創刊から70周年を迎えた月刊絵本「こどものとも」。
『ぐりとぐら』や『おおきなかぶ』も、ここから生まれました。
1956年の創刊から連綿と続く「こどものとも」は、どのように作られているのでしょう? 子どもたちに愛される絵本を作る秘訣とは…? 編集部に密着しました!
月刊絵本「こどものとも」を編集しているのは、こどものとも第一編集部。年長児向けの「こどものとも」と、年中児向きの「こどものとも年中向き」の2誌を担当しています。
毎月1冊、絵本をお届けする月刊絵本は、1年間で 12 冊。こどものとも第一編集部の担当は2誌なので、年間 24 冊です(*)。それを現在6人の編集部員で分担し、刊行に向けて日々準備を進めています。
今回はそんな編集部のさまざまな仕事に密着して、どのように「こどものとも」が生まれるのか、探っていきます! ──それでは、密着スタート!
*「こどものとも年中向き」は、再版の作品が加わる場合があります

毎週開催される「こどものとも第一編集部」の編集会議。場所はS9会議室──通称「だるまちゃんの部屋」です。加古里子さんの「だるまちゃん」の絵が入り口に掲示されているため、そう呼ばれています。
6人のメンバーがそろうと、さっそく「この間の打ち合わせでこんな楽しいことがあってね」と雑談が始まりました。ふだんは個々に動くことが多いため、週に一度、全員がそろう編集会議は貴重な場。笑い声が飛び交い、とても和やかな雰囲気です。
話がひと段落すると、編集長Mが「それでは会議をはじめましょう」と声をかけました。最初は編集長からの事務連絡。そして、各々が担当する企画について、進捗の報告がはじまりました。

原稿を前に、真剣な表情の6人。
担当者が検討したいポイントを説明し、意見を求めると、ほかの編集部員から質問や感想とともに、さまざまな提案が出てきます。担当者は聞き漏らさないように耳を傾けながら、次の作者との打ち合わせに向け、考えを整理していきます。
ひとりの編集部員が抱える企画の数は、平均すると 20 前後。急ぐものだけに絞っても、時間はあっという間に過ぎていきます。企画の検討以外にも、年間ラインナップの選定や、ハードカバー化する作品の準備など、編集会議で話し合うことは盛りだくさん。そのため、編集会議は、たいてい時間が足らなくなるのだとか。
絵本の作者との打ち合わせも、編集者の重要な仕事。打ち合わせでは、原稿や絵に関するご相談だけでなく、レイアウトの調整や、校正刷り(本番の印刷を行う前に印刷会社が出す見本)の色の確認などもおこないます。
この日は、「こどものとも」2026年8月号『われら はたらく うんてんしゅ』の作者 くりはらたかし さんが会社に足を運んでくださいました。編集部員INがお迎えし、応接室にご案内します。今日は印刷会社から届いたばかりの校正刷りを、くりはらさんにご確認いただくようです。

1回目の校正刷りを「初校」と呼び、2回目の校正刷りを「再校」と呼びます。今日確認するのは、8月号の再校です。初校を印刷会社に戻す際に伝えている、色修正などの指示が、再校にしっかり反映されているか、念入りに確認していきます。
おや、二人の表情が曇りがち……。残念ながら再校はイメージした色から遠のいてしまったようです。くりはらさんはデータで絵を制作されていますが、データの場合は明確に色の指標となるものがないため、その中で修正の方向性を示す難しさがあったようです。
「日程的には三校(再校の後に印刷会社から出してもらう校正紙)をとる余裕があるので、三校をとりましょう」と提案するIN。すると、「三校をとっていただけるなら、このページの絵がどうしても気になるので、あわせて直してもよいでしょうか?」とくりはらさん。INは少し考えて、「くりはらさんが必要とお感じになるものでしたら、よろしくお願いします」と答えました。

校正紙の確認作業が終わり、今日の打ち合わせもこれで終了……と思ったら、そこから次回作の打ち合わせが始まりました。くりはらさんが事前にメールで原稿を送ってくださっていたようです。原稿について確認や質問をしながら、くりはらさんが表現したい世界を自分のなかに落とし込んでいくIN。そうして理解を深めたうえで、次の編集会議に臨むのですね。
くりはらさん、「こどものとも」の8月号と次回作、楽しみにしています…!

「重版」とは、出版している本の在庫が少なくなったときに、あらためて印刷・製本をおこなうこと。最初に出版した分を「初版」と呼び、以降は重版がかかるごとに「2刷」「3刷」「4刷」……と数字が増えていきます。月刊絵本は基本的に重版はしませんが、ハードカバー版の「こどものとも絵本」(*)は重版の対象です。
* 月刊絵本として刊行したあとに、一般書籍としてあらためて刊行したもの
編集部員Sが赤ペンで書き込んでいるのは、この度重版が決まった『おばけのコックさん』の見返しページ。そこに記載されている奥付(本に関する基本情報をまとめたもの)の「刷数」に、修正の指示を入れています。今回の重版は「24刷」なので、刷数の部分に「24刷」と記入。
重版がかかるということは、その本が多くの読者に恵まれたことの証です。地味な作業でも、編集者にとっては幸せな時間なのです。

