんなとき、出動を命じられたのはなんとじぷたでした……。
*「こどものとも」1963年10月号、「こどものとも年中向き」1973年5月号、1977年7月号
* 現在は「こどものとも絵本」として刊行
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