連載「絵本の選びかた」では、絵本選びに迷う方に向けて、絵本の楽しみ方や選び方のヒントをお届けしていきます。今回は、クリスマスシーズンに楽しみたい絵本リストをご紹介。
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子どもも大人もわくわくしてしまうクリスマスシーズン。街には美しく飾られたツリーが現れ、見慣れた街路樹にもイルミネーションが灯り、思わず華やいだ気持ちになってしまいますよね。
こちらの記事では、そんなクリスマスシーズンにぴったりな絵本を10作品、読者の感想とともにご紹介します。
クリスマスといえば、華やかに飾られたクリスマスツリーに、サンタさんからのプレゼントや、おいしそうな料理にケーキ……。子どもたちが思い描く「クリスマス」の雰囲気を心ゆくまで味わえる絵本をご紹介します。
『クリスマスの三つのおくりもの』は、『はじめてのおつかい』や『こんとあき』などの絵本で知られる、林明子さんのクリスマス絵本3冊セットです。登場するのは、かすみちゃん、もっくん、れいちゃんの3きょうだい。クリスマスを楽しむ3人に、それぞれ不思議なできごとが起こります。

『ふたつのいちご』では、クリスマスケーキにのせるいちごを探しに行ったかすみちゃんが、うさぎの家族と出会い、『ズボンのクリスマス』では、出かける支度をしないもっくんにしびれを切らしたズボンが、勝手に外に飛び出してしまいます。そして、『サンタクロースとれいちゃん』では、末っ子のれいちゃんがサンタクロースに出会います!

3才の娘のクリスマスプレゼントにしました。本のサイズが小さいので愛着がわいた様子。お気に入りのかばんに入れて持ち歩いていました。購入してから1年。この本を見ながら今年のサンタさんを待ちわびているようです。(お子さん:4才)
林明子さんの絵をそばにおける素敵な絵本です。3部作の中でも、娘は特に『サンタクロースとれいちゃん』が好きでした。サンタさんの優しさを感じられるようです。大切に、カバンに入れて持ち歩いていた絵本です。
小さい子どもの手におさまる可愛らしいサイズの絵本は、クリスマスプレゼントにもぴったりです。
スロヴァキアに暮らす絵本作家の降矢ななさんが、日本の子どもたちにも本場のクリスマスマーケットの楽しさを伝えたい、という思いで描いた絵本『クリスマスマーケット──ちいさなクロのおはなし』。子犬のクロがクリスマスマーケットで出会ったのは、ぬいぐるみの犬「スノゥ」を連れた女の子。クロはスノゥが気になる様子で……
寝る前に子どもたちに読み語ると、小学生の息子は「最後はどうなるのかな」とハラハラしていました。幼稚園の娘は、自分でも声に出して何度も読むようになり、お気に入りの1冊となったようです。私にとっても、好きなお話がまたひとつ増え、子どもたちとのほっこりした時間を過ごせたことが、最高のクリスマスプレゼントになりました。(お子さん:小学生・5才)
スロヴァキアのクリスマスマーケットに私も立っているような感覚で読んだ絵本です。スロヴァキアに暮らしている降矢さんだからこそ描ける雰囲気なのでしょう。何故か懐かしい風景、マーケットの賑わい、オレンジ色の光……クリスマスを迎える喜びが伝わってきます。ちいさなクロがなーちゃんを追う場面はハラハラドキドキ。ハッピーエンドに胸をなでおろしました。プレゼントしたい絵本です。

あたたかい雰囲気で描かれるクリスマスマーケットの様子は、見ているだけでわくわくしてきます。絵本を読んだら、実際にクリスマスマーケットに足を運んでみるのも楽しそうですね。
『こねこのウィンクルとクリスマスツリー』は、きれいに飾り付けられたクリスマスツリーが目を引く1冊。
初めて見るクリスマスツリーに興味津々な子猫のウィンクルは、母さん猫に止められていたのに、夜中にこっそりクリスマスツリーにのぼってしまい……
孫へのクリスマスプレゼントに贈りました。好奇心が旺盛で、少しいたずら好きな女の子にぴったりの、きれいな心温まる内容でした。おしゃれな絵の美しさも彼女を楽しませたことでしょう。(お子さん:4才)
『こすずめのぼうけん』が大好きで、同じ作者 ルース・エインズワースさんのおはなしを見つけ、嬉しくなりました。そして、クリスマスにぴったりのお話と絵。すっかり絵本の中に入り込みました。妖精のお人形が魔法のつえに怒っているシーンがかわいくて愉快でした。(お子さん:2才)

