こどものとも70周年

福音館社員が選ぶ 「こどものとも」わたしの1冊|佐々木マキさんの『まじょの かんづめ』(編集部長I)

絵本 |
アイキャッチ画像

月刊絵本「こどものとも」が、2026年、創刊70周年を迎えました。
小さい頃に読んでもらったり、入社して出会ったり、子どもに読み聞かせたり……これまでに刊行された「こどものとも」から、福音館社員が思い入れのある1冊をご紹介します。

第10回は入社36年目、月刊誌編集部長・Iの1冊。

ページを開くと、子どもたちの笑い声が聞こえてくる
『まじょの かんづめ』

月刊誌編集部長・I
 

「ひひひ、もう、おそい!」
何の言葉か知っていますか? そう、名作『まじょの かんづめ』(佐々木マキ 作)に出てくる魔女のセリフです。
今はもう成人となったウチの子どもたちがまだ小さかったころ、この絵本を何度読んであげたことか! 

『まじょの かんづめ』は、こんなお話です。主人公の女の子と犬がいつものように森に遊びに行くと、何もなかったはずの場所に小さな家が建っていました。不思議に思った女の子と犬が家の中に入ると、台所のテーブルの上にいくつもの缶詰が。そしてその缶詰から「たすけてくれえ」「だしてくれえ」と、小さなくぐもった声が聞こえてくるのです! 女の子が缶切りで缶詰をあけてあげると、ぞうやくまやぶたが次々と出てきて、悪い魔女が魔法でぞうたちを缶詰にしたと言いながら森の奥に逃げていきました。

ハッと気がついた女の子と犬が「はやくここからにげなくちゃ!」と逃げ出そうとしたその矢先に、冒頭のセリフとともに魔女が現れるのです。

子どもたちはこのセリフの場面にくると、2人とも、背中をブルブル震わせながら、読み手の私の声に合わせて、「ひひひ、もう、おそい!」と何度も叫んだものでした! なぜ子どもたちはこのセリフの場面でこれだけ興奮していたのでしょう? 私は考えました。このあと魔女はひどい目にあって、女の子たちは無事に助かるとわかっているからこそ、魔女のこのおそろしい登場のセリフを、逆に最高にわくわくしながら目をキラキラさせて大声で叫んでいたのでしょう。そして、主人公の女の子と同じ気持ちになって、ドキドキした気分を味わっていたのだと思います。お話の世界にすっぽり入り込んでいたのですね。

この作品の魅力は、起承転結があるしっかりした展開ながら、動物が缶詰にされてしまうという奇想天外な発想や、「オシマイカ・ココマイカ・モサラベセイカ」といった魔女の呪文の言葉などがユーモアたっぷりであることでしょう。魔女の家の中にあった変な彫刻の正体は、最後まで読んでのお楽しみ。

明るい色彩のポップな絵も美しく、佐々木マキさん独特の個性が、言いようのない魅力を放っています。

この『まじょの かんづめ』は何十回も読んであげたため本はボロボロとなり、ページには補修のテープがいくつも貼られ、表紙も取れかけています。(現在刊行されているハードカバーではなく、月刊絵本として刊行されたソフトカバーなので、表紙も取れかけているのですね。)それは、この本がどれだけ愛されたかの証。

『まじょの かんづめ』(こどものとも1994年1月号/I私物)

今現在、マツパだネイルだジムだと忙しい娘と、毎日30分以上かけて髪を整える息子は、この絵本で笑い合ったことを覚えているでしょうか?
まあ、いい。私は『まじょのかんづめ』を開いて、子どもたちがキャアキャア言いながら笑っていた声を思い出し、幸せな気持ちにひたるのです。

『まじょの かんづめ』 佐々木マキ さく

女の子と犬が森へ遊びにいくと、見なれない一軒家がたっていたので、中に入ってみました。すると台所にあった缶詰から「たすけて」という声が聞こえてきます。缶切りでギッシギッシと開けてみると、最初はぞうが、次はくまが……と、次々と動物が出てきました。その時、魔女が帰ってきて、ふたりは缶詰にされてしまいますが……。魔女の家の蛍光色がふしぎな雰囲気を醸しだす絵本です。

*「こどものとも」1994年1月号
* 現在は「こどものとも絵本」シリーズとして刊行


『まじょの かんづめ』についてはこちら

 

こどものとも70周年
福音館社員が選ぶ 「こどものとも」わたしの1冊|『しょうぼうじどうしゃ じぷた』(編集部長Y)
アイキャッチ画像


▶ 月刊絵本「こどものとも」創刊70周年特設ページへ

この記事をシェアする