「えほんQ&A」は、読者のみなさまから寄せられた疑問や悩みにお答えする連載です。絵本や読み聞かせを楽しむときの参考に、どうぞご覧ください。
ロングセラーの絵本はよいと聞きますが、どういうところがよいのでしょう? 新しい絵本と比べると、だいぶ地味に感じられます……。
書店の絵本コーナーをのぞくと、さまざまな絵本が並んでいます。その中に、いつの時代も変わらず棚に並びつづけている本があります。『ぐりとぐら』『おおきなかぶ』『三びきのやぎのがらがらどん』など──いわゆるロングセラーと呼ばれる絵本です。
ロングセラーの絵本は、なぜ「よい」と言われるのでしょうか?
それは、 “子どもたちに選ばれつづけてきた” という、確かな裏付けがあるからです。たとえば『ピーターラビットのおはなし』は、イギリスで1902年に刊行され、日本では1971年に翻訳出版されました。イギリスで100年以上、日本でも50年以上にわたって、子どもたちに愛されてきたことになります。
刊行当時の子どもたちだけでなく、その後に続く世代の子どもたちを楽しませつづけてきた──その積み重ねこそが、ロングセラー絵本が信頼される所以です。時代や社会が変遷しても読み継がれてきたのは、子どもの心を強くとらえる力をもっているからと言えるでしょう。
何十年も前に生まれたロングセラー絵本は、印象が地味に感じられたり、絵が古めかしく感じられることもあるかもしれません。けれども、その本質をとらえた絵は、子どもの頭の中に豊かなイメージを描き出します。大人の目には地味で古めかしく見える絵でも、子どもにとっては魅惑的な物語の入り口になるのです。
刊行から長い年月が経っているため、ロングセラー絵本の中には、今ではあまり使われない言葉づかいや、時代背景を反映した表現も見られます。聞き慣れなかったり、現代の感覚では違和感を覚える部分もあるかもしれません。ただ、さまざまな言葉や表現に出会い、その意味も知ったうえで、自分でちゃんと選んで使えるようになっていくことこそ、大切ではないでしょうか。
──それから、ロングセラーの絵本を読むことは、私たち大人の「絵本を見る目」を育てることにもつながります。さまざまなロングセラー絵本にふれていくうちに、どのような絵本が子どもの心をとらえるのか、どのような絵本を子どもは繰り返し読んでもらいたくなるのか……そういう感覚が養われていきます。
「絵本を見る目」が働くようになると、次々に刊行される新しい絵本の中からも「これはきっと子どもが何度も『読んで』と持ってくるだろう」という絵本を選べるようになります。ロングセラーの絵本は、絵本を選ぶときの基準を、私たち大人に教えてくれる存在でもあるのです。よいものを選ぶ目は、よいものにふれることで育っていきます。

その本が出版から何年経過しているか調べたいときは、裏表紙または最後のページをご覧ください。そこに本の情報を記載した「奥付」があります。奥付の「初版発行日(=本が初めて世に出た日)」と「刷数(版を重ねた回数)」を確認していただくと、必要な情報が得られます。
上の写真は、『ぐりとぐら』の奥付です。「1963年12月」に月刊絵本「こどものとも」の1冊として初めて刊行され、その後「1967年1月」に傑作集(ハードカバー版)の第1刷(初版)が刊行されたことが記載されています。刷数は2025年9月の日付で「254刷」──それだけ版を重ね、印刷されてきたということです。
子どもたちを何十年も楽しませてきた、ロングセラーの絵本。そのページをひらいて、子どもを惹きつけてやまない魅力を、物語を、ぜひ一緒に味わってみてください。
※出版社名のない書目は、福音館書店刊
(とものま編集部)
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