こどもに聞かせる 一日一話

『夏ちゃん』大原悦子 作 #読み聞かせ

子育て |
アイキャッチ画像
2025年3月に休刊となった雑誌「母の友」に「こどもに聞かせる 一日一話」という人気企画がありました。子どもにさっと読んであげられる短いお話を一挙にまとめて掲載するものです。その「一日一話」を、2025年12月から「とものま」で再開しました。季節ごとに7話ずつ、とびっきりのお話をお届けします。

夏ちゃん

大原 悦子 文  髙田 知香 絵

6歳の春ちゃんには、3歳の妹、夏ちゃんがいます。

夏ちゃんは、こわがりです。雷やおばけがこわいのは、春ちゃんも一緒ですが、夏ちゃんは雷やおばけもびっくりするような大きな声で「こわーい、こわーい」とさわぎます。

夏ちゃんはブランコもこわがります。ブランコにのったまま、動きません。「ブランコはこぐんだよ」と春ちゃんが揺らすと、大さわぎ。すべり台は、階段の途中で「こわーい」と止まってしまうので、一度もすべったことがありません。

それに、夏ちゃんは泣き虫です。「お腹すいた~」と言って泣くし、「アイスクリームをそんなに食べちゃダメ」とママに怒られて泣くし。熱を出してお医者さんに行ったときも、「おくちアーンして」って言われただけで大泣きして、お医者さんの顔をキックしちゃいました。

夏ちゃんはわがままです。動物園はクサいから嫌い。遊園地はうるさいから嫌い。プールはお顔に水がかかるから嫌い。春ちゃんは動物園も遊園地もプールも大好きなのに、夏ちゃんのせいであまり連れて行ってもらえません。

春ちゃんがお友だちと遊んでいると、夏ちゃんは必ず「夏ちゃんも入れてー」と入ってきます。お友だちがちょっとイヤそうな顔をするから、「夏ちゃんはダメ。あっち行って」と春ちゃんが言うと、「一緒に遊びたい~」と、手足をバタバタさせてまた大声で泣くのです。

そんな夏ちゃんなのに、大人は夏ちゃんを見ると「かわいいわね~」とニコニコ顔で言います。春ちゃんは「しっかりしたおねえちゃんね」とほめられるけど、「かわいい」とは言われません。いつもわがままで泣いてばかりなのに、夏ちゃんはずるい、と春ちゃんは思います。

春ちゃんは、本当は優しいおにいちゃんがほしかったのです。おにいちゃんなら、きっと泣かないし、わがままも言わないと思うから。野球とかサッカーをやっている、かっこいいおにいちゃんがいいな。そう思って、クリスマスの前に「おにいちゃんがほしいです」とサンタさんに手紙を書きました。でも、パパとママから「サンタさんでも、それは無理だよ」と言われてしまいました。

ある日、夏ちゃんは親せきのおばさんから「夏ちゃんのお洋服、かわいいわね」と言われました。

「これ、おねえちゃんが着ていた服なの」と夏ちゃんが得意そうに話しているのが春ちゃんにも聞こえました。春ちゃんが着られなくなったお洋服を、夏ちゃんはいつもうれしそうに着ています。「あら~。夏ちゃんはおねえちゃんが好きなのね」と、おばさんが言うと、夏ちゃんは「うん! 夏ちゃんはおねえちゃんがだ──い好きなの!」と大きな声でこたえました。

春ちゃんは少しドキドキしました。ニコニコしている夏ちゃんを見て、ちょっとだけ「かわいい」と思いました。そして、おにいちゃんじゃなくて妹でもいいかな、と思ったのでした。

 (おしまい)
 

 

 
◆子どもと一緒に挿絵を見ながらお楽しみになる方は、こちらからPDFのファイルをダウンロードの上、出力してお楽しみください。 ※個人利用に限ります。

この記事をシェアする