2025年3月に休刊となった雑誌「母の友」に、「こどもに聞かせる 一日一話」という人気企画がありました。子どもにさっと読んであげられる短いお話を、一挙にまとめて掲載するものです。
その「一日一話」を、「とものま」で再開します。
季節ごとに7話ずつ、とびっきりのお話をお届けしていきます。
阿部 結 作
ぼくは、ほしのこじょーじぃ。
ほしのこには、まいにちだいじなしごとがある。よるになると、そらをながれてまちをみおろして、ねむれずにほしをみあげているこをさがす。みつけたら、そのこんちにとんでって、ねむくなるまでいっしょにあそんであげるんだ。
こないだのよるなんか、サンタさんをまっているこばっかりで、しごとがほんとにたいへんだった。きょうのまちも、なんだかいつもとようすがちがう。まちのいえのドアには、なわでつくったわっかみたいなものがかかっていて……あ! きょうもねむれないこ、みーつけた。それゆけ、ひゅーん!
「……わあ、ほんとうにきてくれた。“しんねん”、きみにあいたかったんだ!」
「まってまって。ぼくは “しんねん” なんかじゃない!」
「え、ちがうの? じゃあ、きみ、だれ? なんのよう?」
ぼくはおおきくいきをすって、おきまりのあいさつをした。
「わがなはほしのこ、じょーじぃ。まいよ、ねむれぬこどものもとへとんでゆき、ねむくなるまでいっしょにあそんであげるのが、われらほしのこのしごとなのであーる」

「オッケー、じょーじぃ。ぼく、チー。あのね、ぼく、あそんでるひまないの。“しんねん” がくるのをまってるんだから」
「なんなの? その “しんねん” って」
「 “しんねん” は、みんなをうれしくてたのしいきもちにするものさ。でも、“しんねん” は、みんながねむっているうちにしかこないんだって。だけどぼく、どうしても “しんねん” にあいたくて、こうしておきてまってたってわけ」
「ふーん、なんだかぼくも “しんねん” にあいたくなっちゃった。ねえ、いまからいっしょにあいにいこうよ」
「それって、さいこう!」
「よーし、きまり。チー、“しんねん” ってどんなやつで、どこにいるの?」
「しらない。みんながねむってるときにやってくるって、それしか」
「うーん……それだけじゃ、さがすの、むずかしいなあ。あ、みんながねむっているときにやってくる、ってことは “しんねん” はだれにもすがたをみられたくない、はずかしがりやなんじゃない?」
「そうかも。じゃ、だれもいないところ、さがしにいこう!」
「いいね。チーはそらとべないから、あるいていくよ。さ、じゅんびして」
「こうするの! えいっ」
チーったら、むりやりぼくにおんぶした。
「おもっ。もう、しょうがないなあ」
ぼくは、あしをぐーっとふんばって、ひゅーん! チーをのせて、よるのそらにとびだした。
やまおくのこわれたあきや。うみべのいわかげ。まよなかのゆうえんち。くらやみのなか、ぼくら、いっしょうけんめいさがしたけれど、“しんねん” はちっともみつかんない。つぎのばしょへさがしにいこうと、ひゅーん! していたそのとき。そらから、なにかがおちてきた。きらきら、きらきら。ひかりながら。

「みて、チー、きらきらがおちてきた! ひょっとして、これが “しんねん” じゃない?」
「じょーじぃ、これは “ゆき”。こおりのけっしょうだよ。そんなこともしらないの?」
「ゆき……」
ぼく、チーのことをすっかりわすれて、ずっとずーっと、ゆきをみてた。きらきら。きらきら。なんてきれい……
きがつくと、チーはぼくのかたにあたまをのせて、うとうと、うとうとしはじめていた。ぼく、あわててチーのいえにひゅーん! して、ベッドにねかせておふとんかけた。
しずかにへやをでようとしたら、せなかから、チーがささやくこえがした。
「ねえじょーじぃ、やっぱりさ、きみが “しんねん” なのでしょう……?」
「ちがうよ、ぼくは……」
ふりむいたら、チー、もう、ねむっていた。
ふーう。きょうのしごともいっちょあがり。ゆき、おみやげにもってかえって、ママに “しんねん” のこときいてみようっと。
(おしまい)

子どもと一緒に挿絵を見ながら楽しみたい方は、こちらからPDFのファイルをダウンロードの上、出力してお楽しみください。 ※個人利用に限ります。
こどもに聞かせる 一日一話
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