絵本のとびらを開いたら

《絵本のとびらを開いたら》第5回「子どもが絵本と出会うために」

絵本 |
アイキャッチ画像
図書館の司書として長く子どもたちに本を手渡してきた伊藤明美さんに、絵本の魅力や楽しみ方について幅広く語っていただく連載です。絵本の奥深い世界をのぞいてみましょう!

第5回「子どもが絵本と出会うために」

3冊の “たけのこ” の絵本

子どもが絵本と出会うためには、子どもの身近に絵本があることが大切です。わたしは司書として勤める保育園で、子どもが何かに興味を持ったら、なるべくその時を逃さず、関連する絵本を展示したり読んだりしています。

4月のある日、保育園の先生がご実家でとれた見事な たけのこを2本、園の玄関に置かれました。

子どもたちは「なにこれ?」「きのこ?」「さわってもいい?」と興味津々。さわりながら、「ざらざらしてる」「ブツブツがある」と言っていましたが、さなちゃんが、「知ってる! たけのこだよ」と言うと、他の子たちも、「たけのこ知ってる」「おばあちゃんちで食べた たけのこご飯 おいしかった」と言い出しました。

こんなふうに、目で見たり、手でさわったり、においをかいだり、五感で実物を知るのはとても大切です。それが絵本に結びつけられれば、さらに興味が広がります。

わたしは、絵本コーナーから本を3冊持ってきて、たけのこの横に置きました。

『たけのこほり』
(浜田桂子 作 /「かがくのとも」2004年5月号)

1冊目『たけのこほり』は、子どもたちが裏山のたけやぶで、たけのこを掘り出します。掘っても掘ってもびくともしないそのわけは、地下茎でつながっているから。

 
とれた たけのこは、たけのこご飯にしますが、食べるだけではありません。「たけのこの かわ はがして あそぼう」と、むいた たけのこの皮をずらりと並べた絵があります。

これは面白いと、5歳児クラスでたけのこを1本、実際にむいてみました。すると、ざらざらした皮はだんだん薄くなり、最後は半透明に近いやわらかな皮が 54 枚。色のグラデーションの美しいこと! たけのこが、たくさんの皮に大事に守られていることがわかりました。もちろん、たけのこはおいしくゆでました。

『ふしぎなたけのこ』(松野正子 作 瀬川康男 絵)

2冊目『ふしぎなたけのこ』は、その5歳児クラスに読みました。

山奥の村の少年たろは、たけのこを掘りにたけやぶに行きました。たろが たけのこに上着をかけたとたん、その たけのこは急に伸び出しました。思わず たけのこに飛びついたたろ。しかし、たけのこは空に向かってぐんぐん伸び続けます。

次のページで画面は縦になり、雲を突き破って空高く伸びた たけのこの先端に、たろがしがみついています。(わあ! と驚く子どもたちの声)

たろのとうさんたちが たけのこに斧をいれると、たけのこは、倒れ始めます。

画面はまた横になり、たけのこが見開きいっぱい、斜めに倒れていく様が描かれます。
(ええー! と子どもたちの声)

地面に倒れた たけのこに沿って、とうさんたちは走り出します。いくつもの林や山を越えてたどり着いた砂浜に、たろが気を失って倒れていました。とうさんが大きな池の水を両手ですくって、たろにかけると、たろは息を吹き返します。ところが、その水のしおっからいこと。池と思ったのは、海でした。

「貝があるよ」と見つけたのは、ゆあちゃんです。画面には、貝をありがたそうに手にした女たちや、海水をのんでしかめっ面をする男たちなど、たくさんの人物が表情豊かに描かれています。

海に来る道が見つかったと喜ぶ大人たちに向かって、たろは聞きます。
「かいって なんだ? こんぶって なんだ? さかなって、くえるんか?」

それを聞いた けんたくんは、思わずふきだしました。

魚を釣り、こんぶや貝をひろい、みんなは山を越え、林を越え、たけのこに沿って村に帰りました。たけのこは村と海を結ぶ道しるべとなり、山奥の人々は繁盛して幸せになりました。

