2025年3月に休刊となった雑誌「母の友」に「こどもに聞かせる 一日一話」という人気企画がありました。子どもにさっと読んであげられる短いお話を一挙にまとめて掲載するものです。その「一日一話」を2025年12月から「とものま」で再開しました。季節ごとに7話ずつ、とびっきりのお話をお届けします。
えのもとえつこ 文 山﨑 香文子 絵
あるところに、おばあさんと男の子がいました。二人は、鳥小屋でニワトリを飼っていました。おばあさんは、このニワトリが産んだ卵で、おいしいホットケーキを焼くのが上手でした。
ある日、男の子が言いました。
「おばあちゃん! ホットケーキが食べたいの。焼いてちょうだい」
ところがおばあさんがホットケーキを焼こうとすると、卵が一つも残っていませんでした。そこで、男の子は卵を取りに鳥小屋に行きました。
男の子は鳥小屋の戸を開けました。その時、犬が飛びつき、男の子はしりもちをつきました。ニワトリたちは、開いていた戸口から外に出てしまいました。男の子は犬を叱り、ニワトリを小屋にもどすように言いました。
でも、犬は言うことを聞きませんでした。

男の子は猫に言いました。
「ぼくは卵を集めようとした。すると犬がぼくに飛びつき、ニワトリは逃げちゃった。でも、犬はニワトリを小屋にもどさなかった。だから犬をひっかいてよ!」
でも、猫は犬をひっかきませんでした。
男の子はラッパのところに行って言いました。
「ぼくは卵を集めようとした。すると犬がぼくに飛びつき、ニワトリは逃げちゃった。猫が犬をひっかかないから、犬はニワトリを小屋にもどさない。だからラッパくん、大きな音で猫をおどかしてよ!」
でも、ラッパは大きな音を出しませんでした。
男の子は椅子のところに行って言いました。
「ぼくは卵を集めようとした。すると犬がぼくに飛びつき、ニワトリは逃げちゃった。ラッパが猫をおどかさないから、猫は犬をひっかかない。それで犬はニワトリを小屋にもどさない。だから椅子くん、ラッパを脚で踏みつけてよ!」
でも、椅子はラッパを踏みつけませんでした。
男の子は火のところに行って言いました。
「ぼくは卵を集めようとした。すると犬がぼくに飛びつき、ニワトリは逃げちゃった。椅子がラッパを踏みつけないから、ラッパは猫をおどかさない。猫が犬をひっかかないから、犬はニワトリを小屋にもどさない。だから、椅子を焼いてよ」
でも、火は椅子を焼きませんでした。
そこで、男の子はジョウロに言いました。
「ぼくは卵を集めようとした。すると犬がぼくに飛びつき、ニワトリは逃げちゃった。火が椅子を焼かないから、椅子はラッパを踏みつけない。ラッパが猫をおどかさないから、猫は犬をひっかかない。それで犬はニワトリを小屋にもどさない。だからジョウロさん、おなかの水で火を消してよ」
すると、ジョウロが言いました。
「私のおなかのなかは、からっぽだ。まず、水を私のおなかに入れておくれ」
そこで男の子は、ジョウロに水を入れました。すると、ジョウロは火を消そうとし、火は椅子を燃やそうとし、椅子はラッパを踏みつけようとし、ラッパは、大きな音で猫をおどかそうとし、猫は犬をひっかこうとし、犬はニワトリを鳥小屋に追い込みました。
鳥小屋にもどると、ニワトリはさっそく卵を産みました。男の子は卵を集めて、おばあさんのところに持っていきました。おばあさんはこの産みたての卵を使って、ホットケーキを焼いてくれました。それは、こんがりとキツネ色に焼けた、フワフワのとっても美味しいホットケーキでした。

(おしまい)
◆子どもと一緒に挿絵を見ながらお楽しみになる方は、こちらからPDFのファイルをダウンロードの上、出力してお楽しみください。 ※個人利用に限ります。

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