さまざまな分野で活躍中の方に、絵本との思い出やエピソードを語っていただく「絵本とわたし」。絵本にかかわるエピソードを通して、その人をもっと知ることができる、そんなインタビュー連載です。今回は、2人の娘さんと一緒に日々絵本を楽しみ、ご自身で絵本の翻訳も手掛けている、タレントの関根麻里さんにお話をうかがいました。絵本について、子育てについて、2回に分けてお届けします。
──関根さんはどんなお子さんでしたか?
好奇心旺盛で、明るくて元気な子だったそうです。遊ぶの大好き、楽しいこと大好き、おふざけ大好きでしたね(笑)。
絵本も大好きで、よく両親に読んでもらっていました。好きな絵本はくり返し読んでもらったなぁ。1日1話ずつ読めるような童話や昔話のたくさん入った本がありますよね。毎日寝る前に、それを父と一緒に読んでいました。寝る前のルーティンのような感じで、遊んだり絵本を読んでもらったりしていたのを覚えています。
──『だるまちゃんとてんぐちゃん』『せんたくかあちゃん』『いやいやえん』などの絵本がお好きだったとうかがいました。
このあたりの本は、全部読んでいますね。懐かしい! 今も全部実家にとってあるので、それを持ってきて、そのまま娘たちに読んでいます。実家に戻って、どんな絵本があったかなって探した時に、気が付けばその世界にまた入ってしまって。『せんたくかあちゃん』では、おへそが干されていたな……とか、この絵のタッチが懐かしいな、とか。『ぞうくんのさんぽ』シリーズも読んでいました。今見てもいいですね。
──絵本や物語がお好きな関根さん。ご自身でも絵本の翻訳を手掛けられていますが、実際に絵本作りに携わってみていかがでしたか?
初めて絵本の翻訳をしたのが、『リトルレッド あたらしい あかずきんの おはなし』『ラプンツェル あたらしい かみながひめの おはなし』。その後に『パディントンの手紙』『パディントンのクリスマスの手紙』(4冊とも文化出版局)と、「ピンキッツえいごえほん」シリーズ(Jリサーチ出版)を手がけました。その前にも、英会話や英訳の仕事はあったんですけど、1冊の絵本を翻訳するっていうのは初めてだったので、とても光栄でした。
絵本には、言葉のひとつひとつに作者の思いがこもっていますよね。だから、言語が変わっても、原作の雰囲気や世界観をなるべくそのまま伝えられるように意識しました。
例えば『リトルレッド』と『ラプンツェル』の原書は、言葉がすごく少ないんです。その少ない言葉の中に、響きが面白いところがあったり、繰り返すことで効果が出てくるフレーズがあったりするので、それは日本語にしてもそのまま残したいと思いました。絵本の持つ音や響き、リズムを意識すると、訳すのが難しくもありつつ、そこがとても面白かったです。
──9才と5才、二人の娘さんとは、どのように絵本を楽しんでいますか?
長女に読み聞かせをしていた頃のことはよく覚えています。彼女は『ふなっしーのおはなっしー』(パルコ出版)っていう絵本にすごくハマって、お話を全部暗記してしまったんですよね。そこから徐々に、音と文字に関連があることに気づいたのか、ひらがなに興味を持つようになったんです。ボロボロになるまで何度も読んだ、思い出の絵本です。
9才の今も長女は絵本が大好きで、ベッドで次女に絵本の読み聞かせをしていると、「何読んでるの」って必ず入ってきます。そういう時、長女は字が読めるから、わたしが読んでいる上からかぶせて自分も読もうとするんですよ。そうすると次女が「ねえね、読まないで!」ってすごく怒る(笑)。わたしは、長女が読んでくれたら楽だから、「じゃあお姉ちゃん読んで」ってバトンタッチをすると、次女は「ママが読んで!」ってなるんです。
そんな5才の次女は、今まさに絵本が大好きな時期。いろんな絵本を読んでいるうちに、次女の絵本の楽しみ方が開花しているのを感じます。気に入った絵本を丸暗記したり、ひらがなを少しずつ覚えてきたり。その時のブームがあって、ひとつの絵本にはまったら、それをくり返し読むんです。そんな絵本が何冊もありました。本の世界を吸収して、日に日に世界が広がっている様子が今一番わかる時期で、見ていて面白いです。
──絵本とはどうやって出会うことが多いですか?
