こどもに聞かせる 一日一話

『うさぎの ひっこし』小風さち 作/柳生まち子 絵 #読み聞かせ

子育て |
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2025年3月に休刊となった雑誌「母の友」に、「こどもに聞かせる 一日一話」という人気企画がありました。子どもにさっと読んであげられる短いお話を、一挙にまとめて掲載するものです。

その「一日一話」を、「とものま」で再開します。
季節ごとに7話ずつ、とびっきりのお話をお届けしていきます。

うさぎの ひっこし

小風さち 作
柳生まち子 絵

あるひ、うさぎは、はらっぱにねころぶと、そらをみあげて、かんがえました。
「たかいたかい、やまのちかくで、くらすって、どんなきもちかしら」
うさぎはおきて、せのびして、とおくをながめて、おもいました。
「あおいあおい、うみのそばで、くらすって、どんなかんじが、するものかしら」
かぜが、さらさら、ふいています。
くもが、ふーふー、ながれてゆきます。
「きめた。わたし、ひっこし、しよう」
うさぎは、はっきり、いいました。

そうときめたら、にづくり、にづくり。
うさぎは、とっとと、はしってかえると、リュックサックをだしました。
「だいじなものだけ、もっていこう。ほんとうに、だいじなものだけ」
うさぎは、へやをみまわすと、いちばん、おきにいりのふくと、いちばん、おきにいりのサンダルを、リュックサックにいれました。それから、だいすきな、はなもようのパジャマと、だいすきなスリッパをいれました。それから、ぼうしと、てぶくろと、みずぎと、サングラスをいれました。それから、
「おっと、わすれるところ」
と、ハブラシに、タオルに、せっけんに、ちいさなみみかざりも、いれました。
「できた!」
うさぎは、リュックサックを、せおいました。さあ、やまのちかくかうみのそばへ、ひっこしです!

と、そのときです。うさぎは、はっと、たちどまりました。
「だけど、おなかがすいたら、どうするの?」
うさぎは、おさらをいちまいに、コップをいっこ、スプーンにフォーク、おなべに、フライパン、しおに、さとうをいれました。それから、リュックサックの、みぎのポケットにイチゴのジャム、ひだりのポケットにハチミツを、ぎゅっ、ぎゅっと、おしこみました。
「できた!」
うさぎは、よいしょと、リュックサックを、せおいました。リュックサックは、ぎっちぎち。さあ、やまのちかくかうみのそばへ、ひっこしです!

と、そのときです。うさぎはまた、たちどまりました。
「だけど、よる、ねるときは、どうするの?」
うさぎは、もうふと、まくらと、めざましどけいを、ぐるぐるしばって、リュックサックにのせました。
「これでよし。だいじなものは、ぜんぶもったわ」
うさぎは、よいしょこらしょと、リュックサックをせおいました。さあ、やまのちかくかうみのそばへ、ひっこしです!

ところが、いよいよしゅっぱつの、そのときです。
「たいへん! わたし、わすれてる」
うさぎは、ピタッと、たちどまりました。
「ほんとうに、ほんとうに、だいじなもの」
うさぎは、あおいはながさくタネと、きいろいはながさくタネと、ピンクのはながさくタネを、だいじに、ふくろにいれました。ニンジンのタネと、パセリのタネも、もちました。
「どこにいったって、きれいなはなは、さかせなくっちゃ。おいしいやさいを、つくらなくっちゃ」
さあ、やまのちかくかうみのそばの、あたらしいほらあなに、ひっこしです!

 (おしまい)

絵・柳生まち子

 
 

 
子どもと一緒に挿絵を見ながらお楽しみになる方は、こちらからPDFのファイルをダウンロードの上、出力してお楽しみください。 ※個人利用に限ります。
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