昔話風の奇想天外なストーリーと、ダイナミックな絵がマッチした絵本です。

「これ、おもしろかった、たけのこってすごいね。“ さかなって うまいんか? ” なんて、たろ、食べたことなかったんだね」と、けんたくんは言いました。

『たけのこぐんぐん』
(福知伸夫 作 /「ちいさなかがくのとも」2017年5月号)

3冊目『たけのこぐんぐん』は、4歳児クラスに読みました。

お母さんと男の子がたけやぶで、ちいさな たけのこを見つけます。男の子が毎日たけやぶに行く度に、たけのこは背が高くなっています。

毎ページ、「たけのこ ぐんぐん のーびーろ」と繰り返され、子どもたちも一緒に言い出しました。

たけのこがおへそより高くなった場面では「あ、また大きくなった」と声があがります。

そしてとうとう たけのこは、男の子の背を抜きます。たけのこは大人の竹になりつつありました。

「あれ、あしのしたに なにか ある。おちばが すこし もりあがっている。なんだろう?」
(たけのこだよ! と子どもたち)

そう、あかちゃんの たけのこがはえていました。男の子はあかちゃんたけのこに、「たけのこ ぐんぐん のーびーろ」と言います。男の子が 小さな たけのこを応援する気持ちが伝わり、子どもたちも「たけのこ ぐんぐん のーびーろ」と口ずさみました。裏表紙の男の子をまねて、頭の上で両手を合わせたポーズを取っている子もいましたよ。

この絵本は月刊絵本「ちいさなかがくのとも」の1冊で、折り込み付録に竹についてのくわしい解説が書いてあります。それによると、かつて日本で測定された たけのこの1日の伸長量の最高記録は、モウソウチクで 120 センチ。1時間に5センチ、10 分間で1センチ弱と、目に見えるような伸び方をしていたとのこと。ただし、このような勢いで たけのこの先端が伸びるのは、高さが 10 メートルくらいまで伸びたときだとありました。

『ふしぎなたけのこ』で、たろがしがみついた たけのこも、すさまじい勢いで伸びていきました。おはなしですから誇張されているとはいえ、その背景には、竹が他の植物にはない急激な伸び方をする植物だという事実があるのですね。

保育園の たけのこの横に置いた3冊の絵本は、読んであげた子どもたちから宣伝され、お迎えに来たお母さんやお父さんたちも「へええ」と手に取って見ることになりました。

子どもが絵本と出会うために

子どもたちは、日々新しいものに出会い、興味の対象も移ろいますが、そこに本が加わると、ひとつひとつの事柄が、より鮮明に印象づけられます。

子どもの興味を、そうそう絵本に結びつけられないと思われるかもしれませんが、そんな時、季節や子どもの成長に沿った題材を扱った月刊絵本は、とても便利です。

保育園や幼稚園に絵本コーナーがあれば、自然に絵本を手に取るようになりますし、園での体験がより深まり、豊かになります。また、図書館に行くと、季節やテーマで絵本を展示していて、新たな絵本との出会いがあります。借りて帰って、子どもが何回も読んでほしがる本を書店で買うのも良いでしょう。子どもの身近に絵本を置き、いつでも好きなときに繰り返し楽しむことができる環境を作って、絵本に出会わせてあげてください。

 

絵本のとびらを開いたら
《新連載・絵本のとびらを開いたら》第1回「子どもをとらえて離さない絵本」
アイキャッチ画像

「絵本のとびらを開いたら」一覧はこちら▶

 

 

絵本がいいってほんと?
読み聞かせで親も生きやすくなる? 脳科学から見た絵本|東北大学加齢医学研究所 松﨑泰先生
アイキャッチ画像
えほんとわたし
絵本は最高の“遊び友だち”|俳優 美村里江さん①
アイキャッチ画像
こどものこころの保健室
《新連載・こどものこころの保健室》「児童精神科」を受診するよう園からすすめられたのですが…|精神科医・田中康雄  #子育て #発達
アイキャッチ画像