2026年に創刊 70 周年を迎えた、月刊絵本「こどものとも」。
何十年も読み継がれ、ロングセラーと呼ばれる絵本の中には、『ぐりとぐら』『おおきなかぶ』『はじめてのおつかい』をはじめ、「こどものとも」から生まれた作品がたくさんあることを、ご存じでしょうか?
こちらでは、月刊絵本「こどものとも」の 70 年の歴史をひもときながら、その魅力をご紹介します。
「こどものとも」は、5・6才の子どもたちに向けて、毎月1冊、新作の絵本をお届けする月刊絵本です。「子どもたちが心から楽しめる」ことを第一に考え、作家・画家の方々が心を砕いて作り上げた絵本を、毎月刊行しています。

「こどものとも」が創刊されたのは、1956年。
当時 29 才の若い父親でもあった編集者・松居直(まつい ただし)が編集長となり、「これまでにない絵本を子どもたちに」という思いで刊行が始まりました。
当時日本で刊行されていた子ども向けの月刊誌の多くは、複数の内容で構成された絵雑誌が中心で、保育教材としての役割が色濃いものでした。そのため、月刊誌でありながら、ひとつのお話だけで1冊を成している「こどものとも」は、画期的なシリーズだったのです。
創刊当初から「こどものとも」が大切にしてきたのは、「子どもたちが心から楽しめる絵本」を作ること。
日本では大正時代以降、子ども向けの絵を専門とする「童画家」と呼ばれる人々が活躍してきました。しかし、時代の変遷とともに、子ども向けの絵の画一化が進んでいることを危惧した編集長の松居は、大人が思う「子どもらしい絵」ではなく、物語る力をもった絵が必要だと考えます。
松居は、日本画や洋画の展覧会に足しげく通い、自ら画家を選んでいきました。

創刊号『ビップとちょうちょう』は、詩人の与田準一さんが文章を、日本画家の堀文子さんが絵を手掛けています。学生時代から展覧会に足を運び、その作品に出会っていた松居は、「本当に美しい」と感じる堀文子さんを創刊号の画家に選びました。
しかし、表紙の絵が、当時の子ども向けの本としては珍しい黒い背景だったため、書店の方や、園の先生から「どうしてこんな暗い本を出したのですか?」と聞かれることもあったといいます。一方で、「こういうものを期待して待っていたんです」という声も届き、松居や編集部のメンバーに力を与えました。
異なる分野で活躍していた人々を絵本の世界に招き入れたのも、「こどものとも」の大きな特徴です。
グラフィックアーティストとして雑誌「an・an」「BRUTUS」のロゴ制作やアートディレクションを手掛けた堀内誠一さん、漫画家として活動していた長新太さん、高名な彫刻家であった佐藤忠良さん、工学博士でもあった加古里子さん、保育士をしていた中川李枝子さん……いずれも長く愛されている絵本の作者ですが、もとは異なる分野で活躍されていた方です。
子どもが喜ぶことを第一に考え、従来の枠組みにとらわれず、作者を探していく。この姿勢は受け継がれ、「こどものとも」のラインナップには今も、デザイナー、造形作家、ラッパーをはじめ、幅広いジャンルの方がその名を連ねています。
絵本の世界に足を踏み入れた松居を支えたのは、瀬田貞二さんや石井桃子さんをはじめとする児童文学界の先輩たち、そして保育の現場で働く先生方や、家庭文庫(私設の図書館)を開いていた方々とのつながりでした。そうしたかかわりの中で多くを学び、さまざまな着想を得ながら、松居は「こどものとも」で新たな挑戦を始めます。
1961年に刊行した『とらっく とらっく とらっく』は、日本の創作絵本としては初めての「横判(横長の判型)・横書き」の絵本でした。それまでは、「縦判・縦書き」が基本でした。

この大胆な挑戦のきっかけとなったものが、同年に刊行した翻訳絵本『100まんびきのねこ』。

ちなみに、この絵本を松居に紹介したのは、『ちいさなうさこちゃん』シリーズの翻訳などで知られる石井桃子さんです。石井さんは、自身が開いた「かつら文庫」で、海外のさまざまな本を翻訳し、子どもたちに読んでいました。中でも、『100まんびきのねこ』は子どもたちに大人気のものでした。
しかしながら、本の形が横判ということで、どこからも翻訳出版されていなかったのです。松居は原書の「横判・横書き」のスタイルを生かしつつ、福音館で初めての翻訳絵本として『100まんびきのねこ』を刊行しました。
その経験を通して、横判は風景の広がりやダイナミックな動きを表現しやすいことに気づいた松居は、オリジナルの創作絵本にも横判を採用することにしたのです。
そうして、日本初の横判・横書きの創作絵本『とらっく とらっく とらっく』は生まれました。
創刊以来 70年にわたって、毎月、新作の絵本をお届けしてきた「こどものとも」。この間、より幅広い年齢の子どもたちに物語の世界を楽しんでもらえるよう、対象年齢を区分する形で、「こどものとも年中向き」「こどものとも年少版」「こどものとも0.1.2.」の3誌が加わりました。現在は「こどものとも」シリーズの4誌で、年間 48 冊の絵本を刊行しています。
──次の 70 年をめざして。「こどものとも」は、これからも「子どもたちが心から楽しめる絵本」を届けつづけます。
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月刊絵本「こどものとも」シリーズ
▷ 月刊絵本「こどものとも」
▷ 月刊絵本「こどものとも年中向き」
▷ 月刊絵本「こどものとも年少版」
▷ 月刊絵本「こどものとも0.1.2. 」
*「こどものとも年中向き」には一部再販作品が含まれます
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