お話を書いたのは、『こすずめのぼうけん』などで知られるイギリスの作家 ルース・エインズワース。好奇心旺盛なウィンクルに命を吹き込んだ、さとうゆうすけさんの濃密で美しい絵とともにお楽しみください。
クリスマスが近づいてくると、子どもたちはそわそわ……。サンタさんに手紙を書いて、クリスマスイブを今か今かと待ちわびている子も多いのではないでしょうか。
サンタさんを待つ子どもたちといっしょに楽しみたいのが、サンタさんが出てくる絵本。赤い帽子に赤い服、豊かな白いひげをたくわえた、優しげでふくよかなおじいさん、というイメージのサンタさんですが、ここでは個性豊かなサンタさんをご紹介します。
絵本『サンタさん』は、たったひとりにプレゼントを届けるサンタさんが主人公。春の終わりに羊の毛を刈ったサンタさんは、「このフワフワの毛で、はなちゃんのマフラーを作ろう」と決め、冬までかけてじっくりマフラーを編みました。クリスマスの日、きれいに包んだマフラーを持って、はなちゃんの家を目指します。
すべての絵が刺繍で、とってもとっても素敵な絵本です。長い時間をかけてマフラーを編んでいることが、サンタさんの着ているものや、窓の外の木の葉の色の変化であらわされていたり、ディテールに感嘆します。(お子さん:1才)
サンタさんがひとりの女の子のために届ける様子がわかりやすく描かれており、心がとても温まった。何度もクリスマスの前に読んであげたいと思う。(お子さん:4才)

絵は、人物から建物まで、すべてあたたかみのある刺繍で描かれていて、眺めているだけで幸せな気持ちになる1冊です。
「ぐりとぐら」シリーズにも、実はサンタさんが登場する絵本があるのをご存じでしたか? 『ぐりとぐらのおきゃくさま』では、野ねずみのぐりとぐらが森の中で大きな足跡を見つけ、それを追っていきます。たどり着いたのは、なんと自分たちの家。玄関には大きな長靴、壁には真っ赤なオーバーやマフラーがかかっていて……
母が孫のために購入してくれて、本人もとても気に入っています。足跡や身につけるものから、次第に誰かわかっていく感じがドキドキするようです。サンタのおじいさんのケーキが出てくると、とても嬉しそうです。最後皆でパーティーしているところも好きなようです。(お子さん:3才)
クリスマスがなんとなくわかるようになってきた娘に読みました。ぐりとぐらのおうちに突然やってきて、ケーキをプレゼントしてくれてあっという間にいなくなってしまうサンタクロース。この本でも子どもにとって不思議な存在であるサンタクロースが、やっぱりとても不思議な存在として描かれていたのが良かったです。(お子さん:2才)

大きなケーキは、ぐりとぐらのカステラに負けず劣らず魅力的! 腕まくりをしてケーキを作っていたおじいさんが実は……という展開に、子どもたちもわくわくすること間違いなしの作品です。

誰もが思い描く「サンタさん」が表紙に大きく描かれた『さむがりやのサンタ』。開いてみると……コミック仕立てで描かれるのは、なんとも人間くさいサンタの姿です。「やれやれまたクリスマスか!」と目覚めたサンタは、寒さに愚痴をこぼし、煙突に文句を言いながらも、町の子どもたちにプレゼントを配ります。
毎晩読んでも飽きることがありません。サンタさんのマイペースな生活ぶりに、笑いながら子どもがお話を聞いてくれます。絵のタッチも好きです。これからも大切にしたい本です。(お子さん:5才)
幼い頃から何度も何度も読んでもらった絵本です。人間らしい、わがままなサンタさん。トナカイとソリを出す場面、最後に自分にメリークリスマス、この場面が一番好き。すぐ足もとに居てくれる犬と猫、そして暖炉。こんな家庭に憧れています。ずうっと読みたい絵本です。

