わたしの好きな「たくさんのふしぎ」

《通巻500号記念》わたしの好きな「たくさんのふしぎ」/高野秀行

編集部より |
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「たくさんのふしぎ」は、自然や環境、人間の生活・歴史・文化から、数学・哲学まで、世界のあらゆる “ふしぎ” をお届けしている、小学生に向けた月刊誌です。

2026年11月号で通巻500号(!)を迎えることを記念し、「たくさんのふしぎ」の著者の方々に心をつかまれた1冊を紹介していただきます。

わたしの好きな「たくさんのふしぎ」/高野秀行

『春をよろこぶ みんなで踊る 世界でくらすクルドの人たち』
(金井真紀 文・絵)

クルド人は中東のティグリス=ユーフラテス川上流域とそれに隣接する地域に古くから住む民族。国で言えば、トルコ、イラク、イラン、シリアなどだが、どの国でも少数派として困難な生活を強いられてきた。その結果、欧米諸国やオーストラリア、日本などに移住した人も多い。

どの国に住んでいてもクルドの人たちがいちばん大事にしているのは「ネウロズ」。毎年、春分の日に行われるお祭りだ。厳しい冬を乗り越え春の訪れを喜び合う。クルドの暦ではこの日から新しい年になるので「新年祭」でもある。
 

 
『春をよろこぶ みんなで踊る 世界でくらすクルドの人たち』は著者の金井真紀さんが世界各地のクルド人コミュニティを訪ね、その華やかで豊かなお祭り風景を紹介している。私が驚いたのは、絵の素晴らしさ。 私もこれまでトルコやイラクで数多くのクルド人と出会い、ネウロズにも参加してきたが、「これ、これ、クルド人ってほんとにこういう感じだよね!」と大声で誰かに話しかけたくなった。クルドの人たちをこれほど楽しく正確に描いた本はないんじゃないか。
 

 
クルド人は人によって見た目や性格が全然ちがう。プロレスラーみたいな体格の人もいれば小柄な人もいる。同じ親族でも髪の色が金髪だったり漆黒だったりする。インド系っぽい顔もあれば、ヨーロッパ人と見分けがつかない顔もある。人なつっこくて世話焼きの人もいれば、物静かでシャイな人もいる。派手な格好をした人もいれば、ざっくばらんな服装の人もいる。

ニュースやSNSでよく言われるような「一般的なクルド人」なんていないのである。金井さんはハッサンさんとかズベイダさんといった、一人一人のクルドの人たちを本当に丁寧に描いている。そして、そういう人たちを並べると、不思議なことに、「クルド人らしさ」が浮かび上がってくる。これは口で説明してもわからないし、写真ですら難しいのに、金井さんの絵でははっきりと見て取れるから驚いた。
 

 
そして、本書の見所は美しい衣装と美味しそうな料理。ネウロズのために新しい服やアクセサリーを新調するワクワク感と御馳走を準備する楽しそうな様子、お祭りの会場へ向かうウキウキした雰囲気も存分に描かれていて、何度見ても見飽きることがない絵本だ。

 

たくさんのふしぎ2026年3月号
『春をよろこぶ みんなで踊る 世界でくらすクルドの人たち』金井真紀 文・絵


春分の日、クルドの人たちが新年を祝うお祭り「ネウロズ」が開かれます。クルド人ってどんな人たちなのでしょう? どんな文化をもっているのでしょう? 日本、イラン、イラク、カナダ、イギリス、ドイツ、世界中にくらすクルドの人たちに会って話を聞きました。ネウロズと美しいクルドのドレスを中心にクルドの文化の魅力を紹介します。

『世界の納豆をめぐる探検』
高野秀行 文・写真 スケラッコ 絵

納豆は日本だけの食べ物だと思っていませんか? じつは、納豆の仲間はアジア各地や、アフリカにもあるのです。せんべいみたいにしたり、スープにしたり、食べ方もさまざま。探検家の高野秀行さんが世界をめぐって調べた、おいしくておもしろい納豆の数々を紹介します。また、日本の納豆はいつどのようにして生まれたのか? という、大いなる謎にも迫ります。

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