わたしの好きな「たくさんのふしぎ」

《通巻500号記念》わたしの好きな「たくさんのふしぎ」/きのした ちひろ

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「たくさんのふしぎ」は、自然や環境、人間の生活・歴史・文化から、数学・哲学まで、世界のあらゆる “ふしぎ” をお届けしている、小学生に向けた月刊誌です。

2026年11月号で通巻500号(!)を迎えることを記念し、「たくさんのふしぎ」の著者の方々に心をつかまれた1冊を紹介していただきます。

わたしの好きな「たくさんのふしぎ」/きのした ちひろ

『熱はつたわる』(都筑卓司 文 勝又 進 絵)

「シンカンセンスゴイカタイアイス(※1)」を知っているだろうか。

東海道新幹線の車内ワゴンで販売していた(※2)、紺色と金色の美しいパッケージで濃厚な美味しいアイス。しかし、すごい硬い。プラスチックや木のスプーンでは歯がたたず、ヤケクソになってスプーンを折ってしまう者もいるという。そんな声もあってか、アルミ製の特製スプーンも売られている。アルミ製のスプーンを使えば、アイスが素早く溶け、柔らかくなる。しかし、なぜプラスチックや木のスプーンでは硬くて歯がたたないのに、アルミ製のなら溶けやすいのか。ええと、アルミのほうが熱伝導率が高いから手の熱が伝わりやすくって……熱伝導率って何? 子どもに無邪気に質問されたらドキっとするかもしれない。でも、この本を読めば熱の動きがわかるようになる。

それが、たくさんのふしぎ傑作集『熱はつたわる』だ。この本は、お話「西遊記」がベースになっている。三蔵法師たちの旅に加わって、野宿をしているうちに、熱とは何かがわかる本だ。熱にせかされて飛び回る孫悟空、どんくさい猪八戒、かわいいカッパの沙悟浄など、登場人物は全員キャラが立っていて、絵には懐かしさと安心感がある。勉強をしている感がほとんどないところが好きだ。
 

 
この本がスゴイのは、物理の話をしているのに、矢印にできるだけ頼らず、目に見えない現象を説明しているところだ。激しく動くものは、せわしなく。膨張するものは、でっぷりと。細かな説明を読まなくても、絵を見れば熱の働きが感覚として理解できる。秀逸だ。
 

 
私も、「たくさんのふしぎ」2026年4月号で『いきものと熱』のイラストと文を担当した。動物と熱の関係を描くには、まず熱そのものがどう動くのかを伝えなくてはならない。そのとき参考にしたのが、『熱はつたわる』だった。できるだけ矢印に頼らず、動きや表情、身近なたとえを使って、熱を感覚的に描こうとした。考えてみれば、優れた科学絵本には、難しい仕組みを身近な経験へと置き換える秀逸なたとえがたくさん隠れている。『熱はつたわる』は、そんな工夫が見開きの隅々まで詰まった、贅沢な科学絵本だ。

猛暑や温暖化で、熱にうなされる夏が続く。ここで一度、「熱って、そもそも何者なのだろう」と考えてみるのも面白い。経験という伏線をたくさん持っている分、子どもより大人のほうが楽しめる本かもしれない。

 
※1 元々の正式商品名は「スジャータ スーパープレミアムアイスクリーム」
※2 現在は駅のホームやグリーン車のモバイルオーダーで購入できる

 

『熱はつたわる』都筑卓司 文 勝又 進 絵

暑い、寒い。あたたかい、つめたい。──私たちが日常のさまざまなところで感じる「温度」には、どれもみな「熱」が関係しています。お皿が熱すぎて持てなかったり、お風呂に入ったら下のほうが冷たかったり、ひなたでポカポカぬくもりを感じたり。陶器や金属は「伝導」、空気や水は「対流」、光であたたまる「放射」と、ものによってそのあたたまり方には違いがあります。熱が伝わって、ものをあたためていくしくみを探ります。

たくさんのふしぎ2026年4月号
『いきものと熱』きのした ちひろ 文・絵

私たち人間の体温は、36~37度。スズメの体温は、なんと42度。いきものによって体温は違います。爬虫類や魚には、まわりの温度に合わせて体温が変化するものも多くいます。それぞれのいきものにとって、活動するのにちょうどよい体温があるのです。大切な体温を維持して活用する、いきものたちの体のよくできた仕組みを紹介します。