今度はSが、同じく重版がかかった『でんしゃにのったよ』のページを、ルーペでのぞきはじめました。これはいったい何のため……?
──印刷時のインク量の違いなどによって、絵本の色が微妙に変わってしまうことが稀にあります。そのため、前回の重版(34刷)の色をあらためて確認し、懸念がある場合は、印刷会社と相談する必要があります。その確認作業をおこなっていたのでした。
作者が心を込めて描いてくださった原画の色をできる限り再現することは、絵本を目にする子どもたちの感動にもつながるとSは信じています。
編集部3年目のTが、朝早くから保育園へ。Tは月に1回、この保育園に足を運んでいます。「こどものとも」を楽しむ年齢の子どもたちのことを、もっとよく知るために。
朝は先生たちといっしょに登園してくる子どもたちをお迎え。朝の体操もいっしょにします。元気に飛び跳ねる子どもたちに手を引っぱられながら、バランスを崩すことなく軽やかに踊るT。体操が終わると、子どもたちはそれぞれのクラスへ。

昨年から通っているので、子どもたちとはすっかり顔なじみです。出欠確認のあと、先生のお話が終わると、次は園庭で遊ぶ時間になりました。この年齢の子どもたちが何に興味を示し、どのように遊びを広げていくのか、絵本づくりのヒントを見逃さないよう、しっかりアンテナを張って見守ります。
その後、近所の公園への散歩にも同行し、それから給食の時間。この日のメニューは、トマトクリームシチュー、マカロニサラダ、パン、みかん。子どもたちと一緒にいただきます!
午後はお昼寝の前に、絵本の時間。
先生が手にしているのは、「こどものとも」2026年12月号として刊行予定の『ちいさなふたりの ふゆのいえ』──Tが担当している作品です。準備段階のものですが、子どもたちの反応を見て確かめたくて、文章と絵をレイアウトしたものを本の形に整え、先生にお渡ししていたのです。

先生が読みはじめると、子どもたちがぐっと身を乗り出します。
その様子をじっと横から見つめるT。読みづらいところはないかな、子どもたちがストーリーをちゃんと理解できているかな……。
この日は、作者の たかおゆうこ さんも保育園にいらっしゃっていて、やはり真剣な眼差しで読み聞かせのようすをご覧になっていました。
こどものとも第一編集部の全員で担当作品を持ち寄り、保育園におじゃますることもあるとか。子どもたちの素直な反応は、絵本づくりに欠かせないものなのですね。

編集部員Sが、南青山のギャラリー「SPACE YUI」にやってきました。絵本作家の方々がよく個展を開くギャラリーです。
この日開催されていたのは、門川洋子 さんの個展「ここだけのはなし」。中に入ると、精緻に描かれたモノクロの美しいペン画が壁面に並んでいます。
Sは以前、編集を担当した絵本の絵を、門川さんに描いていただいています。ひさしぶりにお目にかかって、近況をうかがったり、作品について解説していただいたり。

Sが門川さんと出会ったきっかけも、こちらのギャラリーで開催されていた個展だったそうです。前回の個展に足を運び、門川さんの描く世界に心を惹かれ、それが仕事の依頼につながりました。
新たな絵本の作り手に出会うため、ギャラリーをめぐったり、雑誌や書籍の挿絵をチェックしたりすることも、編集部員の仕事の一部なのですね。

編集部の作業台で、編集部員IMが原画と校正紙を広げています。隣にいる男性は、「こどものとも」の印刷を担う株式会社精興社のTさん。どうやら初校戻しの真っ最中。タイトルを確認すると、「こどものとも」2026年9月号『はいたつやのスピック』でした。
事前に校正紙に書き込んだ修正の指示について、IMがひとつひとつ説明していきます。
「床のオレンジの黄色みをもう少し強くしたいのですが」
「それなら……」
作者の要望をしっかりお伝えしようと、熱が入るIM。
Tさんも、印刷の現場に指示を正確に伝える必要があるので、とても真剣な表情です。

『はいたつやのスピック』は、文章の作者が くら ささら さん、絵の作者は 嶽まいこ さんです。嶽さんの鮮やかな色彩の原画の雰囲気を再現するため、今回は通常のプロセスインクではなく、特色のインクを使用することにしたようです。それが功を奏し、初校で狙った色がうまく出ているようす。
ひと通りの説明を終えたIMが、校正紙と原画をTさんに渡しました。よりよい色になりますように。Tさん、どうぞよろしくお願いします。
9月号の発売は8月初旬です。楽しみにお待ちください!
*
「こどものとも」が生まれる場所──こどものとも第一編集部の仕事をご紹介してまいりましたが、いかがでしたか? 今回ご紹介できたのは、ほんの一部ですが、編集部の雰囲気をすこしでも感じていただけたら嬉しいです。
今年、70周年を迎えた「こどものとも」。
これからも変わることなく、子どもたちが心から楽しめる絵本をお届けしていきます。
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