絵本の選びかた

【小学校低学年向け本の選びかた】「自分で読む」も「読み聞かせ」も、どちらも大事

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連載「絵本の選びかた」では、絵本選びに迷う方に向けて、絵本の楽しみ方や選び方のヒントをお届けしていきます。今回は、小学低学年の子どものための絵本を含む本選びのポイントをご紹介します。

 小学生になると、学校でひらがなの読み書きを習い、音読もできるようになります。そうなると、「自分で読むほうが子どもにとってよいのでは?」と思うかもしれません。

でも、この時期の子がひとりで文字を追い、意味をとって、想像力を自由にふくらませるのはまだまだ難しいことです。ひとりで読む時間は増えていきますが、読み手の声に包まれて、読み手のことばに身をゆだねて、おもしろい物語の世界へ、言葉にさそわれて旅をすることは、何才になってもすばらしい体験。

これまでの読み聞かせでつちかってきた「本は楽しい」と思う子どもの気持ちを大切に、親子での読み聞かせも続けてみてください。

「読み聞かせ」の中に長めの童話も

子どもが求める間は、絵本や短めの童話の読み聞かせを続けてください。その上で、長めの童話も親子で楽しむことをおすすめします。一気に読み終える必要はなく、キリのよいところまで無理のない分量を読み、それを継続してください。

大人に読んでもらいながら、長い物語の、絵には表現されていない世界を、言葉のみをたよりに思い描くことは、子どもの想像する力を育む大切な時間です。

学校生活がはじまり、あわただしい毎日の中、親子で向き合うことのできるひとときとしても大切な時間となるでしょう。

読み聞かせにおすすめの童話は、「エルマーのぼうけん」シリーズ3冊。

園や家庭での読み聞かせで、年長児のころから親しんできた子も多いと思いますが、エルマーの勇敢で痛快な冒険話はまだまだ楽しめます。

文字が読めるようになるこの時期は、冒頭の地図の絵も、そこに書いてある文と合わせてより楽しく眺めることができるはずです。

ほかに、

・『あたまをつかった小さなおばあさん
・『バレエをおどりたかった馬
・『おそうじを おぼえたがらないリスのゲルランゲ

などがあります。

②「自分で読む」ときは

まずは絵本から

「自分で読みたい」という気持ちが子どもの中に芽生えてきたら、子どもにとってなじみ深い、これまで読んでもらってきた絵本や、教科書に出てくるお話の絵本などを、子どもの目につきやすく、手に取りやすいところに置いておきましょう。

お話の内容を知っているので、子どもはスムーズに読み進めることができ、それが「自分で本を読めた」という自信にもつながります。そして、次は「ほかの本も読んでみよう」という読書への前向きな気持ちにもつながります。

低学年の教科書に採用された作品の原作絵本には、

・『おおきなかぶ
・『そらいろのたね
・『スーホの白い馬

などがあります。
 

短めの童話、絵童話を選ぶ

小学校低学年向け、小学校初級向けと年齢表記のある童話でも、文章のボリュームは本によってだいぶ違います。子どもによっては「長い」「難しい」と感じてしまう場合も。最初は無理なく読めそうな短めの童話を選び、子どもが「読みきった!」という実感を持てることが大事です。また、絵が主体の絵童話も、子どもの想像力を支え楽しく読めます。

短めのお話が何編か入った本は、多くの小学校で取り入れられている10分前後の読書時間、「朝読(あさどく)」にもぴったりです。

短めのお話が入った童話は『こぶたのピクルス』(全4話)、『つくしちゃんとおねえちゃん』(全5話)など、絵が主体の絵童話は『三まいのはがき』などがあります。

 

子どもの気持ちに近いお話を

小学校に入学して、新しい先生や新しい友だちに囲まれ、子どもたちはしばらくの間、緊張して過ごします。そんなとき、自分に近い等身大の子どもの気持ちがていねいに描かれた物語を読むと、共感したり、安心したり、本の中で心が通じ合う仲間に出会えるかもしれません。さまざまな本と出会う時期、子どもの心に寄り添ってくれるようなお話もおすすめです。

はじめてのキャンプ』は、はじめてのキャンプでの一晩、不安や勇気、高ぶる気持ちなどが表情豊かに描かれているお話です。
がっこうのてんこちゃん』は小学1年生の教室が舞台で、緊張しやすい子をはじめ、いろいろな個性の10人の子が登場します。
おひめさまになったワニ』は、勉強やおけいこなど毎日やることだらけでいっぱいの7才のおひめさまが、ワニと入れ替わり、お城を抜け出すお話です。

 

④この時期に選びたい科学の本

この時期の科学の本というと、学習に役立ちそうな知識を盛り込んだ本をつい選びがちです。でも、それではせっかくの科学の面白さを子どもが心から感じる機会を逃してしまいます。驚きや感動があってこそ、「知りたい」という気持ちが生まれます。子どもの好奇心を大切にするためにも、まずは子どもの心が動く、そんな科学の本を選んであげましょう。読んだあとに親子で、そのテーマについて話すのもおすすめです。

ダンゴムシの生態を描いた『ぼく、だんごむし』や、歯の役割や虫歯のメカニズムをわかりやすく描いた『はははのはなし』など、身近なものをテーマにした5・6才向けの「かがくのとも絵本」シリーズは、小学校低学年の子どもが自分で読むのにぴったりです。

引き続き、「5才向け絵本の選び方」の科学絵本の選び方も参考にしてください。

また、子どもによって、関心をもつ対象やその度合いが違っていく時期です。虫のことをもっと知りたいという子には『昆虫記』、植物のことをもっと知りたいという子には『植物記』というように、それぞれの好奇心に応じて、「写真記」シリーズのようなより奥深く探求できる本をそっと差し出してみてもよいでしょう。

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