皮肉屋だけれど、実はやさしいサンタ。大人は、読んであげながらちょっと共感してしまいそうなお話です。
最後にご紹介するのは、心にしみる、静かなクリスマス絵本。
クリスマスは、にぎやかで楽しいお祝いの日である一方、ひとりで大切に味わったり、小さな奇跡が起こったりする日でもあります。そんな、穏やかであたたかいクリスマス絵本を3冊、ご紹介します。
『ゆうびんやのくまさん』は、郵便屋さんとして働くくまさんの、クリスマス・イブの1日を描いた絵本です。
クリスマス・イブのくまさんは、大忙し! 朝早くから丁寧に配達の仕事をし、すべて終えるとおうちに帰ってごはんを食べ、ベッドでゆっくり休みます。もちろん、クリスマスの小包がくまさんのもとにも届いていますが、それは明日の朝のお楽しみ……
子どもたちの大好きな「くまさん」シリーズ。「ゆうびんやのくまさん」があるとは、知りませんでした。クリスマスも大好きなテーマなので、子どもたちもお話の中に、ぐんぐん引き込まれていました。(お子さん:3才)
保育士を20年していて、昔から大好きなシリーズです。3才になった娘にそろそろ…と読んでみるとたちまち気に入り「もう1回!」とくり返し楽しんでいます。絵のかわいさ、優しい雰囲気に、読むたびに自分も癒されます。(お子さん:3才)

このシリーズには、ほかにも『パンやのくまさん』、『せきたんやのくまさん』など、いろいろな仕事をするくまさんの絵本があります。丁寧に仕事をし、毎日を大切に過ごすくまさんの姿を見ていると、こちらも心が安らいでくるようです。
『ちいさなもみのき』は、もみの木と男の子の静かな交流を描いた美しい1冊です。
森の中の小さなもみの木は、ある日男の人に掘り出され、病気で歩けない男の子の家に運ばれました。男の子と一緒にクリスマスを楽しむと、もみの木はまた森へと返されます。そうやって何度もクリスマスを過ごしていましたが、ある冬、いつになっても男の人が現れません。男の子のことが心配でたまらないもみの木のところに……
雪がふった日に読もうと、大事にとっておいた本。1日雪がふり、2階の窓から雪がつもった木の枝をながめながら読みました。みどり、青、赤、黒だけで表現される世界。1ページ目から惹きつけられます。

そぎ落とされたシンプルな言葉に、抑えた色数で描かれた静謐な絵。読んだ後は、じんわりとあたたかい気持ちになるクリスマス絵本です。
クリスマスを舞台にした絵本『くろうまブランキー』は、『ぐるんぱのようちえん』などで知られる堀内誠一さんのデビュー作。
年を取った黒馬ブランキーは、主人に力いっぱいたたかれて、道に倒れてしまいます。その晩、天から降りてきたサンタクロースに「わたしについてこないかな」と優しく声をかけられて、銀のそりを引くことに。仕事を終えると、あたたかい暖炉のそばで眠るのです。
以前幼稚園で先生をしていたときは、毎年クリスマス時期になるとこの本を読んでいました。今は我が子に読んでいます。読んでいる自分もウルウルとくるこの絵本。幼稚園の子どもたちも、そして我が子も、食い入るようにまっすぐ見つめる目が印象に残ります。

サンタクロースの優しいひと言で、幸せな暮らしを手に入れたブランキー。自分の家に向かうサンタさんのそりを、ブランキーがひいているかもしれない……と、想像が膨らむ1冊です。
「そもそもクリスマスってなあに?」と子どもに聞かれたら、こちらの絵本『クリスマスのものがたり』を。スイスの画家 フェリクス・ホフマンが、イエス・キリスト誕生の物語を真正面から描いた1冊です。

この作品は、日本の子どもたちのために描き下ろされた作品で、ホフマン最後の絵本でもあります。イエスの誕生をめぐる劇的な物語を、改めてじっくりと味わってみるのはいかがでしょうか。
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