こどものとも70周年記念

福音館社員が選ぶ 「こどものとも」わたしの1冊|『いそがしいよる』にあこがれて(編集部HY)

絵本 |
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月刊絵本「こどものとも」が、2026年、創刊70周年を迎えました。
小さい頃に読んでもらったり、入社して出会ったり、子どもに読み聞かせたり……これまでに刊行された「こどものとも」から、福音館社員が思い入れのある1冊をご紹介します。

第2回は入社9年目、たくさんのふしぎ編集部・HYの1冊。

『いそがしいよる』にあこがれて 

たくさんのふしぎ編集部 HY
 

子どものころ、夜になると「はやく寝なさい」と言われるのが嫌だった。まだ眠くないのに。どうして子どもだけ寝なきゃいけないの。自分が寝た後の世界ではきっと面白いことがあるにちがいない。それを自分だけ見逃すなんて耐えがたい。そんな気持ちで、少しでも寝る時間を先延ばしにするために、母親に「絵本よんで」「なんかお話して」とせがむ毎日。その中で出会ったのが『いそがしいよる』だった。

ある夜、ばばばあちゃんはきれいな星空を眺めるために外にゆりいすを運びだす。そうだ、ベッドもあったほうが快適だ。寝る前に飲むお茶も、夜中におなかがすくかもしれないから冷蔵庫も……。思いつくままに、家じゅうのものを次から次へと引っ張り出していき、何もかも運び終えたころには時計の針は午前4時半をさしている。星空のことなどすっかり忘れて「いそがしいよる」をやりきったばばばあちゃん。その満足げな表情といったら!

初めて読んでもらったとき、こんなに楽しい夜の過ごし方があるなんて! と興奮したのをよく覚えている。いすもテーブルも冷蔵庫も、本に出てくるのはどれも日常で見慣れたものばかり。それが夜中、家の外に持ち出されるだけでとたんに魅力的に見えるのが魔法のようだった。母親は寝かしつけるために絵本を読み聞かせたはずなのに、「やっぱりはやく寝るのはもったいない」と娘の目はさえていくいっぽう。幼い私は、夜を全力で楽しむばばばあちゃんにすっかり魅了されてしまったのだった。ばばばあちゃんに憧れて、自宅の小さい庭に自分のお気に入りの品を広げて『いそがしいよる』の真似ごともしてみたけれど、やっぱり昼間ではいまいち気分が盛り上がらなかった気がする。

大人になった今、ばばばあちゃんには遠く及ばないが、私もときどき、突然思いついたよくわからないことに熱中してしまう夜がある。たとえば本棚の本を片っ端から出しては並べ直したり。世界地図をつぶさに見ながら行く予定のない旅行計画を立てたり。どうしたわけか深夜に大量の餃子を包んだこともある。翌朝にはたいてい、なんであんな意味不明なことに一生懸命になっちゃったんだろうと、後悔しながら眠い目をこするはめになるのだけれど、そういう時には『いそがしいよる』を思い出すことにしている。ただやりたいからやる、それがいちばん楽しいんだよ。意味のあることや役に立つことだけをやっていたらきゅうくつだからね。ばばばあちゃんならそんなふうに笑ってくれるかなあと思うと、ちょっと元気になるのである。

『いそがしいよる』 さとうわきこ さく・え

星がきれいな夜、ばばばあちゃんは家の中にいるのがもったいなくて、ゆりいすを外に持ちだしてお星様をみていました。いっそのこと外で寝てしまおう、そう考えたばばばあちやんは、ベッド、毛布、枕、それからお茶の道具、テーブルやレンジ、しまいには家のものを全部持ちだしてしまいます。人気シリーズ「ばばばあちゃんの絵本」第1作目。

*「こどものとも年中向き」1981年9月号
* 現在は「ばばばあちゃんの絵本」シリーズとして刊行


『いそがしいよる』についてはこちら
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