さまざまな分野で活躍中の方に、絵本との思い出やエピソードを語っていただく「絵本とわたし」。絵本にかかわるエピソードを通して、その人をもっと知ることができる、そんなインタビュー連載です。今回は、2人の娘さんと一緒に日々絵本を楽しみ、ご自身で絵本の翻訳も手掛けている、タレントの関根麻里さんにお話をうかがいました。絵本について、子育てについて、2回に分けてお届けします。
──お話をうかがっていると、すごく楽しいご家庭なのが伝わってきます。子どものためにいろいろしてあげたいという思いが強くて、結果的に自分がつらくなってしまう、という方もいますが、関根さんはいかがですか?
ああ~すごくわかります。この子のためにできることって何だろうとか、可能性を広げてあげたいとか、いろいろ体験させてあげたいとか。できる限りサポートしたいっていう気持ちは、わたしも本当によくわかるんですが、自分を追い詰めてしまうと辛いですよね。今はSNSもあっていろんな情報がすぐ入ってくるけれど、それを見て「わたしはできなかった」ってネガティブになっちゃうとよくないと思うんです。
わたし自身も、たくさんお出かけできているファミリーとか、教育に熱心なファミリーの話を聞いたりすると、「うちは全然できてない!」とか思うことはありますよ(笑)。でも、もう比べてしまうとキリがないので、比べない! もちろん余裕があるなら、いろいろ挑戦する準備をしてみることも大事ですけど、結局は子どもと向き合えているかっていうことが大事だと思うんです。たくさん遊んだり、お話ししたり、スキンシップを取ったり、そういうことを大切にする。それができていれば、十分素晴らしいと思います。とはいえ、そうは思えない時もありますよね……。
──うまくいかなくて落ち込んだり、気持ちが暗くなったりすることもありますよね。
そういう時は疲れてるの! 疲れてるから落ち込んでしまうんです。
体と心はつながっているので、やっぱり休むことは大事だと思っています。ひと晩しっかり寝るとか、おいしいものを食べるとか、自分の中でご褒美とか楽しみがあると、もうひと頑張りできることもありますよね。わたしも、娘に隠れてチョコレートを食べて、「よし、ここから寝かしつけも頑張るぞ!」みたいなことをしています。
あとは、辛い時に抱えこみすぎて爆発してしまわないように、わたしは家族や友人に悩みや愚痴を聞いてもらうようにしています。「こんなことがあったんだけど」って話すと、「ああ、大変だったね」なんて言ってもらえたり、「うちもこんなことがあって……」って、もっと超えてくるエピソードが出てきたり(笑)。
その瞬間は笑えないことでも、ちょっと時間がたつと笑い飛ばせることもありますよね。そう考えると、大変なことが起きたときも「エピソード、ゲット!」みたいにとらえられて、ちょっと気持ちが軽くなるかも。それを誰かとシェアすることで、自分はひとりじゃない、って思える時もありますね。
──忙しい毎日の中で、家族やパートナーとうまく情報共有ができない、という声も聞きます。
わたしは、パートナーとお互い何でも話します。ちょっとしたことでも、わたしはこれだけ大変だったよってことを、アピールも含めて(笑)。娘の様子も共有したいので、メッセージでも電話でも、ひと言ちょっと残しておく。そうすると、今日こんなことがあったんだなってことが伝わるので、夫からも「大変だったね」とか……もうその一言でもわかってもらえたって思うんです。
一方で、夫にメッセージを書いている途中で、その大変な状況がだんだん面白くなってきてしまう自分もいます。その瞬間は「大変だ!」って思っていても、文字に起こしたり、ちょっと間があいたりすると、もはや笑えてくる。でも、そうやって笑えると、自分もちょっと楽になる気がするんです。
娘2人との朝の支度が大変だったってことを、夜になって夫に話していると、娘が「今日わたしね、朝泣いちゃったんだよ~、ハハハ」と笑顔で言っていることがあって。わたしも、「笑って言えるんだったら、最初から泣かないでよ~。ママも大変だったんだから~、アハハ」なんて、そんな感じです(笑)。
あとは、長女が生まれたときに助産師さんからかけてもらった言葉が、すごく支えになっているんです。「赤ちゃんはもちろん0才だけど、ママもパパも0才。だから、最初はできなくて当たり前なんですよ」って。そう言われたときに、「ああそうか、わたしも赤ちゃんか!」と思ったんです。
もちろん娘を産んで、この命を守るためにがんばるぞっていう前向きな気持ちもあったんですけど、それとともに不安もありました。そんな時、「できなくて当たり前」って言ってもらえて、すごくほっとしたんですよね。長女が4才の時に次女が生まれたんですが、2人育児のママとしてはまた0才って都合よく解釈しました(笑)。
とはいえ、今でも落ち込むことはたくさんありますよ。やりたいことがいっぱいあるのに、できてないなあって。
育児中って、とにかく時間がないから、何を選択をしていくかってことなんですよね、きっと。わたしは、子育ての軸は「愛情を注ぐ」「子どもに向き合う」っていうことだと思っているので、そこさえ守れていればいいかなって切り替えるようにしています。まあ、忙しい時は「あとでね」とか「早く早く!」とか、つい言ってしまうんですけどね……。「早く」とか「ちょっと待って」とか、あんまり言わない方がいいみたいですけど、言わなかった日なんてないですよ。毎日「明日こそは!」って思う(笑)。
育児っていうのは、子どもを育てる「育児」でもあり、自分を育てる「育自」でもあるって、これもわたしを支えてくれている言葉です。子育てって正解があるわけでもないし、親子それぞれタイプも関係性も違うし、いいよって言われたものをとりあえず試して、うまくいったらラッキー! くらいの気持ちでいようって思っています。
そうすると、失敗しても、まあまたやってみるかって思えるし、うまくいったらすごく嬉しい。できなくてもしょうがないけど、できることをまずやってみようと思って、気持ちが少しでも楽になるといいですよね。
──最後に、お子さんと接するときに意識していることや、親として伝えてあげたいことがあればお聞かせください。
愛情をたっぷり注ぐことが、本人の自己肯定感につながるって聞いたので、家族は味方だよ、あなたを愛しているよ、ということは伝えるようにしています。
娘たちには、「人生は楽しい」って思ってほしいんです。これから先、辛いことや大変なことがあったとしても、「ここで頑張れば、また楽しいことが待っているはずだ」と思えれば、壁を乗り越える力になりますよね。
わたしは「楽しさ貯金」って呼んでるんですけど、子どものうちに楽しい思い出をたくさん作ることで、人生を楽しむ原点ができればいいなと思っています。
写真:黑田菜月
スタイリング:繁田美千穂(UNLAX)
ヘアメイク:上野由可里
ブラウス、スカート:R-ISM
アクセサリー:Ambrose
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