季節の本を楽しみたい! そう思っていても、あわただしく過ごしていると、あっという間に、もう次の季節……。それなら少し余裕をもって、準備を始めてみませんか?
この連載では、子どもたちに本を手渡しつづけている東京子ども図書館の皆さんに、「来月のおすすめの本」をご紹介いただきます。1月のおすすめを教えてくださるのは、小野寺愛美さん。さあ、1月はこれ読もう!
まもなく新しい年がやってきます。子どもといっしょに、年神さまをお迎えする準備をしたり、お正月には家族そろって初詣へ出かけたり。晴れた日は凧あげ、雪の降る地域では雪遊びを楽しむこともあるでしょう。あたたかいお部屋では、お正月や2026年の干支「午(うま)」、雪にちなんだ本を読んでみませんか?
みきつきみ 文 柳原良平 画 / こぐま社 / 幼児から

どんぶらどんぶら、波わけて、宝船に乗った七福神がやってきます。
「ひとつ ひときわ えがおの 恵比寿さま」
「ふたつ ふっくり ほっこり 大黒天」……。
語呂のいいかぞえうたが続きます。
はだけた着物から、恰幅のいいお腹とおへそが丸見えの布袋さま、長寿を願うようにながーい頭の福禄寿など、特徴をとらえた切り紙のイラストは、眺めているだけでも笑顔に。
親子でリズムよく声に出して読んでみると、縁起のよい神様たちのユーモアたっぷりな姿に親しみがわいてくるかもしれません。
フローレンス・スロボドキン 文 ルイス・スロボドキン 絵 三原泉 訳 / 偕成社 / 幼児から

ある冬の日、ふたごの男の子たちがでかけようとすると、赤い手袋が片っぽありません。そのあとすぐに見つかりますが、ふたりが手袋を探している話は町中に広まっていました。
おとなりのブラウンさん、学校の先生、郵便屋さん……と、どこかで赤い手袋が見つかるたび、次々と届けにやって来て、ふたごの家には手袋がいっぱいに! 持ち主に返してあげるにはどうしたらよいでしょう?
軽やかな線描のやわらかな水彩画で、主人公たちのかわいらしい表情も魅力的です。
H・ストルテンベルグ 作 菱木 晃子 訳 さとうあや 絵 / 福音館書店 / 小学生から
のどかな田舎でのんびり暮らしていた馬が、ある日、旅のバレエ団を道案内しました。お礼にバレエを見せてもらうと、つま先で立ったり、軽々と高くとびあがったりして踊る姿にすっかり魅せられ、バレエ学校に入学。バレエ用の短いスカートをはいて、「一、二、左足をうしろ、三、四、左足を前に」。見よう見まね、うまく動かない4本足を動かしてレッスンに励みます。
ほのぼのした挿絵が、奇想天外な設定に味わいをそえているので、おしまいまで楽しく読めます。
≪幼児から≫
④『ぶどう畑のアオさん』
馬場のぼる 作 / こぐま社
馬のアオさんは、森の中で、いいにおいのするぶどう畑を見つける夢を見ました。目が覚めて、小道を歩いていくと、ほんとうにありました! ネコやキツネたちと食べにいくと、そこには柵を作ってひとり占めするオオカミが。おひとよしのアオさんと動物たちのやりとりは、ほのぼのとした温かさだけでなくおかしみも。同じ作者の『11ぴきのねこ』(こぐま社)によく似たねこも登場します。

⑤『ゆきのひの ぼりす』
ディック・ブルーナ 文・絵 なかのゆりこ 訳 / 福音館書店
くまのぼりすとばーばらは、大のなかよし。ぼりすがとくに好きなのは、ばーばらの鼻の上にある7つのそばかす。雪がたくさん積もったある日、ぼりすはそりあそびに出かけます。ばーばらもやってきて、いっしょにゆきだるまをつくります。できあがったのは、くまの形をしたふたつそっくりのゆきだるま。ぼりすは名案がひらめきます! 同じ作者の『ゆきのひの うさこちゃん』(福音館書店)もおすすめです。
⑥『しんせつなともだち』
方軼羣 作 村山知義 画 君島久子訳 / 福音館書店
雪の朝、子ウサギは食べものを探しに出かけ、カブをふたつ見つけました。ひとつはロバに届けますがお留守。ロバの家に置いて帰ります。そのカブを見つけたロバはヤギに、ヤギはシカにカブを持っていって……。シンプルなくり返しの展開なので、先を予想したり、期待したりしながら、幼い子どもも楽しめます。素朴であたたかなお話です。
⑦『ゆきのひ』
加古里子 作・絵 / 福音館書店
初雪に子どもたちは大喜び。長ぐつが埋まるほど積もれば雪合戦やそり遊び。大人は畑や山が真っ白になるくらいなら、いつもと変わりませんが、吹雪になれば、雪崩で埋まった線路の復旧や雪下ろしに、夜な夜な総出で働きます。雪とともに生きるりっちゃんと村の人たちの暮らしぶりが細やかに描かれたお話仕立ての知識絵本です。雪が降る喜びから、不安な気持ちまでも伝わってきます。
≪幼児・小学生≫
⑧『まるい ちきゅうの まるいちにち ──ALL IN A DAY』
エリック・カールほか 絵 安野光雅 編 / 童話屋
12月31日18時、無人島ごっこをしているアメリカの男の子タスケがSOSを呼びかけるとき、イギリスは1月1日0時で、ジェームスくんはぐっすり夢の中。日本は1月1日9時の元日の朝で、アキさんはお母さんに晴着を着せてもらっています。
大晦日から元日にかけて、8か国それぞれの子どもの様子を、8人の画家がみせてくれます。世界各国の子どもたちは、元日をどんなふうに過ごしているでしょうか。

⑨『子どもと楽しむ行事とあそびのえほん』
すとうあさえ 文 さいとうしのぶ 絵 / のら書店
お節料理の黒豆は「まめ(健康)にすごせますように」、えびは「腰が曲がるまで、長生きするように」──そんな願いが込められています。お年玉の由来は、年神さまから魂を授かるという意の「年魂」。日本古来の行事や、四季折々の遊びや料理など、知っているようで知らない豆知識を、親しみやすい絵とコンパクトな説明で知ることができます。
手元にあると、毎月開いてみたくなる1冊です。

⑩『名馬キャリコ』
バージニア・リー・バートン 絵・文 せたていじ 訳 / 岩波書店
キャリコはめっぽう頭が切れ、とびきり足の速い名馬。命の恩人カウボーイのハンクと共に、牛の群れを盗んだ悪人相手に大活躍します。ふんだんに盛り込まれたダイナミックな白黒の版画が印象的で、みんなで新年のお祝いをする結末まで目が離せません!
『ちいさいおうち』(岩波書店)や『いたずらきかんしゃ ちゅう ちゅう』(福音館書店)でおなじみの作者による小さな絵本です。

⑪『たまごからうま』
酒井公子 再話 織茂恭子 絵 / 偕成社
ベンガルの昔話絵本。「楽がしたい、馬があれば歩かなくてすむ」と考えた男が、市場で勧められたのは、今が買いどき、足の速い馬の「たまご」。でも、見た目は特大のかぼちゃ……⁉ その上、ちょっとでも下に置くと卵が孵って、すごい速さで逃げてしまうというのですから大変!
「たまごからうま」は、現地で「うそだ! ありえない」の意の慣用句。素朴で力強い絵から、おおらかな風土が伝わり、男の間抜けさに思わずクスッと笑ってしまうことでしょう。

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