≪親子でたのしい！えほんやさんぽ≫ 第２回　宮城県仙台市「絵本と木のおもちゃ横田や」

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2025.12.19 2025.12.19

絵本屋さんのある街を、親子で旅してみませんか？　全国各地のステキな絵本屋さんと、親子いっしょに楽しめる近隣のおすすめスポットの魅力を、イラストレーター・Tamyさんのイラストルポでご紹介していきます。旅先の絵本屋さんで出会った１冊は、きっと想い出の１冊になりますよ。

仙台駅　東京駅から新幹線（はやぶさ）で１時間30分

◆ 絵本と木のおもちゃ横田や

仙台市青葉区の北山周辺は、歴史あるお寺が点在する寺町です。その一角にある、ひときわ目を引く日本家屋のお店が「絵本と木のおもちゃ横田や」さんです。

約150年前、明治初頭に建てられた商家では、横田重俊さんのお祖父様まで「横田味噌醤油店」として家業を営んでいました。お店を畳んだ後は、文具店に10年ほど貸し出していましたが、孫である重俊さんが、大学院を卒業後に仙台に戻り、地元の方々に親しまれていたその文具店を引き継ぐことになりました。

重俊さんは、仙台で生まれ、３歳からは東京暮らし。当時は東京タワーが建設中で、その姿がだんだん高くなっていくのを見ながら育ったそうです。

お店を始める以前から「絵本」に関心をもっていた重俊さん。きっかけは谷川俊太郎さんの『ことばあそびうた』でした。「たまたまラジオで聴いて、本を探してみたら、それが絵本だった。絵本っておもしろい」と感じたといいます。

そんな出会いもあり、文房具を扱うとともに、絵本もお店に並べるようになりました。

「木のおもちゃ」との出会いは、県の美術館で開催されていた「ヨーロッパのおもちゃ展」。展示を見て、すぐに東京の専門店に出向いて仕入れを決め、絵本といっしょにお店に置くようになりました。当時、絵本と木のおもちゃを組み合わせたお店としては、まさに先駆けの存在でした。
「ドイツのおもちゃは２世代にわたって遊べる。子どもの頃に遊んだものを、自分の子どもとまた遊べる丈夫さがある。そうすると、自分の小さい時の思いも共にそこにあって、そういう繋がり方は絵本と同じだと思うんだよ」と重俊さん。それはお店にも言えることで、子どもの頃にお店に通っていた方が親になり、自分の子どもを連れてくることも多いそうです。

奥様の敬子さんとの出会いは、お店のスタートのころ。「ユーモアと機知に富んだ人を求む」という新聞の求人広告を見た敬子さんが応募して、採用が決まり、その３年後におふたりはご結婚されました。「横田や」の歴史はご夫婦の歴史でもあるのですね。

震災にも耐えた堅牢な家屋の住宅部分を活かしたスペースが絵本コーナーで、お店には現在なんと１万冊以上の本が並んでいます。重俊さんの好きな本や、作家ごとの棚、出版社別の棚などがありますが、お客さんに聞かれたらパッと取り出せるとか。「置きたい本、欠かせない本がどんどん増えてくるけれど、ロングセラーはちゃんと置きたい」とお二人。

そんなお二人の好きな絵本を伺いました。

◆ 重俊さんの好きな絵本
①『ことばあそびうた』（福音館書店）
②『ぼんさいじいさま』（瑞雲舎）
「人生最後のお迎えがこんなふうだったらいいな、って思うんです」
③『はるにれ』（福音館書店）　
「今はハードカバーが出ているけれど、月刊絵本「こどものとも」として刊行された当時のものを大切にとっています。「横田や」を始めてすぐの頃に刊行された１冊。折込付録も大事にしています」

◆ 敬子さんの好きな絵本
①『ぞうのボタン』（冨山房）
「うえののりこさんが好きなんです。このお話はエンドレス。文章はない絵本ですけれど、読むときは『またボタンあったね、ボタンをはずすと……』って。言葉かけでいろいろ変わってくるんです」
②『イエペはぼうしがだいすき』（文化出版局）
③『おちゃのじかんにきたとら』（童話館出版）

「絵本選びは、現物を見て、自分に合うものを選んだらいい。大人が子どもと一緒に読んで楽しめると思うものを。ただ、一回だけでなく何十回読んでも耐えられるものを選んでほしい。一回読んで終わりの本もあってもいいんです。でも本屋や図書館などを利用して、自分が何十回読んでもいいな、と思える絵本を見つけてほしいですね」と重俊さんは語ります。

「横田や」さんでは、おはなし会や、敬子さんが運営する人形劇など、親子で楽しめるイベントも開かれています。絵本と出会うきっかけになった谷川俊太郎さんのご子息・賢作さんのバンド「DiVa」を招いたコンサートを開催したことも。その時は俊太郎さんも参加され、その時のことが『ひとり暮らし』（新潮文庫）の中でふれられています。

絵本と木のおもちゃを通して、親子がつながり、地域ともつながる。やさしい時間を育む場所として、これからも灯りをともし続けてください。

■店舗情報
絵本と木のおもちゃ横田や
宮城県仙台市青葉区北山1-4-7　※仙台駅から車で約15分／地下鉄またはバスで約30分
【web】https://yokotaya-sendai.stores.jp/
【facebook】https://www.facebook.com/yokotaya1978