長女が小さい頃は、図書館や児童館でやっている読み聞かせ会に行っていました。読み聞かせ会に行くと、自分では手に取らない絵本との新しい出会いがあったり、季節や行事にかかわる絵本を通して日本の文化を感じることができたり……おはなし会はすごく好きでしたね。
わたしがよく行っていたのが、「きしゃポッポおはなし会」という、ボランティアグループの方々がやっているおはなし会。毎月足を運ぶと、「あら、こんな大きくなったのね」なんてボランティアの方々が優しく声をかけてくださるんです。赤ちゃんの時から知っているので、一緒に成長を楽しみにしてくれていて、すごく嬉しかった。行くと、スタンプとかシールをもらえるんですよ。いくつたまると鉛筆と交換とか、そういうのもあったりして、図書館に行くのを楽しみにしていました。こういうイベントは、近い世代の子たちとも会えますし、いい交流になると思います。
次女が気に入っている『バムとケロのおかいもの』(文溪堂)は、高校時代の恩師に教えてもらった1冊です。数年前に、わたしの母校で生徒たちに向けてお話をする機会があったんですが、先生がそのお礼にって言ってプレゼントしてくれたんです。先生のお子さんが小さいころに好きだったから、娘さんと読んでねって。あと、『ぎょうざが いなくなり さがしています』(講談社)は、次女が丸暗記しています。絵本がなくても、独演会のようにやっていますね(笑)。
このあたりは、わたしが子どものころはなかった絵本ですよね。『せんたくかあちゃん』や『だるまちゃんとてんぐちゃん』みたいに、自分が好きだった絵本を一緒に読むこともあれば、娘たちがいるからこそ新しく出会える絵本もある。世界が広がって楽しいんです!
──読者の方からは、育児や仕事、家事などでいっぱいいっぱいになって、読み聞かせの時間が取れない、という声も寄せられます。関根さんは、絵本の時間をどう確保していますか?
育児中って、本当に時間がないんですよね。みなさんの気持ち、よくわかります。読み聞かせも大事だけど、睡眠時間も大事じゃないですか。いっぱい寝てほしい、でも読み聞かせもしたい……毎晩のわたしの葛藤です。
わが家は絵本を読んでから寝るっていうルーティンになっているので、9時前だったら何冊でもいいけど、9時を過ぎたら1冊ねとか、時間で冊数を決めることにしています。遅くなってしまったときは「めっちゃ短いのにして!」って言ったりすることも。ルールとして明確になっていると、次女も理解してくれて、寝る前に「いま何時?」「今日は何冊読める?」「この長いの読める?」とか確認してきますよ。
本当は毎晩10冊でも読んであげたいんですけど、どうしても時間が取れない時は、「朝起きたらすぐ読もう!」って言って、朝寝起きのカッサカサの声で、半目になりながら読んだりしてますよ(笑)。そんな感じで、寝る前にしっかり読めない時は、朝起きて読んだり、お出かけしない日にいつもよりたくさん読んだり、日中余裕があるときに読んだり、どこかで絵本を読む時間は確保しています。
1冊の絵本を読むのって5分とか10分ですけど、一緒に絵本の物語を旅する時間になるので、すごく大事だと思うんです。読んであげる親が「忙しいのになぁ」って感じだと面白くないですし、親子で一緒に楽しめるといいですよね。時間がないときは、ちょっと短めの絵本にしたりとか、寝る前に1冊は読むって決めておいたりとか、無理しすぎない範囲で読んであげるのはどうでしょうか。
絵本って、親子で一緒に読んで、一緒に感じて、一緒に冒険して、一緒にいろいろな感情に出会うことができるもの。1冊の絵本を読むことによって、いろいろな世界、なんなら存在しない想像上の世界にも行けますよね。そこで初めて感じる感情だったり、見たことのない景色だったり、出会ったことのないキャラクターだったり……そういうものに出会える素敵な空間を、これからも一緒に楽しんでいきたいと思います。
写真:黑田菜月
スタイリング:繁田美千穂(UNLAX)
ヘアメイク:上野由可里
ブラウス、スカート:R-ISM
アクセサリー:Ambrose
インタビュー第2回は6月18日(水)公開!
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