絵本の選びかた

【小学校中学年・高学年向け本の選びかた】「出会えてよかった」と思う本に出会えることが大事な時期

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連載「絵本の選びかた」では、絵本選びに迷う方に向けて、絵本の楽しみ方や選び方のヒントをお届けしていきます。今回は、小学校中学年・高学年の子どものための絵本を含む本選びのポイントをご紹介します。

中学年の子には

小学校の中学年になると、子どもの時間の使い方が変わっていきます。遊びの幅が広がり家の外で過ごす時間が増える子もいれば、クラブ活動や習い事などで忙しい子もいます。また、マンガやゲームや動画などに関心を持ち始めるのもこの時期です。やりたいこと、やるべきことでいっぱいで、子どもが自ら本を手に取ることが少なくなるかもしれません。また、自分で本を選びたいという意思を見せることもあるかもしれません。

中学年は、「その後の読書のわかれみち」といわれる時期です。この時期に、「出会えてよかった」と思う本に出会えることは、その子の人生において大きな意味を持つはず。

「こんな面白い本があるよ」と書店で教えてあげたり、机にそっと本を置いておいたりしてはどうでしょう。

シリーズで楽しめる読み物

この時期、何巻にもわたる「シリーズもの」と呼ばれる読み物に、憧れや興味を抱く子がいます。それだけ読む力をつけたことのあらわれです。

たくさんのシリーズがありますが、「魔女の宅急便」シリーズは長きにわたって子どもたちに人気の作品です。 13才のキキが、魔女として、人間として、少しずつ成長して自立していきます。アニメーション映画を見て好きになった子にも、ぜひ原作のこのシリーズを教えてあげてください。

最近の作品では、探検家を目指す子どもが通う学校が舞台の「私立探検家学園」シリーズ。個性豊かな学園の生徒たちが、様々なミッションに挑戦していきます。予想のつかない壮大な展開に心が躍ることでしょう。

ほかに、

・「ヤービ」シリーズ
・「パディントン」シリーズ
・「大草原の小さな家」シリーズ
・「野生のロボット」シリーズ

などがあります。

言葉を味わう詩の本

言葉の響き、リズム、楽しさ、ぬくもりを身体で味わうことは、子どもたちの言葉の感覚をより鋭いものにしてくれます。

さらに、詩の美しさ、深さにも気づき始めるこの時期は、長編のひらがな詩を収録した詩集『みみをすます』や、主人公とともに20篇の詩を味わう『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』などに出会えるとよいですね。

みみをすます きのうの あまだれに みみをすます (本文より)

『みみをすます』谷川俊太郎

③驚きと感動を伝えるノンフィクション

小学校生活にも慣れ、自分をとりまく世界への興味が、身近なモノから宇宙の果てまで、どんどん広がっていく時期。そこに、ただの情報や知識の詰まった本を与えるだけでは、せっかくの好奇心の広がりが途絶えてしまいます。身近な生物や自然、社会の仕組みや宇宙の謎まで、そこにある驚きと感動を伝えることで、好奇心をさらに広げられるような科学の本を選んであげてください。

この時期におすすめしたい「たくさんのふしぎ傑作集」には、

・『いっぽんの鉛筆のむこうに
・『ゴリラが胸をたたくわけ
・『わたしが外人だったころ
・『石は元素の案内人
・『ブラックホールって なんだろう?

などがあります。

高学年の子には

高学年になると、図書館で好みの本を選んできたり、友だちにすすめられた本を借りてきたり、本を選ぶのに親が介在する機会が、ますます減ってくる時期です。読書の傾向も子どもの個性によって様々な広がりをみせ、子ども独自の世界観を築き始めます。

普段の会話で互いに面白いと思う本を教え合ったり、家族で本を読む時間を設けたり、親が夢中になって読書をしている姿を見せることだっていいでしょう。家族が本でつながる機会を継続的に持てるとよいですね。

古典童話

子どもの個性によって読書の傾向は様々になっていきますが、この時期に古典童話の読書体験を、ぜひおすすめします。海外の古典童話は、翻訳のあり方によっては、その味わいに大きな差が出ます。また、それぞれの作品の時代背景や作者が込めた思想などは、ダイジェスト版やアニメからは伝わりにくいものです。完訳で古典童話をしっかりと味わう、そんな機会をこの時期に作ってあげてください。

福音館古典童話作品には、

・『オズの魔法使い
・『若草物語
・『ハイジ
・『バンビ
・『海底二万海里

などがあります。

この時期に選びたい科学の本

子どもたちの関心は、身近なことがらから、外国の文化や生活やそれぞれの歴史へと、空間的にも時間的にもどんどん広がりを見せます。そんな好奇心をしっかり応援してあげるためにも、世界の多様性や、歴史と現在のつながりに目が向けられるような、しっかりとした流れのある科学の本を選んであげてください。

この時期にすすめたい科学の本 には、

・『広島の原爆
・『天動説の絵本
・『稲と日本人
・『地球人記

などがあります。

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